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第2章 マコ巫女になる
手始めに
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目的地の修道院に到着したようなので、馬車を降り御者にお礼を言った。
馬車は王都に向かって来た道を走り出し、私は修道院に向かって歩き出した。
畑で農作業をしている子供達を尻目に、建物の玄関らしい所の前に立つと、
「ごめんください。」
と大声を出した。
でも返事が返ってこない。
私は扉を開け、再度恐る恐る声をかけると、奥の方からやっと「はぁい。」と返事が返ってきた。
暫くその場に立って待っていると、如何にも修道女ですって格好の女性が赤ちゃんを抱いて出てきた。
「えと…初めまして。私はマコと申します。聖女としてこの世界に召喚されたのですが、訳あって此方でお世話になる事になりました。宜しくお願い致します。」
と言って、私は深々とお辞儀をした。勿論日本式でね。
「頭を上げて下さい。マコさん。私はこの修道院を管理しております。キャシーと申します。お名前から察しますと、マコさんは日本人でいらっしゃいますか?」
「はい。仰っしゃるとおり、私は元日本人です。キャシーさんは?」
名前だけ聞くと、何処出身か全然見当もつかないが、黒髪だし黒い瞳だから、アジア人なのは確かだろう。
「私は香港出身よ。だから貴女の国で書かれていた漢字も読めるし、英語も話せるわ。マコさんと同じで、私も召喚されたけど、水晶玉が反応しなくて此処に送られちゃったのよ。」
とキャシーさん。なるほどね~。香港なら見た目で召喚されるわよね。
私達はそんな事を話しながら、修道院の中を案内された。
皆で食事を食べる食堂。その食事を作る厨房。子供達の寝室や遊び場。一応お風呂ぽいのもあったし、トイレもあった。
ある程度大きな子供━日本でいうところの中学生位━は、近くの農家や商家に働きに行って給料を貰ってくるらしい。当然読み書き計算なんて出来ないだろうから、手取りをピンハネされるなんて当たり前だろう。
それから、さっき畑にいた子供達━小学校高学年位━も修道院の子供だろう。キャシーさん曰く、自分達が食べる物は自給自足なんだという。
修道院は貴族からの寄付金で経営しているらしいが、子供達の衣食にあてられるお金が殆どで、キャシーさんは毎月遣り繰りに苦労してると言っていた。
そんな事聞いたら、私の経営コンサルタントの血がう疼く。しかも私、前世の記憶もある(誰でも言ったことないんだけどね)んだよね~。
経営コンサルタントになる前の前世の私は、小学校の先生だったんだ。どーよ。
よし!!手始めにこの修道院の立て直しをしてやろう。んでもって、王都にいるあの思い込み激しい系俺様ンコ王子、略してンコ王子をギャフンて言わせてやるわ。
見てろよ?ンコ王子。アラサー経営コンサルタント(前世は教師)を舐めたら痛い思いするって事、私をお払い箱にした事、絶対後悔させてやるんだから。
私は、キャシーさんに案内された私の部屋の窓から見える山の向こう側に沈む夕陽に向かい、誓いを立てるのだった。
馬車は王都に向かって来た道を走り出し、私は修道院に向かって歩き出した。
畑で農作業をしている子供達を尻目に、建物の玄関らしい所の前に立つと、
「ごめんください。」
と大声を出した。
でも返事が返ってこない。
私は扉を開け、再度恐る恐る声をかけると、奥の方からやっと「はぁい。」と返事が返ってきた。
暫くその場に立って待っていると、如何にも修道女ですって格好の女性が赤ちゃんを抱いて出てきた。
「えと…初めまして。私はマコと申します。聖女としてこの世界に召喚されたのですが、訳あって此方でお世話になる事になりました。宜しくお願い致します。」
と言って、私は深々とお辞儀をした。勿論日本式でね。
「頭を上げて下さい。マコさん。私はこの修道院を管理しております。キャシーと申します。お名前から察しますと、マコさんは日本人でいらっしゃいますか?」
「はい。仰っしゃるとおり、私は元日本人です。キャシーさんは?」
名前だけ聞くと、何処出身か全然見当もつかないが、黒髪だし黒い瞳だから、アジア人なのは確かだろう。
「私は香港出身よ。だから貴女の国で書かれていた漢字も読めるし、英語も話せるわ。マコさんと同じで、私も召喚されたけど、水晶玉が反応しなくて此処に送られちゃったのよ。」
とキャシーさん。なるほどね~。香港なら見た目で召喚されるわよね。
私達はそんな事を話しながら、修道院の中を案内された。
皆で食事を食べる食堂。その食事を作る厨房。子供達の寝室や遊び場。一応お風呂ぽいのもあったし、トイレもあった。
ある程度大きな子供━日本でいうところの中学生位━は、近くの農家や商家に働きに行って給料を貰ってくるらしい。当然読み書き計算なんて出来ないだろうから、手取りをピンハネされるなんて当たり前だろう。
それから、さっき畑にいた子供達━小学校高学年位━も修道院の子供だろう。キャシーさん曰く、自分達が食べる物は自給自足なんだという。
修道院は貴族からの寄付金で経営しているらしいが、子供達の衣食にあてられるお金が殆どで、キャシーさんは毎月遣り繰りに苦労してると言っていた。
そんな事聞いたら、私の経営コンサルタントの血がう疼く。しかも私、前世の記憶もある(誰でも言ったことないんだけどね)んだよね~。
経営コンサルタントになる前の前世の私は、小学校の先生だったんだ。どーよ。
よし!!手始めにこの修道院の立て直しをしてやろう。んでもって、王都にいるあの思い込み激しい系俺様ンコ王子、略してンコ王子をギャフンて言わせてやるわ。
見てろよ?ンコ王子。アラサー経営コンサルタント(前世は教師)を舐めたら痛い思いするって事、私をお払い箱にした事、絶対後悔させてやるんだから。
私は、キャシーさんに案内された私の部屋の窓から見える山の向こう側に沈む夕陽に向かい、誓いを立てるのだった。
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※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
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更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
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