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暴挙
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「お前の親は本当に屑だったよ。」
「は?そんな「事あったぜ。証拠だってあるからな。」なッ!!」
一条氏が取り出したタブレットPCから流れてきた音声は、華蓮の実父と思しき男性が一条邸にやって来て、
「自分の娘の華蓮と婚約したのだから結納金を寄越せ」
と言っていた。
それに対して一条氏であろう男性の声は、
「息子の婚約者である絢香は、貴方の娘の奈倉華蓮でも、貴方の実姉夫婦に引き取られた柿沼華蓮でもない。『一条絢香』だ。絢香は、柿沼夫妻が亡くなられた後、育児放棄をした貴方々夫婦により児童養護施設に送られた。事故により大怪我を負い心身共に傷付いていたのにだ。そのくせ、娘が成人するまで管理すると言って柿沼氏がかけていた受取人が夫妻の姪であった保険金を着服し、自身の会社の負債の穴埋めに使うという暴挙に出ただろ?」
と言っている。
奈倉氏は何も言えずにいたのか?続けて聞こえてきた声の主は、
「絢香を児童養護施設から引き取る時、私共夫婦は貴方に確認をしただろう。その時貴方はなんと言ったのか覚えて無いのですか?『そいつは娘でも何でもない。あんたの好きにしたらいい。』そう言ったんだ。だから私共はありとあらゆる方法を使い、絢香を養女として引き取り育ててきたんです。」
「でも親権は俺が…」
言い淀む奈倉氏に女性の声が聞こえてきた。
「あらやだ。貴方、覚えてないの?絢香はもう貴方の娘ではないわ。これは裁判所でも認められてる事よ?絢香自身も、私達を両親として選んでくれたの。だから絢香は私達夫婦の娘なの。自分達の娘が息子と結婚するのだから、貴方に結納金なんて払う必要ないのでは無くて?」
一条氏はタブレットPCを閉じると、
「お前の親の身勝手さがよく分かっただろ?そのお花畑頭でもな。」
と言い放つ。
「私はもう貴女の双子の姉ではないわ。奈倉華蓮は貴女の両親に消されたのよ!二度と私達の前に現れないで!それにその内、柿沼夫妻を殺した犯人として警察が貴女の父親を捕まえに行くかもしれないわね。社会的に消されるのは貴方の父親かもしれないわね。」
萌佳に向け、ニッコリと笑う華蓮。
その時!
「そんな事させるか!」
と言って、萌佳がテーブルの上にあったアイスピックを持った。
「死ねや!」
華蓮を背中に隠す一条氏の前に、俺は躍り出た。
「止めろ!萌佳!!」
体を少しだけずらし、萌佳の腹の位置にあるアイスピックを払い落とそうとするが、失敗してしまう。
脇腹に強烈な痛みが走った!
「かずちゃん……な、んで?」
萌佳の手から俺の血に染ったアイスピックが落ちる。
「一紀さん!」
床に倒れる俺を、その細い腕で必死に支えようとしてくれる華蓮。
「大丈夫ですか?今救急車が来ますから。気をしっかり持って!」
綺麗だと思った。
そんな華蓮を守ってやれた事は誇りだとも。
「華蓮…」
俺が差し出した手を握ってくれる華蓮。
「はい。」
「幸せに……、絢香さん。」
俺の意識はそこで途絶えた。
「は?そんな「事あったぜ。証拠だってあるからな。」なッ!!」
一条氏が取り出したタブレットPCから流れてきた音声は、華蓮の実父と思しき男性が一条邸にやって来て、
「自分の娘の華蓮と婚約したのだから結納金を寄越せ」
と言っていた。
それに対して一条氏であろう男性の声は、
「息子の婚約者である絢香は、貴方の娘の奈倉華蓮でも、貴方の実姉夫婦に引き取られた柿沼華蓮でもない。『一条絢香』だ。絢香は、柿沼夫妻が亡くなられた後、育児放棄をした貴方々夫婦により児童養護施設に送られた。事故により大怪我を負い心身共に傷付いていたのにだ。そのくせ、娘が成人するまで管理すると言って柿沼氏がかけていた受取人が夫妻の姪であった保険金を着服し、自身の会社の負債の穴埋めに使うという暴挙に出ただろ?」
と言っている。
奈倉氏は何も言えずにいたのか?続けて聞こえてきた声の主は、
「絢香を児童養護施設から引き取る時、私共夫婦は貴方に確認をしただろう。その時貴方はなんと言ったのか覚えて無いのですか?『そいつは娘でも何でもない。あんたの好きにしたらいい。』そう言ったんだ。だから私共はありとあらゆる方法を使い、絢香を養女として引き取り育ててきたんです。」
「でも親権は俺が…」
言い淀む奈倉氏に女性の声が聞こえてきた。
「あらやだ。貴方、覚えてないの?絢香はもう貴方の娘ではないわ。これは裁判所でも認められてる事よ?絢香自身も、私達を両親として選んでくれたの。だから絢香は私達夫婦の娘なの。自分達の娘が息子と結婚するのだから、貴方に結納金なんて払う必要ないのでは無くて?」
一条氏はタブレットPCを閉じると、
「お前の親の身勝手さがよく分かっただろ?そのお花畑頭でもな。」
と言い放つ。
「私はもう貴女の双子の姉ではないわ。奈倉華蓮は貴女の両親に消されたのよ!二度と私達の前に現れないで!それにその内、柿沼夫妻を殺した犯人として警察が貴女の父親を捕まえに行くかもしれないわね。社会的に消されるのは貴方の父親かもしれないわね。」
萌佳に向け、ニッコリと笑う華蓮。
その時!
「そんな事させるか!」
と言って、萌佳がテーブルの上にあったアイスピックを持った。
「死ねや!」
華蓮を背中に隠す一条氏の前に、俺は躍り出た。
「止めろ!萌佳!!」
体を少しだけずらし、萌佳の腹の位置にあるアイスピックを払い落とそうとするが、失敗してしまう。
脇腹に強烈な痛みが走った!
「かずちゃん……な、んで?」
萌佳の手から俺の血に染ったアイスピックが落ちる。
「一紀さん!」
床に倒れる俺を、その細い腕で必死に支えようとしてくれる華蓮。
「大丈夫ですか?今救急車が来ますから。気をしっかり持って!」
綺麗だと思った。
そんな華蓮を守ってやれた事は誇りだとも。
「華蓮…」
俺が差し出した手を握ってくれる華蓮。
「はい。」
「幸せに……、絢香さん。」
俺の意識はそこで途絶えた。
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