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プリマヴェーラの萌佳
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日菜のプリマヴェーラでの源氏名はマリナだった。
マリナは、先月の売り上げのおかげで、No.9からNo.6にまで順位を上げたんだそうだ。
マリナを贔屓にしていたのは『二条』という客だった。
二条……。何度か萌佳の口から聞いた事がある名前だ。
二条という客はとても羽振りが良かったという。
俺はそいつのせいで萌佳から蔑ろにされたんだ。
貧乏人とも言われたな。
萌佳は俺は執事的な役割りをしてくれるキープの男としておいておき、金持ちの二条を自分のお客にしたかったらしい。が、二条本人は萌佳には目もくれず、マリナと美月だけを可愛がっていたという。
そして今月最初のミーティングで、順位発表で、メイはNo.7になり、メイとマリナは揃って順位を上げたんだそうだ。
それが面白くなかった萌佳は、店で無双を始めた。
元々お嬢様だった萌佳は、自分が一番であるのが当たり前。与えて貰えて当たり前という考えの持ち主だった。
俺は、萌佳を愛していた頃はそれに気づかなかったのだが、離れた今はそれが萌佳の本質だと分かったのだ。
恋は盲目とはよく言ったものだなと感心してしまう。
本来、仕事をしていれば、そんな風に自分にだけ都合良く物事が進むわけはない事くらい気付くものだと思う。
失敗して反省して、そこから人間は何かを学んで成長する。
いつまでもお嬢様でいられるわけが無いのだが、萌佳はそうは思わなかったのだろう。
いや、俺が萌佳に言ってやるべきだったのかもしれない。
ある意味、俺が萌佳を追いつめたのか?
俺はそう思い始めた。
今更の話なんだけどな。
無双を始めた萌佳は、安東さんが言っていたとおり、他のキャバ嬢のお客を平気で取る様になった。
勿論それが悪いわけではない。
お客を取って取られては日常茶飯事の世界なんだろうが、萌佳のやり方はえげつなかったそうだ。
店の女の子ばかりでなく、お客からもクレームが入る様になり、プリマヴェーラから客足が遠のき始めてしまったという。
勿論オーナーは激怒し、萌佳を責めるようになり、店の雰囲気がギスギスし始めたのだと日菜は言った。
「私と美月ちゃんは、二条さんに相談したんです。プリマヴェーラを辞めたいって。そしたら二条さんが、この店 Butterflyを紹介して下さったんです。」
日菜は俺に作った酒を渡しながらそう話してくれた。
「実はですね?プリマヴェーラでのKIRAさんのお客様も、何人かButterflyに流れて来ているんですよ?」
「そうなのか?」
「はい!だから今プリマヴェーラは大変な事になっているかもしれません。残っていらっしゃるライラさんやアヤさん達、大丈夫かな?」
日菜はそう言って心配そうに眉尻を下げた。
俺は一度萌佳に会って、年上として、また元彼として彼女を諭してやらなければならないのかもしれない。
と、そう思っていた。
マリナは、先月の売り上げのおかげで、No.9からNo.6にまで順位を上げたんだそうだ。
マリナを贔屓にしていたのは『二条』という客だった。
二条……。何度か萌佳の口から聞いた事がある名前だ。
二条という客はとても羽振りが良かったという。
俺はそいつのせいで萌佳から蔑ろにされたんだ。
貧乏人とも言われたな。
萌佳は俺は執事的な役割りをしてくれるキープの男としておいておき、金持ちの二条を自分のお客にしたかったらしい。が、二条本人は萌佳には目もくれず、マリナと美月だけを可愛がっていたという。
そして今月最初のミーティングで、順位発表で、メイはNo.7になり、メイとマリナは揃って順位を上げたんだそうだ。
それが面白くなかった萌佳は、店で無双を始めた。
元々お嬢様だった萌佳は、自分が一番であるのが当たり前。与えて貰えて当たり前という考えの持ち主だった。
俺は、萌佳を愛していた頃はそれに気づかなかったのだが、離れた今はそれが萌佳の本質だと分かったのだ。
恋は盲目とはよく言ったものだなと感心してしまう。
本来、仕事をしていれば、そんな風に自分にだけ都合良く物事が進むわけはない事くらい気付くものだと思う。
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いつまでもお嬢様でいられるわけが無いのだが、萌佳はそうは思わなかったのだろう。
いや、俺が萌佳に言ってやるべきだったのかもしれない。
ある意味、俺が萌佳を追いつめたのか?
俺はそう思い始めた。
今更の話なんだけどな。
無双を始めた萌佳は、安東さんが言っていたとおり、他のキャバ嬢のお客を平気で取る様になった。
勿論それが悪いわけではない。
お客を取って取られては日常茶飯事の世界なんだろうが、萌佳のやり方はえげつなかったそうだ。
店の女の子ばかりでなく、お客からもクレームが入る様になり、プリマヴェーラから客足が遠のき始めてしまったという。
勿論オーナーは激怒し、萌佳を責めるようになり、店の雰囲気がギスギスし始めたのだと日菜は言った。
「私と美月ちゃんは、二条さんに相談したんです。プリマヴェーラを辞めたいって。そしたら二条さんが、この店 Butterflyを紹介して下さったんです。」
日菜は俺に作った酒を渡しながらそう話してくれた。
「実はですね?プリマヴェーラでのKIRAさんのお客様も、何人かButterflyに流れて来ているんですよ?」
「そうなのか?」
「はい!だから今プリマヴェーラは大変な事になっているかもしれません。残っていらっしゃるライラさんやアヤさん達、大丈夫かな?」
日菜はそう言って心配そうに眉尻を下げた。
俺は一度萌佳に会って、年上として、また元彼として彼女を諭してやらなければならないのかもしれない。
と、そう思っていた。
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