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応募してきた女
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「はい。全部契約内容のとおりで構いません。」
あの結婚相手探しアプリでの俺の結婚条件を見て、「是非お願い致します。」と反応してきた柿沼 華蓮と名乗る女と会った。
俺は華蓮に会う前、彼女のプロフィールをじっくり読んでみた。一般企業の総務課に所属している、ごく普通の別段おかしなところは何も無い24歳の女性だった。
待ち合わせの喫茶店に現れた華蓮は、肩甲骨辺りで揃えた黒髪、切れ長で琥珀色の瞳をした、少し寂しげな印象を醸し出している女だった。
そして体型は、スレンダーだが出るところはしっかり出ているという、きっと他の女性から羨望の眼差しを向けられる体型をしていた。
それに対して、俺の愛する萌佳は、クルクルふわふわな栗色の髪色で、瞳は華蓮と同じ琥珀色だが、ぱっちりとした大きな瞳がチャームポイントだ。
体型は何処も彼処も柔らかくて、とても女性らしい。
華蓮と萌佳は、正反対の見た目だった。
どうらやそんな事を考えながら、俺はボーッと華蓮の顔を見ていたらしく、
「どうかされましたか?」
と華蓮に聞かれてしまった。
「いや、何でもない。」
と俺は極めて冷静を装って答えた。
この瞬間も、萌佳と華蓮は両極端なキャラクターだと思う。
萌佳だったら表情がコロコロ変わって、話に突っ込んできたりして盛り上がるのだが、華蓮は表情筋が無いのか無表情だし無口の為、話が盛り上がる事は無さそうだ。
だが華蓮のそんなキャラクターこそ、俺が求めている条件に相応しいキャラクターといえるかもしれないとも思えた。
どうせ一緒に暮らさないし、愛し合う事もしない。
だったら無表情くらいが、相手に情を持つことも無いだろうから。
「では、契約締結だな。ここに署名捺印を頼めるか?」
華蓮はバッグの中から印鑑を出して、契約書2通目に署名捺印をすると、俺の方に戻してきた。
俺はそれを確認し、俺も署名捺印をすると、一通を華蓮に渡した。
「こちらが私のスマホの番号とメールアドレスです。今後の事で何かありましたら、ご連絡下さい。それでは失礼致します。」
華蓮はそう言うと、自分のコーヒー代を置いて店を出ていった。
家に帰ると、早速萌佳に説明した。
「えぇ~!ホントにホントなの?萌佳、これからもずっとかずちゃんと一緒にいられるの?」
「あぁそうだよ。それにその人とは偽装結婚だから、籍を入れるわけじゃない。だから俺は、萌佳と結婚出来る時が来た時も、戸籍は綺麗なままだよ。」
「萌佳、ずっとかずちゃんと一緒にいられるならそれで超幸せだよ。」
そう言って俺に飛び付いて来た萌佳を堪能する。
「安心したらお腹空いちゃった。かずちゃん。一緒にご飯作ろっか。」
「賛成だ。なら、買い物行くか?」
「うん。…………あ!ね?かずちゃん。その人の顔が見たいな。どんな顔してる人なの?」
「顔は萌佳の方が可愛かったけど、美人の部類には入るかもな。……まだサイトにあるだろうから、開いてみるな?ちょっと待っててくれ。」
俺はスマホアプリを起動して、彼女の名前を打ち込んだ。が、【その方はプロフィールを削除されました。】と出てくるのみで、萌佳に華蓮の顔を見せられなかった。
「ごめんな?俺との偽装結婚が決まったから、彼女 プロフィールを削除したみたいだ。」
「そっかぁ……残念だけど仕方ないね。じゃ、お買い物行こ。」
萌佳は少しだけ残念そうな顔をしたが、直ぐに笑顔になった。
俺は萌佳のこの前向きな性格が大好きだ。
その夜、俺たちは一緒に食事を作り、一緒に眠った。
本当は萌佳を抱きたかったが、借金が返し終わるまで子供が出来ちゃうのは困るからと言われている。
萌佳の家の借金の返済が早く終われば、俺達の結婚を親に認めて貰える。
それまでの辛抱だからと、俺は萌佳を抱き締めて眠りにつくのだった。
あの結婚相手探しアプリでの俺の結婚条件を見て、「是非お願い致します。」と反応してきた柿沼 華蓮と名乗る女と会った。
俺は華蓮に会う前、彼女のプロフィールをじっくり読んでみた。一般企業の総務課に所属している、ごく普通の別段おかしなところは何も無い24歳の女性だった。
待ち合わせの喫茶店に現れた華蓮は、肩甲骨辺りで揃えた黒髪、切れ長で琥珀色の瞳をした、少し寂しげな印象を醸し出している女だった。
そして体型は、スレンダーだが出るところはしっかり出ているという、きっと他の女性から羨望の眼差しを向けられる体型をしていた。
それに対して、俺の愛する萌佳は、クルクルふわふわな栗色の髪色で、瞳は華蓮と同じ琥珀色だが、ぱっちりとした大きな瞳がチャームポイントだ。
体型は何処も彼処も柔らかくて、とても女性らしい。
華蓮と萌佳は、正反対の見た目だった。
どうらやそんな事を考えながら、俺はボーッと華蓮の顔を見ていたらしく、
「どうかされましたか?」
と華蓮に聞かれてしまった。
「いや、何でもない。」
と俺は極めて冷静を装って答えた。
この瞬間も、萌佳と華蓮は両極端なキャラクターだと思う。
萌佳だったら表情がコロコロ変わって、話に突っ込んできたりして盛り上がるのだが、華蓮は表情筋が無いのか無表情だし無口の為、話が盛り上がる事は無さそうだ。
だが華蓮のそんなキャラクターこそ、俺が求めている条件に相応しいキャラクターといえるかもしれないとも思えた。
どうせ一緒に暮らさないし、愛し合う事もしない。
だったら無表情くらいが、相手に情を持つことも無いだろうから。
「では、契約締結だな。ここに署名捺印を頼めるか?」
華蓮はバッグの中から印鑑を出して、契約書2通目に署名捺印をすると、俺の方に戻してきた。
俺はそれを確認し、俺も署名捺印をすると、一通を華蓮に渡した。
「こちらが私のスマホの番号とメールアドレスです。今後の事で何かありましたら、ご連絡下さい。それでは失礼致します。」
華蓮はそう言うと、自分のコーヒー代を置いて店を出ていった。
家に帰ると、早速萌佳に説明した。
「えぇ~!ホントにホントなの?萌佳、これからもずっとかずちゃんと一緒にいられるの?」
「あぁそうだよ。それにその人とは偽装結婚だから、籍を入れるわけじゃない。だから俺は、萌佳と結婚出来る時が来た時も、戸籍は綺麗なままだよ。」
「萌佳、ずっとかずちゃんと一緒にいられるならそれで超幸せだよ。」
そう言って俺に飛び付いて来た萌佳を堪能する。
「安心したらお腹空いちゃった。かずちゃん。一緒にご飯作ろっか。」
「賛成だ。なら、買い物行くか?」
「うん。…………あ!ね?かずちゃん。その人の顔が見たいな。どんな顔してる人なの?」
「顔は萌佳の方が可愛かったけど、美人の部類には入るかもな。……まだサイトにあるだろうから、開いてみるな?ちょっと待っててくれ。」
俺はスマホアプリを起動して、彼女の名前を打ち込んだ。が、【その方はプロフィールを削除されました。】と出てくるのみで、萌佳に華蓮の顔を見せられなかった。
「ごめんな?俺との偽装結婚が決まったから、彼女 プロフィールを削除したみたいだ。」
「そっかぁ……残念だけど仕方ないね。じゃ、お買い物行こ。」
萌佳は少しだけ残念そうな顔をしたが、直ぐに笑顔になった。
俺は萌佳のこの前向きな性格が大好きだ。
その夜、俺たちは一緒に食事を作り、一緒に眠った。
本当は萌佳を抱きたかったが、借金が返し終わるまで子供が出来ちゃうのは困るからと言われている。
萌佳の家の借金の返済が早く終われば、俺達の結婚を親に認めて貰える。
それまでの辛抱だからと、俺は萌佳を抱き締めて眠りにつくのだった。
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