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隣りの芝で
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「結奈ちゃーん」
「那智ちゃーん」
橋本さんの家の車が我が家の前で止まり、チャイルドシートのベルトを外して貰ったらしい結奈ちゃんが車の中から出てきた。
幼稚園でお別れ会をした以来、お引っ越しの忙しさからか?結奈ちゃんは幼稚園に登園して来なかった様だ。
娘は家でもずっと「寂しい寂しい」と言っていたので、芽衣子さんにメッセージを送り、お引っ越しされる時に我が家の前を通って欲しいと伝えたのだ。
息子を含めた子供3人は楽しそうに、最近張り替えた芝が漸く綺麗に生え揃った庭に、主人が子供の頃から植わっているヤマモモの木に取り付けたブランコに乗って遊んでいる。
そんな子供達の様子に目を細めながら、
「忙しいのに寄ってくれてありがとう。」
とお礼を言った私に芽衣子さんは、
「こちらこそ今まで色々ありがとう」
と返してよこした。
その顔は少しだけ不安そうだったけど、私ら敢えて何も言わかなった。
「そろそろ行くぞー!」
と、主人と話をしていた(主人と橋本さんのご主人とは、幼稚園の行事でよく一緒になっていた事で面識はある)橋本さんのご主人から声がかかり、結奈ちゃんは素直にそれに従った。
娘は私の元に走りよって来て
「ママ!クッキー」
と言う。それはさっき那智と一緒に焼いた結奈ちゃんへのお餞別。
「分かったわ。今持ってくるわね」
と、掃き出し窓から居間へと入ると、娘が一生懸命書いた手紙とクッキーを詰めた箱を持ち、それを娘に渡した。
「結奈ちゃん。これね。那智がママと焼いたクッキーなの。ばぁばのお家で食べてね。」
「ありがとう那智ちゃん。大切に食べるね。じぃじとばぁばにもあげて良い?」
「うん。………結奈ちゃん。那智……寂しいよー。えーん」
さっきからずっと、必死で涙を堪えていた娘だったが、とうとう涙腺が決壊し大泣きしてしまった。結奈ちゃんも貰い泣きをしてしまい、お互い抱き合って泣いていた。
本当に仲の良い友達との別れは、何歳でも辛いのだなぁと思っていると、
「ほら、那智?結奈ちゃんを離してやりなさい。お前が離れてやらないと、結奈ちゃんが新しいお家に行けないだろう?」
と主人が優しく娘に諭している。すると橋本さんのご主人も、
「那智ちゃんパパの言うとおりだぞ、結奈。結奈が離れてやらなきゃ那智ちゃんも離れられないだろ?」
と結奈ちゃんの目線に合わせてそう言い聞かせている。
娘は主人の言うとおり、結奈ちゃんは結奈ちゃんパパの言うとおり、互いの身体から離れる為腕を下ろした。そして
「那智、お手紙書くね。」
「うん、結奈も書く。」
「うん。結奈ちゃんは那智とずっとずっとお友達でいてね」
「うん。結奈、那智ちゃんとずっとずっとお友達でいるよ。」
「バイバイ、結奈ちゃん」
「うん…那智ちゃん、バイバイ。また遊ぼうね」
「うん!約束ね」
幼い仲良しの2人はもう一度だけぎゅっとと抱き合い、そして笑顔でさよならをした。
この街を出ていく結奈ちゃんの車が見えなくなる迄、
「バイバーイ。バイバーイ!結奈ちゃーん!バイバーイ!」
と大きく手を振っていた。
「那智ちゃーん」
橋本さんの家の車が我が家の前で止まり、チャイルドシートのベルトを外して貰ったらしい結奈ちゃんが車の中から出てきた。
幼稚園でお別れ会をした以来、お引っ越しの忙しさからか?結奈ちゃんは幼稚園に登園して来なかった様だ。
娘は家でもずっと「寂しい寂しい」と言っていたので、芽衣子さんにメッセージを送り、お引っ越しされる時に我が家の前を通って欲しいと伝えたのだ。
息子を含めた子供3人は楽しそうに、最近張り替えた芝が漸く綺麗に生え揃った庭に、主人が子供の頃から植わっているヤマモモの木に取り付けたブランコに乗って遊んでいる。
そんな子供達の様子に目を細めながら、
「忙しいのに寄ってくれてありがとう。」
とお礼を言った私に芽衣子さんは、
「こちらこそ今まで色々ありがとう」
と返してよこした。
その顔は少しだけ不安そうだったけど、私ら敢えて何も言わかなった。
「そろそろ行くぞー!」
と、主人と話をしていた(主人と橋本さんのご主人とは、幼稚園の行事でよく一緒になっていた事で面識はある)橋本さんのご主人から声がかかり、結奈ちゃんは素直にそれに従った。
娘は私の元に走りよって来て
「ママ!クッキー」
と言う。それはさっき那智と一緒に焼いた結奈ちゃんへのお餞別。
「分かったわ。今持ってくるわね」
と、掃き出し窓から居間へと入ると、娘が一生懸命書いた手紙とクッキーを詰めた箱を持ち、それを娘に渡した。
「結奈ちゃん。これね。那智がママと焼いたクッキーなの。ばぁばのお家で食べてね。」
「ありがとう那智ちゃん。大切に食べるね。じぃじとばぁばにもあげて良い?」
「うん。………結奈ちゃん。那智……寂しいよー。えーん」
さっきからずっと、必死で涙を堪えていた娘だったが、とうとう涙腺が決壊し大泣きしてしまった。結奈ちゃんも貰い泣きをしてしまい、お互い抱き合って泣いていた。
本当に仲の良い友達との別れは、何歳でも辛いのだなぁと思っていると、
「ほら、那智?結奈ちゃんを離してやりなさい。お前が離れてやらないと、結奈ちゃんが新しいお家に行けないだろう?」
と主人が優しく娘に諭している。すると橋本さんのご主人も、
「那智ちゃんパパの言うとおりだぞ、結奈。結奈が離れてやらなきゃ那智ちゃんも離れられないだろ?」
と結奈ちゃんの目線に合わせてそう言い聞かせている。
娘は主人の言うとおり、結奈ちゃんは結奈ちゃんパパの言うとおり、互いの身体から離れる為腕を下ろした。そして
「那智、お手紙書くね。」
「うん、結奈も書く。」
「うん。結奈ちゃんは那智とずっとずっとお友達でいてね」
「うん。結奈、那智ちゃんとずっとずっとお友達でいるよ。」
「バイバイ、結奈ちゃん」
「うん…那智ちゃん、バイバイ。また遊ぼうね」
「うん!約束ね」
幼い仲良しの2人はもう一度だけぎゅっとと抱き合い、そして笑顔でさよならをした。
この街を出ていく結奈ちゃんの車が見えなくなる迄、
「バイバーイ。バイバーイ!結奈ちゃーん!バイバーイ!」
と大きく手を振っていた。
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