貴方の駒になど真っ平御免です

Saeko

文字の大きさ
上 下
95 / 97
第八章 断罪された人々

閑話 櫻井柊side

しおりを挟む
「ちょっと~。なんでアタシがハ○設定なわけ?」

黙っていれば誰もが羨む色男だというのに、口から出る言葉はオネエ言葉になるコイツは、俺の親友の一人で自称百合香りりかの母親枠ゲットだとほざく渉だ。

渉は、麗羅が幼い百合香を抱いた写真が入ったロケットペンダントを百合香から貰った日から、百合香と連絡を取り合っているらしい。

元父親と対峙する事を百合香から聞いた渉は、麗羅の為に建てた屋敷から白金一家を追い出す為に動き出した。

先ず渉は、不動産業を営む知人と相談し、白金達が住む家を売り出す事にしたという文書を奴らに送った。
案の定白金はその不動産屋に乗り込んで来たが、そこで正式に櫻井からの意向だという事、更に売買金額が到底手が出せない程の金額だという事が分かると、あっさり引き下がったそうだ。
別に法外な金額設定ではなかった。
立地条件や敷地面積、勿論地価等を考慮した適正価格での売り出しだったのだが、今の奴が置かれた立場では、到底手が出せなかったのだろう。
それから半年後、奴らは夜逃げ同然で屋敷から出ていった。

俺や父はそれで良かったのだが、渉はそれだけでは終わらせなかった。

次に渉は、経営者仲間から得た情報で、白金親子が流れ着いた地でスナックを経営する矢嶋という人物とコンタクトを取った。
矢嶋氏に生活に困っている知人がいるから雇って欲しいと伝え、渉自身が買い取ったボロ屋で奴らを住まわせる様にと住まいまで手配した。

案の定白金の娘は客とトラブルをおこし店をクビになる。

皐月が矢嶋にこぼした愚痴から、金に困ってるという情報を得た渉は、奴らにとどめを刺そうと身分を偽り皐月と愛人契約を結ぶ事にしたのだ。

ただでさえ男に戻った時の渉はヤバいぐらいの色男だから、皐月に本気になられてはまずいだろうと、俺は変装する事を薦めた。

頭髪が少し心許ないが紳士設定にしようと思い、渉用に鬘を用意した。

頭皮が見える鬘を見て渉は怒ったが、

「万が一の事を考えてバレない様にする為だ。」

と言うと渋々了承してくれた。
まぁ強引に承諾させたんだけどな。

その後、渉の作戦は、仕掛けた側の俺達でさえ吃驚する結末になった。

皐月は貴生に殺害され、桃花は病んでしまい病院へ送られた。

貴生の証言に出てきた皐月の「好きな人が出来た。」発言についての裏付け捜査の為皐月の客に事情聴取や家宅捜査等が行われたが なんの証拠も出ず、死人に口なしではないが、夫婦間の痴情のもつれとして処理され、警察が渉まで辿り着くことはなかった。

「これであの毒虫達からアタシのNouvelle étoileりりかを守れたわ。麗羅、見ててくれたよな。」

そう言って自分の店で美味そうにワインを飲みながらロケットペンダントの中の写真を見ている渉は満足気だ。

「きっと麗羅も喜んでいるさ。今度墓参りに行ってやってくれ。大好きだったカサブランカを持ってな。」

渉は俺の言葉に黙って頷くと、麗羅の写真に向かって、à votre santé乾杯と言いながらまた美味そうにグラスの中のワインを飲み干していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから

咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。 そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。 しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

元婚約者が愛おしい

碧桜 汐香
恋愛
いつも笑顔で支えてくれた婚約者アマリルがいるのに、相談もなく海外留学を決めたフラン王子。 留学先の隣国で、平民リーシャに惹かれていく。 フラン王子の親友であり、大国の王子であるステファン王子が止めるも、アマリルを捨て、リーシャと婚約する。 リーシャの本性や様々な者の策略を知ったフラン王子。アマリルのことを思い出して後悔するが、もう遅かったのだった。 フラン王子目線の物語です。

余命1年の侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
余命を宣告されたその日に、主人に離婚を言い渡されました

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

処理中です...