貴方の駒になど真っ平御免です

Saeko

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第九章 終幕

幸せとは

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元家族達の事件から一年後

生前贈与という形で、白金達が住んでいた屋敷をお爺様から譲り受けた私は、さくら濱銀行からお金を借りて一日ひと組限定の結婚式場を作った。

敷地に小さなチャペルを建て、屋敷のリビングと客間の壁をぶち抜き、南面に、全て開閉可能な窓を付けた。その窓を解放すると、庭と屋敷とが繋がり、広い空間が出来る為、ガーデンパーティを行う事が出来るという式場だ。
勿論雨天でも大丈夫な様に、一階は増築もした。

また二階の居住部分だった部屋は、新郎新婦やその御家族の控え室とし、ゆったりと過ごして貰える様な温かみのある部屋に完全リフォームした。

オーナーは勿論私だが、式場の予約や式の運営、また外部のプランナーさん達からの問い合わせなどは、ホテルマンの潮田さんには申し訳ない かったが、彼の色んなコネクションを使って優秀な人材を確保して貰った。

この式場で結婚式をあげた第一号カップルは、濱田流星 菜々子夫妻だ。

彼等には申し訳ないが、式場のあらゆる場所を紹介する時のモデルにもなってもらった。

美男美女の二人の仲睦まじい姿をホームページに動画や写真で紹介したことで、そこから徐々に広がっていったという感じだろう。

初めはなかなか軌道に乗らず赤字続きだったが、菜々子達の結婚式から口コミで問い合わせが来るようになり、式場を建ててから三年経った今、漸く黒字になってきた。

この頃になると、図書館勤めをしながらのオーナー業務が困難になってきた私は、図書館を辞める事にした。


屋外だと虫が気になるというお客様の要望に答え、全面ガラス張りのサンルームを作った事で維持管理費がかかる様にはなったが、その分予約状況は上々だった。

有り難いとしか言い様がなかったが、その反面働いて下さっているスタッフの方々は忙しくなってしまった。
私はスタッフさんの増員と福利厚生を充実させる事で、日々オーナーとして奮闘していた。

誰かの駒ではなく、周りの人の理解と協力を得ながらの人生は、私を大きく成長させたと言える。
私の幸せとは、こういう形なのだとしみじみ思った、


そして今日、私と駿斗が結婚式をする事になった。

櫻井のお父様お母様
お爺様とお祖母様
連城先生ご夫妻
濱田ご夫妻
流星さんと奥様の菜々子
羽田さん
渉ママ
潮田さん
以前勤めていた図書館の館長さんや司書の皆さん(皆さんに来ていただける様に、結婚披露宴は休館日にした。)
その他お世話になった方々が参列して下さった。


春の晴天の下
爽やかな風と咲き乱れる花々にも祝福された私と駿斗は、神様の御前で永遠の愛を誓った。

披露宴のお料理は勿論大貫さん。
美味しい彼のお料理に、舌鼓を打つ皆さんの笑顔が弾けていた。

そんな皆さんの顔を見ている私の手を、駿斗はそっと握ってくれ、

「幸せになろうな、百合香りりか。それが皆さんへ出来る最高の恩返しになるから。」

と耳許で囁く。

にっこりと笑って頷いた私の頬を、何処から入ってきたのか?そっと撫でた春風が、

「幸せになりなさい、りり。ママはいつもりりの傍にいるわ。」

とママの言葉を運んで来た。

(ママ。ありがとう。ママの分まで幸せになるわ。見守っていてね。)

そう心の中で答えたのだった。

Fin
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