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第八章 断罪された人々
第1話 断罪のその後 ~白金貴生side〜
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百合香から最後に言われた台詞
「もう終わりにしましょう。」
その台詞どおり、それからの俺達家族は本当に終わってしまった。
桃花がしでかした事で裁判になり、執行猶予付きになった。とはいえ、そんな犯罪者がいる会社の製品は扱いたくないと言われ、取り引き先が次々と手を引いていき、それに伴い株が大暴落。紙きれ同然になってしまったところで、兼ねてよりあった業務提携話も結局のところ、会社を乗っ取られてしまった。
仕方なしにまた新しい事業をと考え、住んでいる家屋敷を売っぱらってしまおうとするも、土地や家の謄本や建築確認書等、売却に必要な物が何処を探しても見当たらない。
すると、不動産屋から、
【売却する事になったので、速やかに退去して下さい。】
と内容証明が届いた。
どう言うとこだ!と文句を言う為に書類を送り付けてきた不動産屋に乗り込むと、
「売り主さんである櫻井様から売買の依頼を受けています。」
と言われ、書類を見せられた。
そこで俺は初めて、住んでいる家が櫻井兼近氏が所有している事を知ったのだ。
あの屋敷の土地は、そもそも櫻井の家の所有地。
その上に娘の麗羅の為に屋敷を建てたのだった。
俺達はそこに勝手に住んでいる、云わば不法占拠者とも言えたのだ。
よくよく考えてみれば、俺は不動産の固定資産税を一切払った事が無かった。
固定資産税は土地や家屋の所有者が支払う税金なのだから、俺名義の土地家屋であるのなら毎年請求があったはずだ。
だがこの数年、そんな書類が届いた事も知らないし、見た事さえない。
俺の家じゃないのなら、俺が買い取ればいい。
そう思い売買価格を聞いて驚いた。
確かにあの家は、都内の高級住宅地と呼ばれる一等地に建っている。
立地条件もよく、日当たりも良好なあの家なのだから、桁が9桁越えなのは納得だ。
全盛期の俺だったらすんなり払える金額だろうが、今は無職な上に多額の裁判費用や慰謝料と桃花の保釈金を支払った後だった為、とてもじゃないが買い取ることは出来なかった。
仕方なく俺は、新しい住まいを早く見つける為に働きに出る事にしたのだが、『犯罪者の親』『子供をネグレクトした親』のレッテルが貼られてしまい、まともな企業に就職するとこさえ出来なかった。
それは皐月も同じで、面接を希望する為 履歴書を送付するが、書類選考だけで落とされているようだ。
【弊社の希望する条件にそぐわない為……】と記載された紙が何通も送られてくる現状に、皐月は最早就活を諦め始めていた。
どの会社から来る書面にも、ていのいい断り文句が書かれているが、『義理の娘を虐待した人間』『犯罪者の母親』のレッテルがはられているに違いない。
これからこれらの評価が、俺にも皐月にも一生ついてまわるのだろう。
退去願いの通知が来て半年後、
【買い主が決まったので、本日付けより半年後までに速やかに退去して下さい。
これに従わなかった場合は、不法占拠とみなし、裁判所より強制退去通告が入ります。】
と書かれた文面が送られてきた。
俺が蓄えた貯蓄を取り崩しながら生活していたこの屋敷での生活も終わりが近づいてきた。
未だ就職先が決まっていない俺と皐月は、無職にも関わらず社長令嬢が抜けない桃花を強引に連れ出し、夜逃げ同然の状態で屋敷を明け渡した。
「もう終わりにしましょう。」
その台詞どおり、それからの俺達家族は本当に終わってしまった。
桃花がしでかした事で裁判になり、執行猶予付きになった。とはいえ、そんな犯罪者がいる会社の製品は扱いたくないと言われ、取り引き先が次々と手を引いていき、それに伴い株が大暴落。紙きれ同然になってしまったところで、兼ねてよりあった業務提携話も結局のところ、会社を乗っ取られてしまった。
仕方なしにまた新しい事業をと考え、住んでいる家屋敷を売っぱらってしまおうとするも、土地や家の謄本や建築確認書等、売却に必要な物が何処を探しても見当たらない。
すると、不動産屋から、
【売却する事になったので、速やかに退去して下さい。】
と内容証明が届いた。
どう言うとこだ!と文句を言う為に書類を送り付けてきた不動産屋に乗り込むと、
「売り主さんである櫻井様から売買の依頼を受けています。」
と言われ、書類を見せられた。
そこで俺は初めて、住んでいる家が櫻井兼近氏が所有している事を知ったのだ。
あの屋敷の土地は、そもそも櫻井の家の所有地。
その上に娘の麗羅の為に屋敷を建てたのだった。
俺達はそこに勝手に住んでいる、云わば不法占拠者とも言えたのだ。
よくよく考えてみれば、俺は不動産の固定資産税を一切払った事が無かった。
固定資産税は土地や家屋の所有者が支払う税金なのだから、俺名義の土地家屋であるのなら毎年請求があったはずだ。
だがこの数年、そんな書類が届いた事も知らないし、見た事さえない。
俺の家じゃないのなら、俺が買い取ればいい。
そう思い売買価格を聞いて驚いた。
確かにあの家は、都内の高級住宅地と呼ばれる一等地に建っている。
立地条件もよく、日当たりも良好なあの家なのだから、桁が9桁越えなのは納得だ。
全盛期の俺だったらすんなり払える金額だろうが、今は無職な上に多額の裁判費用や慰謝料と桃花の保釈金を支払った後だった為、とてもじゃないが買い取ることは出来なかった。
仕方なく俺は、新しい住まいを早く見つける為に働きに出る事にしたのだが、『犯罪者の親』『子供をネグレクトした親』のレッテルが貼られてしまい、まともな企業に就職するとこさえ出来なかった。
それは皐月も同じで、面接を希望する為 履歴書を送付するが、書類選考だけで落とされているようだ。
【弊社の希望する条件にそぐわない為……】と記載された紙が何通も送られてくる現状に、皐月は最早就活を諦め始めていた。
どの会社から来る書面にも、ていのいい断り文句が書かれているが、『義理の娘を虐待した人間』『犯罪者の母親』のレッテルがはられているに違いない。
これからこれらの評価が、俺にも皐月にも一生ついてまわるのだろう。
退去願いの通知が来て半年後、
【買い主が決まったので、本日付けより半年後までに速やかに退去して下さい。
これに従わなかった場合は、不法占拠とみなし、裁判所より強制退去通告が入ります。】
と書かれた文面が送られてきた。
俺が蓄えた貯蓄を取り崩しながら生活していたこの屋敷での生活も終わりが近づいてきた。
未だ就職先が決まっていない俺と皐月は、無職にも関わらず社長令嬢が抜けない桃花を強引に連れ出し、夜逃げ同然の状態で屋敷を明け渡した。
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