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第七章 襲撃
第19話 断罪1
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「今まで顧問弁護士なんて雇う必要は無かったからな。俺の会社は順風満帆だった。それを…それをお前が…。」
私を睨みつける元父を、私も睨み返す。
「私がなんだと言うのでしょう。私は何もしていません。」
「何もしていないですって?よくも、よくもそんな事が言えたわね!」
「お言葉を返すようですが、白金夫人。」
「な、なによ…」
「貴女にそれを言われたくはないですね。」
「はぁ?」
「そもそも、私のお母様という存在がありながら、貴女は妻子ある男性と関係をもった。出会いがどうであれ、白金社長は私の母と結婚したんです。なのに貴女と社長は不倫関係を続けた。本来なら私と母は、貴女方に慰謝料を請求してもおかしくはなかったんですよ?」
「そ、それは……。」
「私達は何もしなかった。やったのは、私達母娘を追いやったのは、其方ではないですか?」
黙り込む皐月に更に追い討ちをかける。
「母はずっと悩んでいました。苦しんでいました。」
私は持っていたお母様の日記を数冊彼等の前に置いた。
「母は、幼い私を抱え、全く帰ってこない主人をあの家でずっと待っていたんです。なのに、この父親は母を最初から裏切り、私達母娘を放置した。母を苦しめ、死に追いやったのは貴方達なのです。それを…ご自分達がなさった事を棚に上げて、その言い草は許せません。」
「……」
「それに、白金社長が仰る『順風満帆』とは、いったい何をもってしての順風満帆なのでしょう?そもそも私のお爺様のお金が無ければ、今日ここまで会社がもつ事は無かったはずです。お爺様は私やお母様が蔑ろにされている事をご存知でした。本来なら、とうの昔に愛想を尽かされてもおかしくは無かったんです。でも、お爺様はそれをなさらなかった。何故だと思います?」
「そ、それは……」
口篭る元父に、
「もし、貴女方への資金援助を止めてしまったら、私が殺されてしまうと思ったからなんです。」
「そ、そんな事は……」
「有り得ないと仰いますか?白金社長。私は貴方にとってただの駒なのでしょう?不用になったら捨てるだけの。取られても所詮、痛くも痒くもない。将棋の『歩』ぐらいどうとでもなると思ったのでしょうが、『歩』の無い将棋は負け将棋。だから、私は貴方達の目の前から消えたのです。負けて欲しいと思ったから。」
元父は驚愕し、皐月は俯き震えている。
桃花に関しては、何の事を話しているのかさえ分からない状態のようだ。
「駒が消え、お爺様から与えられた執行猶予の様な条件をクリアする事が出来なかった白金社長は、お爺様からの資金援助を打ち切られた。更にお爺様は、sirogane.coの持ち株全てを他社へ売却した。お爺様にとって可愛い孫である私は、櫻井家の養子となり白金家とは無関係となった。であるなら、何の魅力も利益も生み出さない企業の株など紙切れ同様。売却に転じてもおかしく無いと思います。そうでしょ?白金社長。」
目の前で雄弁に語る私を見た元父達は、驚きのあまりか?何も言い返しては来なかった。
私を睨みつける元父を、私も睨み返す。
「私がなんだと言うのでしょう。私は何もしていません。」
「何もしていないですって?よくも、よくもそんな事が言えたわね!」
「お言葉を返すようですが、白金夫人。」
「な、なによ…」
「貴女にそれを言われたくはないですね。」
「はぁ?」
「そもそも、私のお母様という存在がありながら、貴女は妻子ある男性と関係をもった。出会いがどうであれ、白金社長は私の母と結婚したんです。なのに貴女と社長は不倫関係を続けた。本来なら私と母は、貴女方に慰謝料を請求してもおかしくはなかったんですよ?」
「そ、それは……。」
「私達は何もしなかった。やったのは、私達母娘を追いやったのは、其方ではないですか?」
黙り込む皐月に更に追い討ちをかける。
「母はずっと悩んでいました。苦しんでいました。」
私は持っていたお母様の日記を数冊彼等の前に置いた。
「母は、幼い私を抱え、全く帰ってこない主人をあの家でずっと待っていたんです。なのに、この父親は母を最初から裏切り、私達母娘を放置した。母を苦しめ、死に追いやったのは貴方達なのです。それを…ご自分達がなさった事を棚に上げて、その言い草は許せません。」
「……」
「それに、白金社長が仰る『順風満帆』とは、いったい何をもってしての順風満帆なのでしょう?そもそも私のお爺様のお金が無ければ、今日ここまで会社がもつ事は無かったはずです。お爺様は私やお母様が蔑ろにされている事をご存知でした。本来なら、とうの昔に愛想を尽かされてもおかしくは無かったんです。でも、お爺様はそれをなさらなかった。何故だと思います?」
「そ、それは……」
口篭る元父に、
「もし、貴女方への資金援助を止めてしまったら、私が殺されてしまうと思ったからなんです。」
「そ、そんな事は……」
「有り得ないと仰いますか?白金社長。私は貴方にとってただの駒なのでしょう?不用になったら捨てるだけの。取られても所詮、痛くも痒くもない。将棋の『歩』ぐらいどうとでもなると思ったのでしょうが、『歩』の無い将棋は負け将棋。だから、私は貴方達の目の前から消えたのです。負けて欲しいと思ったから。」
元父は驚愕し、皐月は俯き震えている。
桃花に関しては、何の事を話しているのかさえ分からない状態のようだ。
「駒が消え、お爺様から与えられた執行猶予の様な条件をクリアする事が出来なかった白金社長は、お爺様からの資金援助を打ち切られた。更にお爺様は、sirogane.coの持ち株全てを他社へ売却した。お爺様にとって可愛い孫である私は、櫻井家の養子となり白金家とは無関係となった。であるなら、何の魅力も利益も生み出さない企業の株など紙切れ同様。売却に転じてもおかしく無いと思います。そうでしょ?白金社長。」
目の前で雄弁に語る私を見た元父達は、驚きのあまりか?何も言い返しては来なかった。
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