貴方の駒になど真っ平御免です

Saeko

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第七章 襲撃

第18話 対峙

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「この度は、貴重なお時間をありがとうございます。白金社長。」

にこやかに話し始める連城先生。

そう。私は今、2年程前に絶縁した元父とその家族と対峙している。

裁判を控えている為、弁護士さんから、余計な発言をしないように言われているであろう桃花だったが、私の姿を見た途端

「空港で会った駿斗くんの奥さんがなんでここに?お義姉様は?また隠れたの?ったく、お義姉様のせいで桃花は……。」

と言い出したので、慌てた皐月が桃花の口を塞ぎながら、

「連城先生。娘が失礼致しました。で、百合香ゆりかさんは何方に?」

と聞いてきた。

「お久しぶりです、皐月さん。私はちゃんとおりますよ。」

と口を開いた私を見て驚いていた。

「え?コレが百合香…さん?」

「はい。これが私の本来の姿です。お父様はお分かりになりますよね?だって今の私は、生前のお母様と瓜二つなのですもの。」

そう私に言われた元父は、苦虫を潰した様な顔をして、

「あぁ……。」

と小さく言うだけだった。

「え?本当に?百合香…さん?」
「マジ?コレがお義姉様だって~?超絶美人じゃん!」

唖然とする皐月と桃花。

「貴女方が知ってる地味香になった理由は、後ほど白金社長にお聞き下さい。そんな事より、本日伺ったのは、何故私の親友である濱田菜々子さんが、社長のご息女によって誘拐されなければならなかったのか?それと、約一年前に、こちらにいらっしゃる連城先生立会いの下、私とは金輪際関わらないと誓約書に署名捺印を頂いたにも関わらず、何故また私に関わろうとなさるのか?の理由をお聞かせ頂けますか?白金社長。」

「ちょっと待って下さい。こちらは弁護士もいないのに…。不利じゃないですか!」

口を挟む皐月さんに駿斗が反論する。

「私共は、予め白金氏に弁護士同伴で伺います。とお伝えしております。本日のこの日時は白金氏の方から指定された日時でもあるのです。であるのに弁護士をお呼びにならなかったのは、其方側の勝手ではありませんか?」

駿斗の言葉を聞いて瞠目したまま元父を見る皐月さん。
どうやら元父から聞いてなかったみたいね。

「何故?何故弁護士を手配しなかったの?会社の顧問弁護士くらいいるでしょ?」

「ぃない……」

「え?」

「顧問弁護士なんていない!そんなの雇う金が勿体無いだろう。」

顧問弁護士の顧問料の相場は、月額3~5万円くらいだと聞く。
この人はそれくらいの料金でさえ無駄銭だと思っているのだろうか?
いや、違うかもしれない。
今までこんな事態になる事なんて無かったから、雇う必要性を感じなかったのだろう。
まさか、実の娘達から窮地に追いやられる未来があるなんて、きっと想像もしていなかったのだと思った。
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