貴方の駒になど真っ平御免です

Saeko

文字の大きさ
上 下
81 / 97
第七章 襲撃

第13話 救出 2 〜濱田流星side①~

しおりを挟む
ドンドンドンドン
「此処を開けろ!!」


ドンドンドンドン
「早く開けるんだ!!」

ドンドンドンドン
「いるのは分かってるんだ!!早くしろ!」

菜々のピアスに仕込んであるGPSの位置情報から掴んだこの部屋のドアを、俺はガンガン叩き、そこにいるであろう犯人に鍵を明けさせようとしていた。
最悪の場合を考え、櫻井家の運転手である羽田さんの伝手を使って、隣のビルやこの建物の屋上や上の階に特殊部隊にも来てもらった。

少しすると、中からドタドタと足音が聞こえ、

「はいはい。今開けますよっ。って、え?」

ドアを開けたのは、菜々を誘拐した犯人。白金桃花だった。

「え?ルイさんってばどうしっ……!?」

俺は桃花豚女の制止を無視し、どんどん部屋の中に入っていく。

「ルイさんてば、ちょっと待って……!?」

行く手を阻む豚女が邪魔で、

「退け!デブ!!」

と蹴り飛ばした。

「え?デブ?ギャッ!痛ッ。」

俺に蹴られた豚女はボールの様にゴロゴロ転がって壁に激突した。

痛がる女を無視して俺は菜々を探して声を張り上げる。

「菜々!!菜々!!」

「ちょっと!ルイさんってば、蹴るとか止めてよね。」

と文句を言いながら起き上がろうとする豚女の胸ぐらを掴んで

「おい!この豚女!!俺の菜々を何処にやった!!」

「え?俺の菜々?俺のって…「煩い!!早く言え!!言わないと…」!?」

俺は豚女の胸ぐらを掴んだまま無理やり立たせ、ガツンと壁に押し付けた。
と同時に、腕で喉を軽く圧迫してやる。

「ちょッ。ル、イさん…く、ぐるじぃ……」

醜い顔で苦しがる豚女にイラッとした俺は、

「煩ぇ!!早く言えよ!」

壁に押し付ける力を強めると、豚はチラッと目線を動かした。

「あそこか!」

女の一瞬の目の動きを見逃さず、視線の先を確定すると、豚から手を離した。

ゴホッ...ヴ...ゲホッゴホッゴホッ..
気道に突然大量の空気が入ったんだろう、激しくせかえっている豚を無視して、俺はその部屋へ向かっていく。

「菜々!いるなら返事をしろ!」

部屋の中にいると思われる菜々子に呼びかけるが、菜々からの返事が帰って来ない。
俺は焦った。
まさか、菜々はもう……。

ドアに耳をあてて中の様子を伺うと、微かだが、【SOS】を意味するモールス信号が聞こえる。

子供の頃見た映画で、刑事の母親がバイオテロ犯に乗っ取られた病院で、母親から習った【音】で自身の居場所教えるというシーンを見て、モールス信号を菜々に教えた事がある。

菜々子は生きてる!

「くっそ!!鍵かかってんじゃねぇか。菜々子!!蹴破るからドアから離れろ!」

俺は、一度ドアから離れると、

「はぁ~……」

と気合いを溜め、

「せいやー!!」

と一気にドアを蹴り飛ばした!

俺の蹴りで吹っ飛んで行くドア。

「菜々!」

部屋の中で布を口に巻かれ、手を拘束された菜々を見つける。

俺は菜々子を抱き締め、口の布を外し、手の拘束を解いていた。

「大丈夫か?菜々。痛い所は?」

「お兄様…助けてくれてありがとうございます。」

「当たり前だろう。世界中のどこに居たって探し出して助けてやるよ。」

菜々は俺の腕の中で嬉しそうに微笑んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから

咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。 そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。 しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

元婚約者が愛おしい

碧桜 汐香
恋愛
いつも笑顔で支えてくれた婚約者アマリルがいるのに、相談もなく海外留学を決めたフラン王子。 留学先の隣国で、平民リーシャに惹かれていく。 フラン王子の親友であり、大国の王子であるステファン王子が止めるも、アマリルを捨て、リーシャと婚約する。 リーシャの本性や様々な者の策略を知ったフラン王子。アマリルのことを思い出して後悔するが、もう遅かったのだった。 フラン王子目線の物語です。

余命1年の侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
余命を宣告されたその日に、主人に離婚を言い渡されました

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

処理中です...