貴方の駒になど真っ平御免です

Saeko

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第七章 襲撃

第13話 救出 2 〜濱田流星side①~

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ドンドンドンドン
「此処を開けろ!!」


ドンドンドンドン
「早く開けるんだ!!」

ドンドンドンドン
「いるのは分かってるんだ!!早くしろ!」

菜々のピアスに仕込んであるGPSの位置情報から掴んだこの部屋のドアを、俺はガンガン叩き、そこにいるであろう犯人に鍵を明けさせようとしていた。
最悪の場合を考え、櫻井家の運転手である羽田さんの伝手を使って、隣のビルやこの建物の屋上や上の階に特殊部隊にも来てもらった。

少しすると、中からドタドタと足音が聞こえ、

「はいはい。今開けますよっ。って、え?」

ドアを開けたのは、菜々を誘拐した犯人。白金桃花だった。

「え?ルイさんってばどうしっ……!?」

俺は桃花豚女の制止を無視し、どんどん部屋の中に入っていく。

「ルイさんてば、ちょっと待って……!?」

行く手を阻む豚女が邪魔で、

「退け!デブ!!」

と蹴り飛ばした。

「え?デブ?ギャッ!痛ッ。」

俺に蹴られた豚女はボールの様にゴロゴロ転がって壁に激突した。

痛がる女を無視して俺は菜々を探して声を張り上げる。

「菜々!!菜々!!」

「ちょっと!ルイさんってば、蹴るとか止めてよね。」

と文句を言いながら起き上がろうとする豚女の胸ぐらを掴んで

「おい!この豚女!!俺の菜々を何処にやった!!」

「え?俺の菜々?俺のって…「煩い!!早く言え!!言わないと…」!?」

俺は豚女の胸ぐらを掴んだまま無理やり立たせ、ガツンと壁に押し付けた。
と同時に、腕で喉を軽く圧迫してやる。

「ちょッ。ル、イさん…く、ぐるじぃ……」

醜い顔で苦しがる豚女にイラッとした俺は、

「煩ぇ!!早く言えよ!」

壁に押し付ける力を強めると、豚はチラッと目線を動かした。

「あそこか!」

女の一瞬の目の動きを見逃さず、視線の先を確定すると、豚から手を離した。

ゴホッ...ヴ...ゲホッゴホッゴホッ..
気道に突然大量の空気が入ったんだろう、激しくせかえっている豚を無視して、俺はその部屋へ向かっていく。

「菜々!いるなら返事をしろ!」

部屋の中にいると思われる菜々子に呼びかけるが、菜々からの返事が帰って来ない。
俺は焦った。
まさか、菜々はもう……。

ドアに耳をあてて中の様子を伺うと、微かだが、【SOS】を意味するモールス信号が聞こえる。

子供の頃見た映画で、刑事の母親がバイオテロ犯に乗っ取られた病院で、母親から習った【音】で自身の居場所教えるというシーンを見て、モールス信号を菜々に教えた事がある。

菜々子は生きてる!

「くっそ!!鍵かかってんじゃねぇか。菜々子!!蹴破るからドアから離れろ!」

俺は、一度ドアから離れると、

「はぁ~……」

と気合いを溜め、

「せいやー!!」

と一気にドアを蹴り飛ばした!

俺の蹴りで吹っ飛んで行くドア。

「菜々!」

部屋の中で布を口に巻かれ、手を拘束された菜々を見つける。

俺は菜々子を抱き締め、口の布を外し、手の拘束を解いていた。

「大丈夫か?菜々。痛い所は?」

「お兄様…助けてくれてありがとうございます。」

「当たり前だろう。世界中のどこに居たって探し出して助けてやるよ。」

菜々は俺の腕の中で嬉しそうに微笑んだ。
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