貴方の駒になど真っ平御免です

Saeko

文字の大きさ
上 下
79 / 97
第七章 襲撃

第11話 誘拐 3

しおりを挟む
俺が所長と一件の挨拶回りを終え車に戻った時、事務所のメンバーで作ったメッセージアプリのグループトークに連絡が入った。
事務所の近藤さんからだ。

『❖近藤❖さくら濱銀行の濱田菜々子さんを誘拐した。返して欲しくば、白金百合香さんを連れて来いと、若先生ご指名の電話が入っています。』
と。

どうやらリアルタイムで事務所の近藤さんが、犯人と思しき人物と話をしているようだ。
犯人の要求が、身代金じゃなくて、菜々を返して欲しければりりを連れて来い?だって?

『❖駿斗❖近藤さん。犯人の性別は?』

『❖近藤❖変声機で声を変えてはいますが、恐らく口調からして女です。』

女?だったらアノ妄想勘違い女白金 桃花しかないな。

『❖所長❖近藤君。会話の録音は?』

『❖近藤❖しています。』

『❖所長❖流石だな。犯人の発信元は分かるか?』

『❖近藤❖この犯人ってどうなんですかね?事務所の電話に、相手の電話番号出ちゃってるんですけど……』

『❖駿斗❖恐らく犯人は白金桃花だと思います。』

『❖所長❖私もそう思う。』

「父さん、りりに連絡は?」

「私からしよう。お前は、百合香りりかちゃんを連れて濱田家に急ぎなさい。」

「はい、分かりました。」

俺が車を走らせている間も、父さんは近藤さんとやり取りを続けていた。

父さんを事務所に降ろし、俺はマンション迄車を走らせる。

櫻井のおじさんから連絡があったらしいりりが、マンションの前で泣いて震えながら羽田さんに支えられて待っていた。

俺は、ハザードランプを点滅させ車を止め、急いでりりの元へと走った。

「りり。りり!」

「は、やと…菜々が……菜々子が。」

俺に縋り付き泣きじゃくるりりを抱き締める。

「菜々は大丈夫だ。」

「どうして?なんでそんな事が言えるの?」

「犯人は十中八九りりの元義妹だからだ。アノ女に菜々を傷付ける度胸は無い。」

「え?桃花が?桃花が犯人なの?」

「とりあえず今から菜々の実家へ行く。詳しい事は車の中で話すから。」

「う、うん。」

「私が、先導致します。お嬢様は連城様のお車へ早く。」

羽田さんに促されたりりは、なんとか歩きだし、俺の車の助手席に乗り込んだ。
俺はシートベルトをしてやり、運転席へと回り込む。
すると羽田さんの車が、マンションの地下駐車場から出てきて俺の車の前でまで来ると、ついてこいというように小さくクラクションを鳴らす。

俺はりりの右手をそっと握り、

「行くぞ!」

と微笑みかけた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

一年で死ぬなら

朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。 理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。 そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。 そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。 一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・

処理中です...