貴方の駒になど真っ平御免です

Saeko

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第六章 反撃

第5話 祝杯1

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「さぁ~今夜はガンガン飲んじゃって食べちゃって~」

私は今、都内にあるオシャレなBAR Étoileエトワールに来ている。


今夜は私が白金家から自由になったお祝いを、柊伯父様 いや お父様がこのÉtoileを貸し切って下さって、盛大に行ってくださるというのだ。

普段はBAR仕様の為、照明も暗めでお料理もガッツリ系では無いそうだけど、今日は私の為のパーティという事で、店内はとても明るく、お料理も、大貫さんが作って下さった本格フレンチのケータリングが用意された。

「私だってお料理作れるのに~」

と言いながら、シェイカーを振りフレンチに合うカクテルやお酒を用意してくれているのが、ここのオーナーでママの渉さん。
柊お父様のご学友で、亡くなった麗羅お母様の事もよくご存知でいらっしゃるそうだ。

それを証拠に、お店に入って開口一番

「キャー!アナタが私のÉtoileの娘なのね?」

と言って抱きしめられそうになり、渉ママは柊お父様に制されていた。

「あぁん!もう、柊ったら酷いじゃない。」

「俺の娘に汚い手で触るな!」

「汚い手出すって?酷いわ柊。百合香りりかちゃん。百合香ちゃんもそう思うわよね?」

と同意を求められ、返答に困って曖昧に笑っていると、

「笑った顔も麗羅にそっくりだな。」

といきなり男性に戻った渉さんに驚いてしまう。

どうしたらいいのか分からず戸惑っていると、

「渉の事は、あとでちゃんと話してあげるよ。さぁ、主役のりりはこっちだ。」

とお義父様にエスコートされ、私はちょっとだけ高くなっているステージに立たされた。
なんだか分からないけど、皆さんの前でスピーチをする事になってしまった。

「この度は、私 櫻井 百合香さくらい りりかの為にお集まり頂き本当にありがとうございます。先日、其方にいらっしゃいます弁護士の連城先生のお力で、無事に白金家から離籍する事が出来、また 櫻井柊お父様 彌生お母様の養女となる事が出来ました。実の母を亡くして13年、元父は愛人、と言うかあちらにしてみれば麗羅お母様の方が愛人だったのでしょうが、屋敷には全く帰って来ずとても寂し……くはありませんでしたが…」

と言葉を区切って周りを見ると、皆さん大爆笑されている。

「その後、愛人とその子供を家に連れ込み、三人でやりたい放題でした。ですが、お爺様を初め、柊お父様や彌生お母様、連城先生ご夫妻、時子さん 羽田さん 大貫さんにご協力頂き、漸く彼等から離縁する事が出来ました。本当にありがとうございます。このご恩は決して忘れません。ありがとうございました。」

皆さんの前で深々とお辞儀をすれば、割れんばかりの拍手が頭上から降ってきた。

そして、冒頭の渉さんの言葉どおり、飲めや歌えや…って、歌はないけど…、お腹いっぱいフレンチを食べる楽しいパーティになった。
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