貴方の駒になど真っ平御免です

Saeko

文字の大きさ
上 下
64 / 97
第六章 反撃

第3話 示談2

しおりを挟む
「良かったでは無いですか、白金社長。ずっと貴方にとって目障りでしか無かった名ばかりのお子様が、ご自分の目の前からいなくなる。もう関わってもらいたくないと、百合香さんの方から仰っているのですよ?財産相続権を放棄するとまで。なんでしたっけ?あぁ!思い出しました。『あんな奴の為に俺の金をびた一文払う気はない!!』そうでしたよね?櫻井さん。」

と俺が柊氏に聞くと、

「あぁ。確かにそう言ってたな。自分の娘が誘拐されかけたと言うのに……それなのに、見つかったら謝りたかっただと?ふん!見え透いた嘘をよくもまあ弁護士の前で出来たもんだな。」

「まぁまぁ櫻井さん落ち着いて下さい。」

憤慨する柊氏を宥めながら、

「こちらが誓約書です。」

とりりちゃんの希望が書かれた書類を、貴生氏の方へずいっと押し出す。

誓約書には、
櫻井家の養女になる事
白金家の財産相続権を放棄するという事
今後一切櫻井百合香には関わらないで欲しいという事
が書かれている。
またそれ等を白金貴生氏 皐月氏 桃花氏に署名捺印を貰い周知して欲しいと。

俺は貴生氏に、愚妻と愚娘を呼ぶように指示し、先程貴生氏の第二秘書として潜入調査をしてくれている愛妻が入れてくれた、俺好みの美味しい珈琲を飲んだ。

その愛妻 亜由美が、厚化粧の女とドラム缶体型の女を連れて入ってきた。

「失礼致します。社長。奥様とお嬢様をお連れ致しました。」

「あぁ。皐月、桃花。座りなさい。」

「珈琲をお持ち致します。失礼致します。」

と言って亜由美が出て行く時、チラリと俺の方を見てウインクをして行った。
あ~可愛い。思わず口元が緩みそうになるが、営業スマイルをしっかり貼り付け、俺は目の前の愚か者達と対峙した。

「お初にお目にかかります。私、櫻井記念病院の顧問弁護士をしております、連城と申します。」

「櫻井って……百合香お義姉様が見つかったの?」

「黙りなさい桃花。まだ、百合香は見つかっていないそうだ。」

「え?そうなの?じゃなんで弁護士がここにいるの?てか、このおじさん誰?」

柊氏を指差し尋ねてくる貴生氏の娘 桃花。
全く……人を指さしてはいけないと教えられてはいないのだろうか。

「初めまして桃花さん。私は櫻井柊。百合香の伯父だ。それから、人を指差すのはお行儀が悪いから、気をつけようね。」

頭の悪い桃花に、言い聞かせるように話す柊氏。

「え~。そんな事言われた事無いんだけど~。」

っておいおい……どんな教育してんだ?この夫婦。
驚愕のあまり開いた口が塞がらない俺の前に、亜由美が珈琲のおかわりをそっと置いてくれた。
うん。亜由美、ありがとう。愛してるよ。
俺はそういう意味を含め、

「宮本さん。美味しい珈琲をありがとう。」

と言うと、亜由美はにっこり笑って応接室を出ていった。
そして、

「白金社長が仰るとおり、百合香さんはまだ見つかっておりません。その事実は奥様である皐月氏もご存知のはずですよね。」

「……は、い。存じております。」

「え?そうなの?ママ。」

「桃花は黙っていなさい。パパからちゃんと話すから。」

貴生氏に制され口を尖らせている桃花。およそりりちゃんと同い年とは思えないな。
俺はそんな桃花を視界の端にとらえながら、話を続けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

一年で死ぬなら

朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。 理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。 そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。 そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。 一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・

処理中です...