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第六章 反撃
第2話 示談1
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「ご存知のとおり。百合香さんは白金の籍から分籍しています。成人した者であれば、親の承諾が無くても分籍は可能です。また、こちらにいらっしゃる櫻井柊氏と普通養子縁組をする事になり、櫻井の姓になる事を希望されています。その件につきましては、櫻井氏もまた櫻井氏の奥様にも了承の旨は頂いております。特別養子縁組と違い、普通養子縁組は養女になった後も実親の財産を相続出来る権利がありますが、百合香さんは白金の相続権を放棄すると仰っています。」
ここまで一気に捲し立てる様に話し、相手に口を挟ませる事をさせない。
貴生氏はただ魚の様に口をパクパクさせているだけだ。
「百合香は優しいから、今までの実父である君からの虐待は水に流すと言っている。」
「え?そ、それは本当ですか?」
ふん!柊氏の言葉に安堵しているという事は、どうせ金だろう?
これで慰謝料を払わずに済むと思っているのが見え見えだ。
りりちゃん。君はこんな親の元に生まれたのに、今まで本当によく頑張ったね。
さぁ!もうひとふんばりしようか。
「あぁ。百合香は君に人権を無視された事に対しての裁判も、君達家族から受けた虐待に対しての慰謝料も何も請求しないと言っている。但し!」
「但し?」
「今後一切君達家族が、百合香と関わる事を禁じて欲しいと言っている。」
「え?そ、それはどういう…」
柊氏の厳しい口調に怯む貴生氏。
まるで蛇に睨まれた蛙だな。
こんなのが企業のトップとは……部下はさぞかし大変だろう。
俺はそんな事を思いながら、にこやかに、そして諭す様に貴生氏に話を始めた。
「一年前の今日、櫻井兼近氏が電話で宣言したとおりですよ?白金さん。」
「一年前……。娘が見つからなかったらというアレですか……。」
「娘だと思ってないクセに!」
「え?先生。何か?」
ヤバいヤバい。心の声が漏れてしまった。
「いえ?なんでもありませんよ。」
俺はいつもの営業スマイルを貼り付け、話し始める。
「そうです。百合香さんの行方を一年以内に見つける事が出来なかった場合。兼近氏は、御社への融資や支援を止めるという、あの話です。」
「今までのお話からですと、娘は…百合香は見つかったということですよね。」
「いえ、まだですよ?」
「え?でも百合香が放棄…「はい。百合香さんは、一年前のあの日の翌日に、ご自身の希望を書いたこの紙を櫻井氏のご自宅へ送って来られたのです。」そ…うでしたか……。」
俺の言葉を聞いて、何故か気落ちする貴生を櫻井氏と共に不思議がった。
「もし仮に、百合香が見つかったとしたら、貴生君はどうしたかったんだ?」
と聞かれ、
「謝りたかった。」
は?謝りたかった?
よくもそんな嘘が言えたものだ。
躍起になって探していたのはほんの半年程だった。
それ以降は、余計な金をかけたくないという理由で、全く探そうとはしなかったと報告があがっているというのに。
「百合香さんは余程貴方達に会いたくなかったのでは?それに、どうせ貴方は百合香さんを探さないと分かっていたのではないでしょうか。」
俺の言葉に苦虫を潰した様に顔を歪める貴生氏。
見え透いた嘘を弁護士の前でする。
馬鹿な奴だ。
俺はそんな貴生氏を内心嘲笑いながら、鞄の中から書類を出し、貴生にこう告げた、
ここまで一気に捲し立てる様に話し、相手に口を挟ませる事をさせない。
貴生氏はただ魚の様に口をパクパクさせているだけだ。
「百合香は優しいから、今までの実父である君からの虐待は水に流すと言っている。」
「え?そ、それは本当ですか?」
ふん!柊氏の言葉に安堵しているという事は、どうせ金だろう?
これで慰謝料を払わずに済むと思っているのが見え見えだ。
りりちゃん。君はこんな親の元に生まれたのに、今まで本当によく頑張ったね。
さぁ!もうひとふんばりしようか。
「あぁ。百合香は君に人権を無視された事に対しての裁判も、君達家族から受けた虐待に対しての慰謝料も何も請求しないと言っている。但し!」
「但し?」
「今後一切君達家族が、百合香と関わる事を禁じて欲しいと言っている。」
「え?そ、それはどういう…」
柊氏の厳しい口調に怯む貴生氏。
まるで蛇に睨まれた蛙だな。
こんなのが企業のトップとは……部下はさぞかし大変だろう。
俺はそんな事を思いながら、にこやかに、そして諭す様に貴生氏に話を始めた。
「一年前の今日、櫻井兼近氏が電話で宣言したとおりですよ?白金さん。」
「一年前……。娘が見つからなかったらというアレですか……。」
「娘だと思ってないクセに!」
「え?先生。何か?」
ヤバいヤバい。心の声が漏れてしまった。
「いえ?なんでもありませんよ。」
俺はいつもの営業スマイルを貼り付け、話し始める。
「そうです。百合香さんの行方を一年以内に見つける事が出来なかった場合。兼近氏は、御社への融資や支援を止めるという、あの話です。」
「今までのお話からですと、娘は…百合香は見つかったということですよね。」
「いえ、まだですよ?」
「え?でも百合香が放棄…「はい。百合香さんは、一年前のあの日の翌日に、ご自身の希望を書いたこの紙を櫻井氏のご自宅へ送って来られたのです。」そ…うでしたか……。」
俺の言葉を聞いて、何故か気落ちする貴生を櫻井氏と共に不思議がった。
「もし仮に、百合香が見つかったとしたら、貴生君はどうしたかったんだ?」
と聞かれ、
「謝りたかった。」
は?謝りたかった?
よくもそんな嘘が言えたものだ。
躍起になって探していたのはほんの半年程だった。
それ以降は、余計な金をかけたくないという理由で、全く探そうとはしなかったと報告があがっているというのに。
「百合香さんは余程貴方達に会いたくなかったのでは?それに、どうせ貴方は百合香さんを探さないと分かっていたのではないでしょうか。」
俺の言葉に苦虫を潰した様に顔を歪める貴生氏。
見え透いた嘘を弁護士の前でする。
馬鹿な奴だ。
俺はそんな貴生氏を内心嘲笑いながら、鞄の中から書類を出し、貴生にこう告げた、
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