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第五章 それぞれの……
第9話 護られる
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翌朝
伯父様の指示でマンションに来てくれた羽田さんが、如何にもマンションの周りをジョギングする男性といった出で立ちで見回ってくれた。
「お嬢様、大丈夫でしたよ。」
「ありがとうございます、羽田さん。それにしてもジョギングウェア、お似合いですね。」
「それはありがとうございます。これでも毎日5km走っていますから。」
「え?本当ですか?」
吃驚する私に、爽やかな笑顔を返しながら、
「麗羅様に似てこられましたね。やはり母娘だなと思います。」
「あ、ありがとうございます。」
照れ臭くて俯いてしまうと、
「その様なお顔は、他の殿方にはお見せにならないように。連城様のご心配が増すばかりですよ。」
とクスクス笑われてしまう。
「え?連城?駿斗がですか?」
「はい、自分が守れないからよろしく頼むと連城様から仰せつかっております。お嬢様は愛されていらっしゃるのですね。」
駿斗が羽田さんに……嬉しい。
左腕のお揃いのバングルを触りながら、駿斗の事を思う。
「では、お嬢様。大旦那様からのご指示をお話致します。」
先程とは打って変わって、羽田さんが真剣な面持ちとなった事で、今から重要な話が始まるのだとわかった。
私はコンシェルジュの中谷さんに、住民なら自由に使用出来る談話室を借り、そこへと羽田さんを促した。
「早速ですがお嬢様。」
談話室に入り、備え付けの椅子に向かい合わせに座った羽田さんが話し始めた。
「結果から申し上げます。白金貴生氏が動き出しました。」
聞けば父は、あの断罪劇から一ヶ月間、マスコミに追われホテルから出られずにいたが、その後人気俳優と女性タレントが電撃結婚をしたため、マスコミはそちらへ関心を持ちホテルや自宅屋敷前からいなくなったという。
またあの日から一週間程sirogane.coの電話やホームページへの誹謗中傷が鳴り止まなかったそうだが、社員の低頭平身の謝罪や、社長である父が私を探し出し、今までの事を詫びて許しを乞い、これから家族として絆を作っていくとホームページに書いた事で、事態は一応収束したものとみなされたようだ。
「貴生氏は、宣言どおり、お嬢様を探しております。先ず第一に貴生氏は、役所に行ったもようです。既にお嬢様は、離籍し住民票を移していらっしゃいますので、役所の届け出から探す事は出来ません。次に貴生氏が調べたのはお嬢様の就職先を大学に聞きに行ったようです。ですが、大学からの斡旋を受け職に就いたので無いため分からないと言われた様でした。今は探偵を雇って探させているようですが、お嬢様の本来の姿をお忘れ またはご存知無い貴生氏は、探偵に渡す為の写真や資料が全く無い事もあり、操作は難航しているようです。万が一の為、ハッキングによる個人情報の検索をかけられたとしても、お嬢様の情報はかの有名なハッカーでありプログラマーにより、二重にも三重にもトラップを仕掛けた状態で保護されておりますので、ご安心下さい。」
有名なハッカーとか恐ろしいワードを聞いた気がするけど、私は深く聞かない方がいいと判断し、敢えてスルーした。
そして、昨日桃花達が通りかかったのは全くの偶然で、利樹さんの仕事に桃花がくっついてきただけのようだった。
「ですが、約束の期限まであと9ヶ月間は、私の知人と共にお嬢様の通勤と帰宅をお守りする事になりました。」
過保護なお爺様と柊伯父様に、少し呆れもするが、昨日は本当に怖かったので、お言葉に甘える事にしたのだった、
伯父様の指示でマンションに来てくれた羽田さんが、如何にもマンションの周りをジョギングする男性といった出で立ちで見回ってくれた。
「お嬢様、大丈夫でしたよ。」
「ありがとうございます、羽田さん。それにしてもジョギングウェア、お似合いですね。」
「それはありがとうございます。これでも毎日5km走っていますから。」
「え?本当ですか?」
吃驚する私に、爽やかな笑顔を返しながら、
「麗羅様に似てこられましたね。やはり母娘だなと思います。」
「あ、ありがとうございます。」
照れ臭くて俯いてしまうと、
「その様なお顔は、他の殿方にはお見せにならないように。連城様のご心配が増すばかりですよ。」
とクスクス笑われてしまう。
「え?連城?駿斗がですか?」
「はい、自分が守れないからよろしく頼むと連城様から仰せつかっております。お嬢様は愛されていらっしゃるのですね。」
駿斗が羽田さんに……嬉しい。
左腕のお揃いのバングルを触りながら、駿斗の事を思う。
「では、お嬢様。大旦那様からのご指示をお話致します。」
先程とは打って変わって、羽田さんが真剣な面持ちとなった事で、今から重要な話が始まるのだとわかった。
私はコンシェルジュの中谷さんに、住民なら自由に使用出来る談話室を借り、そこへと羽田さんを促した。
「早速ですがお嬢様。」
談話室に入り、備え付けの椅子に向かい合わせに座った羽田さんが話し始めた。
「結果から申し上げます。白金貴生氏が動き出しました。」
聞けば父は、あの断罪劇から一ヶ月間、マスコミに追われホテルから出られずにいたが、その後人気俳優と女性タレントが電撃結婚をしたため、マスコミはそちらへ関心を持ちホテルや自宅屋敷前からいなくなったという。
またあの日から一週間程sirogane.coの電話やホームページへの誹謗中傷が鳴り止まなかったそうだが、社員の低頭平身の謝罪や、社長である父が私を探し出し、今までの事を詫びて許しを乞い、これから家族として絆を作っていくとホームページに書いた事で、事態は一応収束したものとみなされたようだ。
「貴生氏は、宣言どおり、お嬢様を探しております。先ず第一に貴生氏は、役所に行ったもようです。既にお嬢様は、離籍し住民票を移していらっしゃいますので、役所の届け出から探す事は出来ません。次に貴生氏が調べたのはお嬢様の就職先を大学に聞きに行ったようです。ですが、大学からの斡旋を受け職に就いたので無いため分からないと言われた様でした。今は探偵を雇って探させているようですが、お嬢様の本来の姿をお忘れ またはご存知無い貴生氏は、探偵に渡す為の写真や資料が全く無い事もあり、操作は難航しているようです。万が一の為、ハッキングによる個人情報の検索をかけられたとしても、お嬢様の情報はかの有名なハッカーでありプログラマーにより、二重にも三重にもトラップを仕掛けた状態で保護されておりますので、ご安心下さい。」
有名なハッカーとか恐ろしいワードを聞いた気がするけど、私は深く聞かない方がいいと判断し、敢えてスルーした。
そして、昨日桃花達が通りかかったのは全くの偶然で、利樹さんの仕事に桃花がくっついてきただけのようだった。
「ですが、約束の期限まであと9ヶ月間は、私の知人と共にお嬢様の通勤と帰宅をお守りする事になりました。」
過保護なお爺様と柊伯父様に、少し呆れもするが、昨日は本当に怖かったので、お言葉に甘える事にしたのだった、
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