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第五章 それぞれの……
第7話 司書のお仕事
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駿斗が渡米してから三週間後
駿斗は無事アパートメントに到着し、今日から語学学校に通い始める。
私は司書としての研修初日だ。
『おはよ、りり。今日から頑張れ』
「おはよ駿斗。うん、ありがと。駿斗は一旦おやすみ。」
『あぁ、おやすみ、りり。』
駿斗とのメッセージのやり取りを終え、私は職場である図書館へ向かった。
朝礼で挨拶をした私を、皆さん歓迎してくれた事にほっとする。
初日の今日は、先輩の後について返却された本を所定の棚に戻したりしながら、どのジャンルの本が何処にあるのか?また、CDやDVDの視聴も扱っている為、それらの置き場所や機器の操作の仕方を教えて貰ったりした。
当然右も左も分からない新人に、カウンター業務なんて出来るわけが無いのだから、暫くはこういった裏方業務になるのだろう。
昼休みといっても、お昼だから休館にするというわけにいかないので、スタッフを2つに分けて交代で1時間ずつとるのが、この図書館の特徴らしい。
「櫻井さん。お昼にしましょう。」
指導係の海野さんに声をかけられ、ロッカールームからお弁当を取って来て、指定されたスタッフルームへと入った。
「櫻井さん、ここ、座って?」
「ありがとうございます。」
海野さんに促され、私は彼女の隣りに座った。
机にお弁当を広げると、
「わぁ美味しそう!」
「あ、本当だ。」
「凄~い。上手だね~。」
と皆さんからお褒めの言葉を頂いて、恐縮してしまう。
私より年上の方々ばかりだから、どう接したら良いのか分からなかったが、どうやらそんな心配はいらなかったようだ。
皆さんとても気さくで優しく、そして何より本が大好きで、司書になる為に主婦をしながら、あるいは他に仕事をしながら勉強をされた方々だった。
「櫻井さんは?どうして司書になりたかったの?」
「わ、私も皆さんと同じで、本が大好きで……。部屋の壁一面が本棚なんです。」
と答えた。
「わかるわぁ~。捨てられないんだよね~。」
「はい、そうなんです(私の場合、小説の資料だから…担当さんに頼んで集めて貰った貴重な本だったりするのもあるから捨てるわけにはいかないのよね。)。」
「そう言えば…櫻井さんって、日本人なの?」
「えっ?」
「あ~、不躾にごめんなさいね?その……見た目がね?」
あ~そういう事ね。
「はい。クオーターですが、日本国籍ですし、日本で生まれ育ちました。」
「へぇ~、クオーターなんだ。」
「はい。祖母はフランス人です。」
「へぇ~そうなんだ。だからなんだね。」
「もしかして、少しフランス語出来たりするの?」
「は、はい。ほんの少しだけですが…。」
「じゃ、ちょっとだけ話してみてくれる?」
「はい。では……『enchanté
Je m'appelle Ririka SAKURAI.
merci(皆さん初めまして。私の名前は 櫻井 百合香)です。ありがとうございます。)』こ、こんな感じです。」
皆さんから拍手を貰って恐縮してしまう。
「じゃ、フランス人の利用者来たら、櫻井さんにお願いしちゃお。」
「そうね!それはいいかも。」
「よろしくね?櫻井さん。」
皆さんから言い募られ、私はどうしようかと思ったが、断れる雰囲気ではなかった。
仕方ない。お祖母様のスパルタフランス語講座を受けましょう。
私は密かに嘆息し、皆さんのお話を聞いていた。
駿斗は無事アパートメントに到着し、今日から語学学校に通い始める。
私は司書としての研修初日だ。
『おはよ、りり。今日から頑張れ』
「おはよ駿斗。うん、ありがと。駿斗は一旦おやすみ。」
『あぁ、おやすみ、りり。』
駿斗とのメッセージのやり取りを終え、私は職場である図書館へ向かった。
朝礼で挨拶をした私を、皆さん歓迎してくれた事にほっとする。
初日の今日は、先輩の後について返却された本を所定の棚に戻したりしながら、どのジャンルの本が何処にあるのか?また、CDやDVDの視聴も扱っている為、それらの置き場所や機器の操作の仕方を教えて貰ったりした。
当然右も左も分からない新人に、カウンター業務なんて出来るわけが無いのだから、暫くはこういった裏方業務になるのだろう。
昼休みといっても、お昼だから休館にするというわけにいかないので、スタッフを2つに分けて交代で1時間ずつとるのが、この図書館の特徴らしい。
「櫻井さん。お昼にしましょう。」
指導係の海野さんに声をかけられ、ロッカールームからお弁当を取って来て、指定されたスタッフルームへと入った。
「櫻井さん、ここ、座って?」
「ありがとうございます。」
海野さんに促され、私は彼女の隣りに座った。
机にお弁当を広げると、
「わぁ美味しそう!」
「あ、本当だ。」
「凄~い。上手だね~。」
と皆さんからお褒めの言葉を頂いて、恐縮してしまう。
私より年上の方々ばかりだから、どう接したら良いのか分からなかったが、どうやらそんな心配はいらなかったようだ。
皆さんとても気さくで優しく、そして何より本が大好きで、司書になる為に主婦をしながら、あるいは他に仕事をしながら勉強をされた方々だった。
「櫻井さんは?どうして司書になりたかったの?」
「わ、私も皆さんと同じで、本が大好きで……。部屋の壁一面が本棚なんです。」
と答えた。
「わかるわぁ~。捨てられないんだよね~。」
「はい、そうなんです(私の場合、小説の資料だから…担当さんに頼んで集めて貰った貴重な本だったりするのもあるから捨てるわけにはいかないのよね。)。」
「そう言えば…櫻井さんって、日本人なの?」
「えっ?」
「あ~、不躾にごめんなさいね?その……見た目がね?」
あ~そういう事ね。
「はい。クオーターですが、日本国籍ですし、日本で生まれ育ちました。」
「へぇ~、クオーターなんだ。」
「はい。祖母はフランス人です。」
「へぇ~そうなんだ。だからなんだね。」
「もしかして、少しフランス語出来たりするの?」
「は、はい。ほんの少しだけですが…。」
「じゃ、ちょっとだけ話してみてくれる?」
「はい。では……『enchanté
Je m'appelle Ririka SAKURAI.
merci(皆さん初めまして。私の名前は 櫻井 百合香)です。ありがとうございます。)』こ、こんな感じです。」
皆さんから拍手を貰って恐縮してしまう。
「じゃ、フランス人の利用者来たら、櫻井さんにお願いしちゃお。」
「そうね!それはいいかも。」
「よろしくね?櫻井さん。」
皆さんから言い募られ、私はどうしようかと思ったが、断れる雰囲気ではなかった。
仕方ない。お祖母様のスパルタフランス語講座を受けましょう。
私は密かに嘆息し、皆さんのお話を聞いていた。
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