貴方の駒になど真っ平御免です

Saeko

文字の大きさ
上 下
50 / 97
第四章 決別

第13話 会見の裏側2

しおりを挟む
『❖柊❖二人共。黙ってコレを読んでくれ。あんな会見の後だ。不用意に話して敵に知られる訳にはいかないからな。渉の店だから大丈夫だと思うが、用心に越したことはない。』

(以下、メッセージアプリでの会話は『』で表示。また❖と❖の間に書かれた名前は、メッセージの送り主として表示致します。ご了承ください。)

「相変わらず、渉が作るドライマティーニは美味いな。」

『❖保❖了解、柊。渉にとって、麗羅は相変わらずÉtoileなんだな。』

『❖渉❖当たり前だ。麗羅は俺が唯一惚れた最高の女だからな。』

渉は麗羅に心底惚れていた。気持ちこそ麗羅に打ち明けてはいなかったが、俺も柊も、渉の気持ちは分かっていた。
麗羅があの白金と結婚すると聞いた時も、「麗羅が幸せになるなら……」と寂しそうに言っていたな。
そして麗羅が他界してからこの店 Étoile(星)を始め、一生独身でいると決めた渉はオネエとしてカウンターに立った。
本来の姿の渉はとても美丈夫な男だ。女性からも人気があり、よく告白されていた様だったが、「ごめんなさ~い。アタシ、今のなりはこんな(男の格好)だけど~。気持ちは女なの~。」と野太い言っては、ケラケラ笑って断っていた。

『❖柊❖渉。ありがとな。でも安心してくれ。百合香は無事だ。詳しい事は言えないが、ちゃんと安全な場所にいる。実はこの騒動は、数年前から計画されていた事なんだ。』

と衝撃的な言葉を書き出した。

計画的な家出?…………そうか!白金貴生は、この櫻井柊を怒らせたんだ。いや違うな。麗羅の娘、百合香ちゃんをあの男から守ろうとしたのか。麗羅をあんな屑に嫁がせてしまったから。

「それにしてもッ。明日の朝の報道番組が楽しみね~。でも、もうネットじゃ叩かれまくってるけど?」

そう言って、いきなりオネエ言葉になった渉は、パソコンを立ち上げた。
そこには、今日の配信を行なった会社が、既に編集を終えた会見動画を流していた。

「明日はもっと凄いことになるわよ~。」

「どういう事だ?」

「だってそうでしょ~。飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長した会社の社長が、実はずっとネグレクトだったとか。もう、最高のネタじゃなぁい。引きずり下ろそうって思う企業とかいっぱい出てきて~泥沼化するのよ~。アタシのエトワールを苦しめた罰を受けるがいいわ~、」

確かにそうだ。
さっきウチの部長も、「お前のおかげで、販売部数大幅アップだ!と芸能ジャーナル部の益永部長が嬉し泣きしてたぞ。」と苦笑いしていたっけな。

「さ!二人共。明日から忙しくなるんじゃない?アタシもお店閉めるから。」

「そうだな。帰るとしよう。」

「また来てね~。」

渉に別れを告げ、いつの間にか店の前に呼ばれていたタクシーに乗り、俺達はそれぞれ帰宅の途についたのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

stairs(完結)

BL / 完結 24h.ポイント:1,207pt お気に入り:45

浮気症の婚約者様、あなたと結婚はできません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,462pt お気に入り:2,132

婚約者が不倫しても平気です~公爵令嬢は案外冷静~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:6,774pt お気に入り:51

せめて夢の中は君と幸せになりたい

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:120pt お気に入り:2,599

お役御免の召喚巫女、失恋続きののち、年下旦那様と領地改革

恋愛 / 完結 24h.ポイント:198pt お気に入り:2,087

【R18】彼の精力が凄すぎて、ついていけません!【完結】

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,306pt お気に入り:5,023

【R18】旦那様が閨を共にしないと言ったので

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:71pt お気に入り:3,625

運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜

恋愛 / 完結 24h.ポイント:213pt お気に入り:1,554

処理中です...