47 / 97
第四章 決別
第10話 愚か者の窮地(断罪)
しおりを挟む
電話の向こうで、「百合香~」と言って泣き出した女の声が聞こえる。
「お母様。そんなに泣かないで下さい。百合香はきっと大丈夫ですから。」
今、柊はお母様と言ったか?櫻井柊の母親は確か元フランス大使館の娘だったはずだ。自分にそっくりな娘を溺愛していた。
なおも続く櫻井柊の母親らしい泣き声。
「百合香に何かあったら……百合香に……このままでは麗羅に会えない…麗羅…麗羅……ごめんなさい麗羅。貴女の大事な娘 百合香を酷い目に…………あぁ!お父様。私は酷い娘です。お父様の大事な曾孫を不幸にしてしまいました。お許し下さい…………。彌生さん。今すぐフランスのお兄様に国際電話をかけなくては………………。」
フランス元大使館に泣いて詫びている様子の櫻井柊の母親は、その後どこかへ行ってしまったのか、スマホから声が聞こえなくなった。どうやら俺は、フランス大使館に縁がある人物さえも敵に回してしまったようだ。俺は、とんでもない間違いを犯してしまったのか!
頭の中で打開策はないのか?そればかり考えていると、
「貴生君。」
櫻井柊の低い声が聞こえる。
「は、はい……。」
「百合香は君達夫婦にとって、金蔓 太客だったとは……可哀想な百合香。可哀想過ぎるだろう。あんなにいい子なのに……。」
「貴生君、百合香を探し出しなさい!もし、私の可愛い孫娘に何かあった場合は……私は今後、siroganeへの資金援助を行わないと決めた。」
兼近の口から衝撃的な言葉が告げられ、
「え?そ、それは……本当ですか?」
思わず声が裏返ってしまう。
「あぁ本当だ。お前にとっての金蔓の百合香がいなくなったのなら、こちらとしても、お前を援助する意味は無くなったのだからな。」
「そうですね。妹 麗羅の葬儀に愛人を連れて来るような男でも、可愛い姪の百合香のたった一人の親だからと目をつぶっていましたが、百合香がいなくなったのなら必要ありませんね。」
柊が畳み掛けてくる。
「貴生君。」
「はい…。」
「一年だ!」
「え?一年?ですか?」
柊の言葉の意味が分からず聞き返す俺に、
「一年以内に百合香の行方が分からなかったら、我々櫻井家はsiroganeから手をひき、百合香の名誉毀損で君を訴える所存だ。」
と言い放った。
「百合香の為なんかに一銭も出すつもりはない!!だったかな?」
「え?なんの事「百合香が子供の頃、誘拐されかけたと聞いた時、そう言ったのを忘れたのか?貴生君。」なっ!」
そうだ……確かに俺はアイツに金なんてと言った。
「それなのに、百合香を探す為に金を使う事になろうとは、屈辱以外のなにものでもないだろ。いい気味だ!」
「…………」
「まさか、この期に及んで百合香と金を天秤にかけてはいないだろうな?」
「め、滅相もありません。」
「そうか……その言葉が真であれば良いがな。本日から一年後が楽しみだ、貴生君。百合香の親として、誠意を見せてくれ。」
そう言って柊から一方的に電話を切られた直後、記者達が矢継ぎ早に質問をしてくる。
「今の話は本当ですか?白金社長!」
「お答え下さい!虐待してたんですか?金蔓と言っていたのは本当ですか?」
「社長!!」「白金社長!」
「こ、これにて記者会見を終わらせて頂きます。」
俺は、マイクを握りそう言い捨てると、皐月や桃花達を置いて一目散に会場から逃げ出した。
翌朝
新聞や情報番組のトップ記事に、
『sirogane.co社長 白金貴生氏 虐待!』
『実の娘を 金蔓 と』
等と見出しが躍る事になったのは言うまでもない。
「お母様。そんなに泣かないで下さい。百合香はきっと大丈夫ですから。」
今、柊はお母様と言ったか?櫻井柊の母親は確か元フランス大使館の娘だったはずだ。自分にそっくりな娘を溺愛していた。
なおも続く櫻井柊の母親らしい泣き声。
「百合香に何かあったら……百合香に……このままでは麗羅に会えない…麗羅…麗羅……ごめんなさい麗羅。貴女の大事な娘 百合香を酷い目に…………あぁ!お父様。私は酷い娘です。お父様の大事な曾孫を不幸にしてしまいました。お許し下さい…………。彌生さん。今すぐフランスのお兄様に国際電話をかけなくては………………。」
フランス元大使館に泣いて詫びている様子の櫻井柊の母親は、その後どこかへ行ってしまったのか、スマホから声が聞こえなくなった。どうやら俺は、フランス大使館に縁がある人物さえも敵に回してしまったようだ。俺は、とんでもない間違いを犯してしまったのか!
頭の中で打開策はないのか?そればかり考えていると、
「貴生君。」
櫻井柊の低い声が聞こえる。
「は、はい……。」
「百合香は君達夫婦にとって、金蔓 太客だったとは……可哀想な百合香。可哀想過ぎるだろう。あんなにいい子なのに……。」
「貴生君、百合香を探し出しなさい!もし、私の可愛い孫娘に何かあった場合は……私は今後、siroganeへの資金援助を行わないと決めた。」
兼近の口から衝撃的な言葉が告げられ、
「え?そ、それは……本当ですか?」
思わず声が裏返ってしまう。
「あぁ本当だ。お前にとっての金蔓の百合香がいなくなったのなら、こちらとしても、お前を援助する意味は無くなったのだからな。」
「そうですね。妹 麗羅の葬儀に愛人を連れて来るような男でも、可愛い姪の百合香のたった一人の親だからと目をつぶっていましたが、百合香がいなくなったのなら必要ありませんね。」
柊が畳み掛けてくる。
「貴生君。」
「はい…。」
「一年だ!」
「え?一年?ですか?」
柊の言葉の意味が分からず聞き返す俺に、
「一年以内に百合香の行方が分からなかったら、我々櫻井家はsiroganeから手をひき、百合香の名誉毀損で君を訴える所存だ。」
と言い放った。
「百合香の為なんかに一銭も出すつもりはない!!だったかな?」
「え?なんの事「百合香が子供の頃、誘拐されかけたと聞いた時、そう言ったのを忘れたのか?貴生君。」なっ!」
そうだ……確かに俺はアイツに金なんてと言った。
「それなのに、百合香を探す為に金を使う事になろうとは、屈辱以外のなにものでもないだろ。いい気味だ!」
「…………」
「まさか、この期に及んで百合香と金を天秤にかけてはいないだろうな?」
「め、滅相もありません。」
「そうか……その言葉が真であれば良いがな。本日から一年後が楽しみだ、貴生君。百合香の親として、誠意を見せてくれ。」
そう言って柊から一方的に電話を切られた直後、記者達が矢継ぎ早に質問をしてくる。
「今の話は本当ですか?白金社長!」
「お答え下さい!虐待してたんですか?金蔓と言っていたのは本当ですか?」
「社長!!」「白金社長!」
「こ、これにて記者会見を終わらせて頂きます。」
俺は、マイクを握りそう言い捨てると、皐月や桃花達を置いて一目散に会場から逃げ出した。
翌朝
新聞や情報番組のトップ記事に、
『sirogane.co社長 白金貴生氏 虐待!』
『実の娘を 金蔓 と』
等と見出しが躍る事になったのは言うまでもない。
14
お気に入りに追加
4,033
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。



【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定

王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。

一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる