貴方の駒になど真っ平御免です

Saeko

文字の大きさ
上 下
44 / 97
第四章 決別

第7話 愚か者の窮地(疑惑)

しおりを挟む
ったく、もっとまともな質問は無いのか?桃花と利樹の結婚はいつか?どんな出会いだったか?とか。今日は桃花の結婚会見じゃないだろ?

いくら有名な雑誌やテレビ番組からの記者だったとしても、こんな幼稚な質問じゃ雑誌なんて売れないだろうし、視聴率だって上がらないだろうな。

だんだんつまらなくなってきていたら、

「月刊エコジャーナルの和喜多です。白金社長に質問です。」

「(お?俺か?よしよし。どんな質問だ?ん?俺を唸らせてくれよ?和喜多さんよ。)はい。どうぞ。」

「以前私共の取材で、『可愛い一人娘の桃花』と仰ってました。また、本日も司会者の方が同じ様に桃花氏の事を、『一人娘』と紹介されていらっしゃいましたね。」

「はい、そうですが……何か?(なんだなんだ?コイツもだめなのか。)」

「ですが。先程専務になられる京極利樹
氏の秘書に長女の百合香・・・・・・が付きますと仰いましたが…社長のお嬢様は、壇上の桃花氏だけでは無いのですか?」

「え?」
し、しまった!確かに俺はアイツの事を長女・・と言った。

「御社のホームページにも、ご丁寧に社長の家族構成を載せておられますが、そこにも先程の百合香・・・氏は出てきていない。では、百合香氏とは一体何方なのでしょう?白金社長、お答え頂けますか?」

ホームページと言われ、各社の記者達が一斉に会社のホームページを開いているようだ。
確かにそこに、アイツの名前は出てない。
そして俺は、桃花を一人娘と公言している。

「そう言えば、白金社長は随分前に櫻井記念病院のご令嬢と御結婚なさっていらっしゃいましたね?」

「えぇ……」

「確か……死別なさったと記憶しておりますが?」

「えぇ。妻は亡くなりました。その悲しみから救ってくれたのが今の妻の皐月です。」

「では、桃花氏は奥様の連れ子ということでしょうか?桃花氏とは血が繋がっていらっしゃらない?」

「パパと私は正真正銘の親子です!変な事聞かないで下さい!!」

桃花…いらん事言うんじゃない!

俺がどうこの場を乗り切ろうか?と考えていると、

「パパとママは愛し合ってます。それは桃花が生まれた時よりずっと前からです。」

「そうなんですか。桃花さんありがとうございます。」

「はい。分かってくれたならいいです。」

いい事言ったでしょ?パパ?と言わんばかりに俺の方を向いて笑顔を見せる桃花に、俺は引きつった笑いしか返せない。

事態は益々悪化の一途を辿っている。

「桃花さんのお話が本当だとすると、社長は本妻がいらっしゃるにも関わらず、皐月氏と関係を続け、お子様をもうけた。」

「…………(まずい。まずい、まずいまずい!)」

額にも背中にも嫌な汗が流れ落ちていく。

「では、社長。亡くなられた前奥様との間には、お子様はいらっしゃらなかったのでしょうか?」

「パパの前の奥さんには、百合香お義姉様がいます。お義姉様と桃花は同じ年なんですよ。」

空気を全く読まない桃花が、記者が仕込んだ地雷をまた踏んでしまう。

(桃花を黙らせろ!皐月!!)

俺は皐月に目配せしてみたが、皐月は俯いてしまっていてどうにもならない。

利樹君にいたっては、何処吹く風だろう。此方を向く気は一切無いようだ。

「百合香お義姉様ですか。しかも同じ年とは驚きましたよ、社長。」

「……」

「社長?白金社長?大丈夫ですか?」

「はい…。」

「そうですか。では、質問を続け……ちょっと失礼致します。……はい、はい……はい?それは本当ですか?」

ん?なんだ?

今のうちにと、俺はグラスの中の水を一気にのみほした
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

一年で死ぬなら

朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。 理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。 そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。 そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。 一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・

処理中です...