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第四章 決別
第5話 愚か者の窮地(序章)
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「なんだと?アイツが来ていないだと?」
パーティ開始の10分前になっても俺たちがいるスイートルームに挨拶に来ない金蔓だった元嫁の子供 百合香の様子を見に行かせた部下からの報告に、俺は声を荒らげた。
「よく探したのか?」
「はい……ですが社長。ただ 黒髪で眼鏡をかけた地味な20代の女を探せと仰られても……」
部下にそう言われても、アイツの特徴なんてそれしか思いつかない。
俺がもう一度探してこい!と部下に言おうとした時、ドレスアップした皐月が来た。
「どうしたの?あなた。」
「どうもこうも、アイツが来てないんだ。」
「アイツって……あ~、金蔓?」
「あぁそうだ。百合香のヤツがまだ会場に来ていない。」
「別にいいんじゃない?あんなのいなくたって。どうせこの場に来ても、ただそこにいるだけなんだから。家に帰って、あとで本人に言えばいいでしょ?」
皐月はそう言うが、実はこのパーティはライブ配信する予定だった。
桃花の副社長就任
桃花の婚約発表
婚約者 京極利樹の専務就任
その利樹の秘書に百合香をつける
それ等を生で配信する事で、一気にのし上がろうと思っていた。
更に、
京極家は、医療機器
元嫁の実家は医者
IT関連企業を経営する俺は、事業拡大の為にウチが開発した医療にも使えるシステムを京極 櫻井の両方に導入して貰い、更なる飛躍をする予定だった。
だからこその人事だったのに、アイツが来なければ全て台無しになってしまう。
イライラしながら部屋の中を歩き回っていると、
「白金様。予定のお時間が参りました。会場へお入り下さい。」
ホテルの支配人潮田が俺を呼びに来た。
「わ、分かった。皐月、桃花、利樹君。お客様が待ってる。行こう。」
「はい!パパ」
桃花が元気よく返事をするが、それに対していつもの笑顔を返す事は出来なかった。
「皆様、大変長らくお待たせいたしました。sirogane.co 社長白金貴生様 秘書で奥様の皐月様 御息女で一人娘でいらっしゃる桃花様 KGコーポレーションご次男京極利樹様のご登場です。皆様、大きな拍手でお迎え下さい。」
司会者の声に合わせ、会場の観音開きのドアが開けられスポットライトを浴びる。
今日はマスコミも会場に入れているから、こちらが目を細めないといけないくらいのフラッシュの光もあった。
拍手の渦の中、俺はステージまで歩くこの瞬間が大好きだ。若い頃苦労してきた事が一気に吹き飛んでいく気がするからだが、今日はとてもじゃないがそんな気持ちにはなれない。
ライブ配信で世界中の人々が見ている中での新しい人事発表予定だったのに……。
「あなた、顔を上げて。世界中の人が見てるんだから。金蔓の事は、体調不良でここに来れないとでも言ったらいいじゃない。」
「あぁ、そうだな。アイツは体が弱いから、そう言えばいいか。皐月、ありがとう。流石だな。」
俺は皐月の考えに賛同し、皐月をエスコートする為に彼女の腰を抱いてステージまでの道のりを堂々と歩み始めた。
この後の質疑応答で、窮地に追い込まれるとは、この時は微塵も思ってはいなかった。
パーティ開始の10分前になっても俺たちがいるスイートルームに挨拶に来ない金蔓だった元嫁の子供 百合香の様子を見に行かせた部下からの報告に、俺は声を荒らげた。
「よく探したのか?」
「はい……ですが社長。ただ 黒髪で眼鏡をかけた地味な20代の女を探せと仰られても……」
部下にそう言われても、アイツの特徴なんてそれしか思いつかない。
俺がもう一度探してこい!と部下に言おうとした時、ドレスアップした皐月が来た。
「どうしたの?あなた。」
「どうもこうも、アイツが来てないんだ。」
「アイツって……あ~、金蔓?」
「あぁそうだ。百合香のヤツがまだ会場に来ていない。」
「別にいいんじゃない?あんなのいなくたって。どうせこの場に来ても、ただそこにいるだけなんだから。家に帰って、あとで本人に言えばいいでしょ?」
皐月はそう言うが、実はこのパーティはライブ配信する予定だった。
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それ等を生で配信する事で、一気にのし上がろうと思っていた。
更に、
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「わ、分かった。皐月、桃花、利樹君。お客様が待ってる。行こう。」
「はい!パパ」
桃花が元気よく返事をするが、それに対していつもの笑顔を返す事は出来なかった。
「皆様、大変長らくお待たせいたしました。sirogane.co 社長白金貴生様 秘書で奥様の皐月様 御息女で一人娘でいらっしゃる桃花様 KGコーポレーションご次男京極利樹様のご登場です。皆様、大きな拍手でお迎え下さい。」
司会者の声に合わせ、会場の観音開きのドアが開けられスポットライトを浴びる。
今日はマスコミも会場に入れているから、こちらが目を細めないといけないくらいのフラッシュの光もあった。
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ライブ配信で世界中の人々が見ている中での新しい人事発表予定だったのに……。
「あなた、顔を上げて。世界中の人が見てるんだから。金蔓の事は、体調不良でここに来れないとでも言ったらいいじゃない。」
「あぁ、そうだな。アイツは体が弱いから、そう言えばいいか。皐月、ありがとう。流石だな。」
俺は皐月の考えに賛同し、皐月をエスコートする為に彼女の腰を抱いてステージまでの道のりを堂々と歩み始めた。
この後の質疑応答で、窮地に追い込まれるとは、この時は微塵も思ってはいなかった。
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