貴方の駒になど真っ平御免です

Saeko

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第四章 決別

第3話 決行までのカウントダウン 1

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週末
ショッピングだのデートだのと言って、いつもはいない桃花が何故か屋敷にいる。

大貫さんに用事があって1階に降りて来ると、ダイニングテーブルに大量の本と紙を広げた桃花と、それに寄り添うように椅子に座る利樹さんがいた。

どうやら桃花は卒業に足りない単位を補う為に、リポート課題が出された様子。
利樹さんはそれを手伝う様に父から言われたのだろう。

「もぉ~マジムカつくんだけど!あの禿げ教授!!」

「分かった分かった。少し落ち着こうか、桃花。」

「でもぉ~」

「東京ガールズコレ〇ション、行くんだろ?」

「うん!!絶対行く~。」

「だったらこれ、やっちゃわないとな。」

「ゔゔ~……分かった~。」

いつも言ってますが、貴女何歳になったの?桃花さん?

私は大貫さんの所へ行き、二言三言話をすると『触らぬ神に祟りなし』とばかり、自室に戻った。

翌日の日曜日も同様で、相変わらず頭を抱えるグズグズ桃花とお疲れ利樹さんがリビングで課題に追われていた。

「もう少しで終わるから。頑張れ桃花。」

「もぉやだ~!」

「夜、桃花が行きたいって言ってたホテルにあるイタリアンを予約してあるよ。」

「え?マジ?桃花~超嬉しいんだけど。」

「やる気出た?」

「うん!でも……頑張ったご褒美も欲しいな~。」

「分かった。ちょっと予約が取れるか?電話してみるから、その間ここからここまで書いとくんだぞ?」

「ここからここまでね?分かった~。」

何度も言うけど貴女……ゲッ!

「覗きか?百合香。」

リビングから出てきた利樹さんに見つかってしまった。

「丁度いい。ちょっとこい!!」

そう言うと、私の腕を強引に引っ張り、廊下を曲がった所で壁ドンされてしまった。

しか?顔が近いのは気のせい……ではないわね。

私が何も言わずにいると、

「来週の土曜日の事、お前の親父さんから聞いてるよな?」

「……(知ってるわよ。そこで何を言われるのかまでね。)」

「無言か。まぁいい。その日俺は桃花の婚約者としてもそうだが、専務としてsiroganeの社員の前で紹介される。桃花は手始めに副社長としてな。」

「……(ふぅん…興味無いですね。)」

「で、お前は、俺の秘書になる。嬉しいだろ?」

え?利樹さんの秘書?桃花のじゃなくて?その言葉にびっくりして視線を上げたら、利樹さんに顎クイまでされた。

「そんなに赤くなって…そうだったな?お前、昔から俺の事好きだったもんな?」

「…(好き?誰が?てか、赤くなってるのは貴方に意味不な事言われて顎クイまでされてるこの状態に対して頭にきてるからに決まってるじゃない。)」

「そうか…図星で何も言えないか。」

「……(呆れて何も言えないだけよ)」

思い込み激しめの利樹さんに向け、何か言おうと口を開いたその時……

「利く~ん。書いたよ~?利くんどこ~?」

ナイス!桃花の声が聞こえて一瞬ひるんだ利樹さんの鳩尾みぞおちに、思いっきり肘鉄を入れて差し上げた。

「ウッ……」

と短く唸ってうずくまる利樹さんに、

「大丈夫ですか?桃花!桃花?利樹さん、胃が痛むって…」

「え?お義姉様?利くんがどうしたの?」

スリッパをパタパタさせて廊下を走ってきた桃花は、蹲る利樹さんを見て慌てて近寄ってきた。

「私が部屋に戻ろうとして角を曲がったら、貴女の婚約者の利樹さんが「胃が痛む」って…」

私の嘘にギロっと目線だけ上げて私を睨む利樹さんだが、婚約者の桃花の前で私に壁ドンして肘鉄くらったとは言えず、言葉を発する事はなかった。

「リビングのソファに横にならせてあげたらどうかしら?あと、お水と胃薬。」

「そうだね。ありがと、お義姉様。利くん?お腹痛いのにイタリアン行ける?」

そう言いながら、利樹さん支えた桃花は、角を曲がってリビングへ戻っていった。

ふぅ~っと一つ大きく息を吐いて何事も無くて安堵した。

桃花の秘書にするとかって言ってたのは知ってるけど、いつの間にか利樹さんの秘書になってたのね……って言うか、利樹さんの秘書なんて絶対に嫌!

本当、絶対出ていくんだから!

決意を新たにして、私は大きな音をさせないように一人荷造りに励んだのだった。
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