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第三章 学園生活
第10話 学園生活 (大学部 3)
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大学4年の春 それは突然私の耳に飛び込んで来た。
屋敷の部屋で課題をやっていた私は、突然耳に入って来た父と皐月さんの会話に絶句してしまった。
『お疲れ様、貴生。』
『あぁ…。』
『桃花もやっと来年3月で大学を卒業するわね。』
『そうだな。早かったな。』
『桃花が卒業したら、計画どおりsiroganeに入れて社長にするのよね?』
『あぁ。計画に変更はない。』
『じゃ、アノ金蔓は?追い出すの?』
『あぁ。アイツ……百合香は桃花の秘書として入社させる。』
『え?なんでなのよ。』
『アレは櫻井から金を引き出すATMだ。アレを切ったら、櫻井から金が貰えないだろう。』
『あ~そうだったわね。分かったわ。桃花が社長になったらあなたは会長。私は会長秘書で、アレは私の元でこき使ってやるわ。』
『あぁ。そうしてくれ。だがくれぐれも櫻井から苦情が入らない程度にしてくれよ?手を引かれると何かあった時に困るからな。』
『そうね。事業は軌道に乗ってるから大丈夫だと思うけど、転ばぬ先の杖は必要ですもんね。』
はぁ…… 本当、お馬鹿さん達ね。
こんな事寝室で話すとか……
起業家なら、もっと警戒しなきゃダメじゃない。
昔から言うじゃない?【壁に耳あり障子に目あり】って。
今は隙間にカメラあり持ち物に盗聴器ありになるのかしら。
尚も続いている夫婦の会話を聞くのを止め、私は録音が正常にされているか?を確かめた後、課題に取り組む事にした。
明日大学が終わったら、連城先生のところへこの会話持って行ってこよう。
その前に、お爺様と柊伯父様にも連絡しておかなきゃいけないわね。
――✽+†+✽――✽+†+✽――✽+†+✽――
翌日アポイントメントを取ってある連城先生の事務所へ行った。事務所内には、既にお爺様と柊伯父様夫妻がいらした。
「いらっしゃい、りりちゃん。よく来てくれたね。待ってたよ。」
にこやかに笑う顔は、駿斗のそれに似ていた。
駿斗…会いたい。
胸元のペンダントを触る私を、応接セットのソファに促す亜由美さんに従って、私はそこに腰をかけた。
「さあ!揃ったところで始めましょうか。」
私はパソコンを起動させ、昨日録音した2人の会話を流し始めた。自分の孫娘を【金蔓】呼ばわりする義理の息子の嫁の言葉に、お爺様は怒りをあらわにする。
あまりの酷い言葉に泣き出す彌生伯母様の背中を擦る柊伯父の顔も憎しみに歪んでいた。
「これは酷いな……。りりちゃん。よく我慢できたね。」
駿斗……先生に褒められちゃったよ。
「大丈夫です、先生。やっと動けるんですから。ですよね?」
「そうだね。りりちゃんの言う通りだ。櫻井さん。本格的に実行に移しましょう。」
「そうだな。始めましょう、父さん。」
「あぁ……。麗羅、待たせて済まなかった。」
お爺様はお母様の写真を取り出し話しかける。
「百合香……いや、百合香を取り戻す時が来た。見ていてくれ麗羅。」
お母様
見ていて下さい。
時は満ちた
今こそ決行の時
私は父を捨てる
屋敷の部屋で課題をやっていた私は、突然耳に入って来た父と皐月さんの会話に絶句してしまった。
『お疲れ様、貴生。』
『あぁ…。』
『桃花もやっと来年3月で大学を卒業するわね。』
『そうだな。早かったな。』
『桃花が卒業したら、計画どおりsiroganeに入れて社長にするのよね?』
『あぁ。計画に変更はない。』
『じゃ、アノ金蔓は?追い出すの?』
『あぁ。アイツ……百合香は桃花の秘書として入社させる。』
『え?なんでなのよ。』
『アレは櫻井から金を引き出すATMだ。アレを切ったら、櫻井から金が貰えないだろう。』
『あ~そうだったわね。分かったわ。桃花が社長になったらあなたは会長。私は会長秘書で、アレは私の元でこき使ってやるわ。』
『あぁ。そうしてくれ。だがくれぐれも櫻井から苦情が入らない程度にしてくれよ?手を引かれると何かあった時に困るからな。』
『そうね。事業は軌道に乗ってるから大丈夫だと思うけど、転ばぬ先の杖は必要ですもんね。』
はぁ…… 本当、お馬鹿さん達ね。
こんな事寝室で話すとか……
起業家なら、もっと警戒しなきゃダメじゃない。
昔から言うじゃない?【壁に耳あり障子に目あり】って。
今は隙間にカメラあり持ち物に盗聴器ありになるのかしら。
尚も続いている夫婦の会話を聞くのを止め、私は録音が正常にされているか?を確かめた後、課題に取り組む事にした。
明日大学が終わったら、連城先生のところへこの会話持って行ってこよう。
その前に、お爺様と柊伯父様にも連絡しておかなきゃいけないわね。
――✽+†+✽――✽+†+✽――✽+†+✽――
翌日アポイントメントを取ってある連城先生の事務所へ行った。事務所内には、既にお爺様と柊伯父様夫妻がいらした。
「いらっしゃい、りりちゃん。よく来てくれたね。待ってたよ。」
にこやかに笑う顔は、駿斗のそれに似ていた。
駿斗…会いたい。
胸元のペンダントを触る私を、応接セットのソファに促す亜由美さんに従って、私はそこに腰をかけた。
「さあ!揃ったところで始めましょうか。」
私はパソコンを起動させ、昨日録音した2人の会話を流し始めた。自分の孫娘を【金蔓】呼ばわりする義理の息子の嫁の言葉に、お爺様は怒りをあらわにする。
あまりの酷い言葉に泣き出す彌生伯母様の背中を擦る柊伯父の顔も憎しみに歪んでいた。
「これは酷いな……。りりちゃん。よく我慢できたね。」
駿斗……先生に褒められちゃったよ。
「大丈夫です、先生。やっと動けるんですから。ですよね?」
「そうだね。りりちゃんの言う通りだ。櫻井さん。本格的に実行に移しましょう。」
「そうだな。始めましょう、父さん。」
「あぁ……。麗羅、待たせて済まなかった。」
お爺様はお母様の写真を取り出し話しかける。
「百合香……いや、百合香を取り戻す時が来た。見ていてくれ麗羅。」
お母様
見ていて下さい。
時は満ちた
今こそ決行の時
私は父を捨てる
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