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第二章 人々の思惑
第6話 白金百合香
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金蔓
太客
陰キャ
扱いにくい女
愛人
色々言われてるわね。
きっとそうだろうとは思ってたけど、ここまでとは思ってなかったわ。
私は今、弁護士の連城先生の事務所に来ていて、今まで集めた音声データや画像を見ている最中だ。
因みに、私は事務所を訪ねる時には、事務所近くのデパートの地下駐車場に車を停めてもらい、メイクを落としウィッグを取って行くことにしている。
理由は敵(お父様)に私の動向を知られない為だ。
「なかなかにやってくれてるね、りりちゃんの周りの人達は。」
「私も小型盗聴器を聞きながら仕事してるけど、頭きてパソコン潰しそうになった事一回や二回じゃないわよ。」
連城夫妻はそうやって、私の気持ちが落ちないように代弁してくれる。
小さい頃は父に愛されたくて、偶に父が帰ってきた時は、いい子にしたり褒めて貰える様に習い事を頑張っている様子を話したりしていたが、母が亡くなっても涙を見せないどころか愛人を親族席に参列させたと分かった時から、絶望し、求めることを諦めた。
それでも、母が亡くなり父が家にいなくても寂しい思いをせずにいれたのは、隣に住む幼馴染みが優しかったからだった。が、私が優しいと慕っていた『利君』は何処にもいなかったとわかった時の絶望感は半端なかった。
だが、それらが私の気持ちを強くした。
「先生。」
「りりちゃん。どうしたの?」
「あの件、進めて貰ってもいいですか?」
「あの件って……本当に?」
「はい。気持ち固まったので。」
「そうかい?だったら動き出そうか。」
「はい。よろしくお願い致します。」
「了解。亜由美は引き続き調査頼むな。」
「分かったわ。麗羅の願いが叶う日が来るのね。やっと…やっとね。」
涙ぐむ亜由美さんの肩をそっと抱き寄せ、先生は言葉を紡ぐ。
「りりちゃんを絶対取り戻そう。今度こそだ。」
「そうねあなた。今度こそね。」
『りりを取り戻す』
お爺様や伯父様がよく仰る合言葉みたいな言葉。
百合香を櫻井家に取り戻す
百合香を本来の姿に戻す
百合香が幸せになる権利を取り戻す
色んな意味を含んだ言葉だけど、皆私の為に、私の為に動いてくれている。
私は幸せだと思った。
父には貰えなかった愛情を、櫻井家の人達から貰っている。
貰うばかりでは申し訳ない。
だから私は計画を、思いを、実行に移す。
これ以上父の金蔓にはならない!
貴方の駒になんて絶対になってやらない!!
私は母の写真を入れたロケットペンダントを握り、改めて父への復讐を誓った。
太客
陰キャ
扱いにくい女
愛人
色々言われてるわね。
きっとそうだろうとは思ってたけど、ここまでとは思ってなかったわ。
私は今、弁護士の連城先生の事務所に来ていて、今まで集めた音声データや画像を見ている最中だ。
因みに、私は事務所を訪ねる時には、事務所近くのデパートの地下駐車場に車を停めてもらい、メイクを落としウィッグを取って行くことにしている。
理由は敵(お父様)に私の動向を知られない為だ。
「なかなかにやってくれてるね、りりちゃんの周りの人達は。」
「私も小型盗聴器を聞きながら仕事してるけど、頭きてパソコン潰しそうになった事一回や二回じゃないわよ。」
連城夫妻はそうやって、私の気持ちが落ちないように代弁してくれる。
小さい頃は父に愛されたくて、偶に父が帰ってきた時は、いい子にしたり褒めて貰える様に習い事を頑張っている様子を話したりしていたが、母が亡くなっても涙を見せないどころか愛人を親族席に参列させたと分かった時から、絶望し、求めることを諦めた。
それでも、母が亡くなり父が家にいなくても寂しい思いをせずにいれたのは、隣に住む幼馴染みが優しかったからだった。が、私が優しいと慕っていた『利君』は何処にもいなかったとわかった時の絶望感は半端なかった。
だが、それらが私の気持ちを強くした。
「先生。」
「りりちゃん。どうしたの?」
「あの件、進めて貰ってもいいですか?」
「あの件って……本当に?」
「はい。気持ち固まったので。」
「そうかい?だったら動き出そうか。」
「はい。よろしくお願い致します。」
「了解。亜由美は引き続き調査頼むな。」
「分かったわ。麗羅の願いが叶う日が来るのね。やっと…やっとね。」
涙ぐむ亜由美さんの肩をそっと抱き寄せ、先生は言葉を紡ぐ。
「りりちゃんを絶対取り戻そう。今度こそだ。」
「そうねあなた。今度こそね。」
『りりを取り戻す』
お爺様や伯父様がよく仰る合言葉みたいな言葉。
百合香を櫻井家に取り戻す
百合香を本来の姿に戻す
百合香が幸せになる権利を取り戻す
色んな意味を含んだ言葉だけど、皆私の為に、私の為に動いてくれている。
私は幸せだと思った。
父には貰えなかった愛情を、櫻井家の人達から貰っている。
貰うばかりでは申し訳ない。
だから私は計画を、思いを、実行に移す。
これ以上父の金蔓にはならない!
貴方の駒になんて絶対になってやらない!!
私は母の写真を入れたロケットペンダントを握り、改めて父への復讐を誓った。
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