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第1章 新しい家族
第7話 茶番劇で食欲減退
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桃花達がこの家に来てからというもの、父は毎日家に帰ってくるようになった。
今まで全くといって使用していなかった2階奥、東南の角にある夫婦の主寝室には、父と皐月の荷物が運び込まれ、主寝室の手前の南に面した部屋(そこは母が使用していた部屋だった)が桃花の部屋になった。
私の部屋は、桃花の部屋の隣だ。
思い出がいっぱい詰まった母の部屋を、父の一存で桃花の部屋にしたと聞いた時は、腸が煮えくり返る思いがしたが、母に関する物は全てお爺様の御屋敷に運んであった為、私はその部屋を『箱』と思う事でやり過ごす事が出来た。
ある日の夜
ダイニングで夕食を頂いていると、父と桃花の会話が始まった。
「桃花?どうだ?学園生活は。」
「とっても快適よパパ。クラスメイトは皆優しいし、勉強も翔君が上手に教えてくれるから、授業も楽しいわ。」
「翔君?」
「桐谷コーポレーションとか言ってたかな?そこの息子だって。」
「おお!桐谷さんのご子息か。とても優秀なご子息と聞いている。そうかそうか。桐谷君がな。」
「そうなのパパ。最初、お義姉様のノートを見せて貰ったんだけど…お義姉様のノートって綺麗なんだけど、言葉が難しくって…。私にはちょっとてなっちゃうんだけど……
あ!違うのパパ!!私が悪いんだよ?お義姉様は悪くないの。私、まだ学園の勉強に慣れてないからだけなの。」
しれっと私を落とした後言い訳をする桃花に、皐月が加勢する。
「そうね。桃花はつい最近まで公立の高校だったんだもの。学園に慣れるまでは仕方ないわよね。」
「そうなのママ。でも、翔君とか他の子達がホント優しくしてくれるから。だから私、大丈夫なの。」
「桃花は優しい子だな。屑百合香を庇っているんだろ?おい、百合香!」
3人で仲良く茶番劇を繰り広げていた父からいきなり名前を呼ばれ、私は食べていた舌平目のソテーが喉に詰まりそうになるのを堪えながら返事をする。
「はい。お父様。」
「役立たずのお前の代わりに桐谷コーポレーションのご子息が桃花に勉強を教えているんだぞ。申し訳ないと思わないのか?」
「はい。お父様の仰るとおりです。申し訳ございません。」
「だから違うのパパ!お義姉様は悪くないの。だから怒らないで?いつもの優しいパパに戻って。ね?パパ。」
「そうよ、あなた。美味しい食事が不味くなってしまうわ。」
「あぁそうだな。全く百合香のせいで。おい百合香!」
「はい。お父様。」
「一家団欒の食事の邪魔だ!これからお前は自分の部屋で食べろ。暗くて引きこもりのお前には丁度いいだろ。」
引きこもりって……引きこもってる人は、学校は行かないし食事も自室でて人を言うんじゃないの?あとで調べてみよう。
父の言葉に心の中でツッコミを入れる。
「そんな酷い事言っちゃダメよ?パパ。お義姉様も家族なんだから、ご飯は皆で食べないとなの。ね?そうよね?ママ。」
「そうね桃花。皆で食べるから美味しいのよね。百合香さん。これからも家族皆でお食事しましょうね。」
「全く……皐月も桃花も優しいな。おい百合香!皐月と桃花に感謝しろよ!」
「はい。お父様。ありがとうございます。」
その後も茶番劇は続いたが、私はすっかり食欲を無くしてしまい、テーブルの下にレコーダーを貼り付けたまま、「失礼します。」と席を立ち、時子さんに目配せをしてダイニングを後にした。
今まで全くといって使用していなかった2階奥、東南の角にある夫婦の主寝室には、父と皐月の荷物が運び込まれ、主寝室の手前の南に面した部屋(そこは母が使用していた部屋だった)が桃花の部屋になった。
私の部屋は、桃花の部屋の隣だ。
思い出がいっぱい詰まった母の部屋を、父の一存で桃花の部屋にしたと聞いた時は、腸が煮えくり返る思いがしたが、母に関する物は全てお爺様の御屋敷に運んであった為、私はその部屋を『箱』と思う事でやり過ごす事が出来た。
ある日の夜
ダイニングで夕食を頂いていると、父と桃花の会話が始まった。
「桃花?どうだ?学園生活は。」
「とっても快適よパパ。クラスメイトは皆優しいし、勉強も翔君が上手に教えてくれるから、授業も楽しいわ。」
「翔君?」
「桐谷コーポレーションとか言ってたかな?そこの息子だって。」
「おお!桐谷さんのご子息か。とても優秀なご子息と聞いている。そうかそうか。桐谷君がな。」
「そうなのパパ。最初、お義姉様のノートを見せて貰ったんだけど…お義姉様のノートって綺麗なんだけど、言葉が難しくって…。私にはちょっとてなっちゃうんだけど……
あ!違うのパパ!!私が悪いんだよ?お義姉様は悪くないの。私、まだ学園の勉強に慣れてないからだけなの。」
しれっと私を落とした後言い訳をする桃花に、皐月が加勢する。
「そうね。桃花はつい最近まで公立の高校だったんだもの。学園に慣れるまでは仕方ないわよね。」
「そうなのママ。でも、翔君とか他の子達がホント優しくしてくれるから。だから私、大丈夫なの。」
「桃花は優しい子だな。屑百合香を庇っているんだろ?おい、百合香!」
3人で仲良く茶番劇を繰り広げていた父からいきなり名前を呼ばれ、私は食べていた舌平目のソテーが喉に詰まりそうになるのを堪えながら返事をする。
「はい。お父様。」
「役立たずのお前の代わりに桐谷コーポレーションのご子息が桃花に勉強を教えているんだぞ。申し訳ないと思わないのか?」
「はい。お父様の仰るとおりです。申し訳ございません。」
「だから違うのパパ!お義姉様は悪くないの。だから怒らないで?いつもの優しいパパに戻って。ね?パパ。」
「そうよ、あなた。美味しい食事が不味くなってしまうわ。」
「あぁそうだな。全く百合香のせいで。おい百合香!」
「はい。お父様。」
「一家団欒の食事の邪魔だ!これからお前は自分の部屋で食べろ。暗くて引きこもりのお前には丁度いいだろ。」
引きこもりって……引きこもってる人は、学校は行かないし食事も自室でて人を言うんじゃないの?あとで調べてみよう。
父の言葉に心の中でツッコミを入れる。
「そんな酷い事言っちゃダメよ?パパ。お義姉様も家族なんだから、ご飯は皆で食べないとなの。ね?そうよね?ママ。」
「そうね桃花。皆で食べるから美味しいのよね。百合香さん。これからも家族皆でお食事しましょうね。」
「全く……皐月も桃花も優しいな。おい百合香!皐月と桃花に感謝しろよ!」
「はい。お父様。ありがとうございます。」
その後も茶番劇は続いたが、私はすっかり食欲を無くしてしまい、テーブルの下にレコーダーを貼り付けたまま、「失礼します。」と席を立ち、時子さんに目配せをしてダイニングを後にした。
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