妹よりブスな姉の幸せ

Saeko

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第12章 ブス姉が幸せになる為に(ブス姉vs元家族)

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寝台に身体を横たえた夫人は娘のリーナカレンデュナを呼びこう話始めた。
「先程貴女が訴えていた、"ランドルフ公爵令嬢が我が家に挨拶にも来ない事への非礼”のことについて話をするわ。」

唐突とも言える事を話し始めた母に、少し首を傾げていたリーナカレンデュナだったが、
「はい、お母様」
と言って、寝台の横に椅子を持って来ると、そこに座り話を聞く体勢になった。
「リーナ。よくお聞きなさい。貴女は先程、ランドルフ公爵令嬢とウィンザード伯爵令息のお二人が、わたくし達の元に挨拶に来られないのはおかしいと言っていたわね。」
と静かに、そして幼子に言って聞かせるように話を続ける公爵夫人の言葉に、「はい」と素直に返事を返す令嬢。
「でもね、お二人が挨拶に来られなかった事、彼等に何も非は無いのですよ。何故なら元を正せばわたくしが悪いのですもの。本来でしたら、此方の領地に入って直ぐ伯爵家を訪ねる予定でしたのに、結局体調を崩してしまい、伯爵家を訪れる日が遅くなってしまったのですからね。」
「そんな…。でもお母様は悪く「いえ、わたくしが悪いのです。きっと予定通りに事が運んでいさえすれば、ランドルフ公爵令嬢様とウィンザード伯爵令息様のご婚約式にかち合うことはなかったのです。お二人のご婚約式は予め本日執り行われると決まっていたに違いありません。その日に、偶々たまたまわたくし達の来訪が重なってしまっただけの事。それに、わたくし達はウィンザード伯爵ご当主を訪ねるお約束をさせて頂いたのであって、ご嫡男であらせられるウィンザード伯爵令息からされたら、ご両親のお客様であるわたくし達に対して挨拶に出てくる必要は無いのです。ましてやご婚約者であらせられるランドルフ公爵令嬢にとっても同じ事なのです。」
「で、でも……。」
「それに、アンジェーヌが出奔したそもそもの原因はわたくしにあるのですもの。」
「そ、そんな事!あの件に関しては、お母様は悪くありませんわ。私が…リーナがお姉様のご婚約者だったハワード殿下に愛されてしまった事がいけなかったのですもの。」
両の手で顔を覆い、よよと泣き崩れる(ふり)をする令嬢だったが、次の母の言葉で身体をこわばらせた。
「嘘泣きはお止めなさい、リーナ。みっともないですわよ。」
「え?お、お母様?何を仰って…」
と思わずたじろいで両の手を顔から外してしまう。見開かれたその瞳には、全く涙で濡れてはいなかった。

夫人はそんな娘の様子に一つ大きく嘆息し
「リーナ。貴女は姉のアンジェーヌを出し抜いて、自身が殿下に見初められた、胸がすく思いだと嬉しそうにはしゃいでそう言っていたそうではありませんか?」
の今まで一度も聞いた事の無い、冷たい母の声色に令嬢は震え上がった。
「とはいえわたくしは、そんな殿下を咎めもせず『貴女・・の婚約者なのだからしっかり・・・・なさい!』とアンジェーヌを叱責したのですもの。わたくしは母親失格ですわね。」
と今度は泣きそうな声色で夫人が両の手で顔を覆う。
そんな夫人の髪を優しく撫でつつ、
「リンディだけが悪いのでは無い。私も不敬を恐れハワード殿下に何も言えずにいたのだから。だからそんなに自身を責めてはいけないよ、リンディ。リーナも、もう母様を苦しませる言動は控えてくれ。」
そう父に言われ、今度こそふり・・ではなく、項垂れ落ち込む令嬢がいた。

マリヴェル公爵家に与えられた客間の隣りの部屋には連れてきた公爵家の従者達がいた。
だが、彼等が何回か家族のいる部屋にお茶を持ち入室した際の部屋の中雰囲気がとても重苦しいものだった為、誰もが直ぐに退室してしまった、と後にマリヴェル公爵家のタウンハウスに戻った際、他の従者達に話していたという。(後日談)
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