妹よりブスな姉の幸せ

Saeko

文字の大きさ
上 下
137 / 179
第11章 ブス姉が幸せになる為に(辺境伯vs公爵)

4

しおりを挟む
ごうを煮やし遂に怒り始めた公爵に伯爵はひとつ大きな溜め息をつくと、パンパンと手を叩いて執事長を呼んだ。

「お呼びですか」
「あぁ。公爵殿が我が領地の領民台帳をご所望だ。持ってきて貰えるか?」
「畏まってございます。ご一緒にお茶のおかわりもお持ち致します。」
「宜しく頼む。」
主の伯爵にそう言われた執事長は恭しく礼をしサロンを出ていった。


暫くして、分厚い冊子を手にした執事長が、紅茶のセットと茶菓子を乗せたワゴンを押した侍女と共にサロンに戻ってきた。
「お待たせ致しました。仰せの物は此方にございます。」
と、執事長は手にしていたそれを主の伯爵に手渡した。
「手間をかけたねマハンドール。さぁマリヴェル公爵殿、ご希望の台帳は此方です。どうぞ心ゆくまでご覧下さい。」
と言い、受け取りテーブルの上に置いた領民台帳を公爵の前に押し出した。
それをひったくる様に受け取った公爵は、
「失礼する」
と言って台帳を乱暴に開くと、最初のページから勢いよくめくり始めた。
「アンジェーヌ……アンジェーヌ……。何処だ?何処に書かれているのだ?」
と時折娘の名前を呟きながらページをめくる公爵の様子には鬼気迫るものがあった。

そんな公爵の様子に、(この御仁、台帳の見方も知らんのか?)と心の中で思いつつも、執事長は
「先程焼きあがった紅茶のシフォンケーキにございます。添えてございます生クリームをつけてお召し上がりください。」
と客の公爵家当主、公爵夫人、公爵嬢。そして主である伯爵、伯爵夫人の順に紅茶とシフォンケーキを乗せた皿の給仕を、連れて来た侍女と共にしていく。
実はこの侍女、アンジェリータの侍女であるマーサなのだが、台帳の確認に必死な公爵は当然の事、公爵母娘もその事に気づく様子は全く無かった。

時折紅茶を飲みながら、公爵は一通り台帳を確認した。が、アンジェーヌ・・・・・・という名前は何処にも無かった。
公爵は"見落としたのかもしれぬ”と思い、その後3回通り台帳内にある名前を見直した。が、やはり"アンジェーヌ"も"マリヴェル”という文字も見当たらなかった。

公爵が必死に娘の名前を探している最中、公爵の横に座る夫人は、その様子を心配そうに見つめながら、紅茶を口にしたりシフォンケーキを摘んだりしていた。一方娘のリーナカレンデュナは、細かく刻んだ紅茶の茶葉入りのシフォンケーキがいたく気に入った様子で、マーサ扮する侍女に何度もおかわりを所望していた。

公爵家面々の三者三様の様子に、ウィンザード伯爵夫妻が呆れた顔でそれを見ていた事を、公爵家の者達は全く気づいていなかった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

魔術師セナリアンの憂いごと

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,698pt お気に入り:1,026

聖女の姉が行方不明になりました

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:31

悪役令嬢が死んだ後

恋愛 / 完結 24h.ポイント:333pt お気に入り:6,143

はじめて愛をくれた人

BL / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:102

ブレイブ・リンカネーション〜TS少女は武器を取る〜

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:10

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:1,206

テューリンゲンの庭師

BL / 連載中 24h.ポイント:120pt お気に入り:40

処理中です...