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第六章 本格的な始動
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空をご覧になりながら「ヴィント」の仰ったのは、多分、ジェフェリー様の妖精に向けて仰ったのだろけど、私には妖精の姿が見えなかったから、ジェフェリー様の妖精は、きっとはずしがり屋さんなのね。
「ジェフェリー様も、兄君のザック様同様、妖精の加護をお持ちでいらっしゃいますのね?」
「そうなんです。俺は一体だけですが。そう仰るアンジェーヌ様も加護持ちでいらっしゃいますよね?しかも複数体ではありませんか?」
「えぇ、そうですわ。」
「やはりそうでいらっしゃいましたか。あの、卒業舞踏会の夜。遠目でしたので光の球にしか見えませんでしたが、複数の光が飛び交っておいたのを見かけましたので、そうではないかな?と思っておりました。」
「そうでしたの。あれをご覧になっていらしたのね。」
「はい。その際、お義姉上が飛んでいかれる方角が我が領がある方でしたので、直ぐに兄上に手紙を書いて、ヴィントに持って行って貰いました。」
「そうでしたのね。だからザック様はあの様にとても早いお日にちで、この家に来られたのだわ。」
「兄上はそんなに早く?」
「えぇ。確かこちらに越してきた翌日だったと記憶しておりますわ。」
「兄上がその様に……。そうだったのですね。兄上はきっと嬉しかったのだと思います。兄上はずっとお義姉上にお会いしたいと想いを募らせておられましたから。」
「ザック様が私を……」
確かにザック様は私に好意を寄せて下さっていると仰ってたけれど、前世の元カレといい今世の元婚約者といい、とてもじゃないけど最低最悪な男とばかり関わってきたおかげで、軽い(?)いや重い(?)男性不信になっていた私は、ザック様の言葉を信じきることが出来ないでいたの。
でもザック様の身内の方からも同じ様に言われたら、閉ざしてた心を少しは開けてもいいのかなと思い始めていたわ。
と、調理場でロールキャベジの準備をしながらそんな事を思っていたら、ジェフェリー様の妖精ヴィントからの知らせを受けたであろうザック様が我が家にやって来られたの。
しかもかなり急いで来られたらしく、
「ロールキャベジとやらはまだあるのですか?」
と、玄関でお迎えしたマーサに飛びつく様に仰ったものですから、マーサが驚いて腰を抜かしてしまったの。
その場にバッタリと倒れてしまったマーサは、どうやら倒れた拍子に腰を痛めてしまったらしく、一人では立ち上がれないでいたの。
私は急いでロールキャベジの温め直しをしてた鍋を釜戸からおろしマーサに駆け寄ると、
「大丈夫?マーサ。立てるかしら?」
「えぇ。大丈夫でございます、お嬢様。少し驚いてしまっただけですので。」
と言いながら、腰を擦り擦りどうにか立ち上がろうとするマーサに手を貸しながら、
「アイザックス様!いえ。ウィンザード伯爵令息様!!貴方様は女性になんと酷い事をなさるのですか!いくらロールキャベジを召し上がりたかったとはいえ、今のは行き過ぎでしてよ?」
とザック様を一喝してやったわ。
そんな私の剣幕に驚かれたのか、
「申し訳ありません、マーサ嬢。お怪我はありませんか?」
とマーサに椅子を勧めるザック様。その様子はといえば、酷く落ち込んでいたわね。
そんなザック様に、
「ありがとう存じますアイザックス伯爵令息様。」
と言って笑顔でお礼を言って勧められた椅子に座ろうとするマーサ。でも次の瞬間、
「イッ!」
と言ったまま下唇をギュッと噛み、あれよあれよという間に彼女の瞳に涙が溜まってきたの。
これは相当ダメなやつだわ
さぁ困ったわ…
流石私も、前世は教師だったけど養護教諭じゃなかったもの。
マーサみたいなあんな症状に対して手当なんて無理!
てか、ザック様てば、食い意地張りすぎだっちゅーの!
とりあえずマーサには横になってもらわないとだよね。
そう思った私は、恥ずかしがるマーサを説き伏せ、階段を駆け上がると、マーサの部屋から布団を持ってマーサのところに戻ったのはいいんだけど……
床、しかも土足の板の間に布団を直に敷くわけにも行かず、かと言って二階に連れていこうにも、マーサは一歩も歩けそうにない。
どうしたものかと途方に暮れていたら、
「マーサ嬢を伯爵邸へお連れしましょう、お義姉上。」
とジェフェリー様がそう言ってくれたの。
ジェフェリー様てば、ナイスアイディアだわ
「ジェフェリー様も、兄君のザック様同様、妖精の加護をお持ちでいらっしゃいますのね?」
「そうなんです。俺は一体だけですが。そう仰るアンジェーヌ様も加護持ちでいらっしゃいますよね?しかも複数体ではありませんか?」
「えぇ、そうですわ。」
「やはりそうでいらっしゃいましたか。あの、卒業舞踏会の夜。遠目でしたので光の球にしか見えませんでしたが、複数の光が飛び交っておいたのを見かけましたので、そうではないかな?と思っておりました。」
「そうでしたの。あれをご覧になっていらしたのね。」
「はい。その際、お義姉上が飛んでいかれる方角が我が領がある方でしたので、直ぐに兄上に手紙を書いて、ヴィントに持って行って貰いました。」
「そうでしたのね。だからザック様はあの様にとても早いお日にちで、この家に来られたのだわ。」
「兄上はそんなに早く?」
「えぇ。確かこちらに越してきた翌日だったと記憶しておりますわ。」
「兄上がその様に……。そうだったのですね。兄上はきっと嬉しかったのだと思います。兄上はずっとお義姉上にお会いしたいと想いを募らせておられましたから。」
「ザック様が私を……」
確かにザック様は私に好意を寄せて下さっていると仰ってたけれど、前世の元カレといい今世の元婚約者といい、とてもじゃないけど最低最悪な男とばかり関わってきたおかげで、軽い(?)いや重い(?)男性不信になっていた私は、ザック様の言葉を信じきることが出来ないでいたの。
でもザック様の身内の方からも同じ様に言われたら、閉ざしてた心を少しは開けてもいいのかなと思い始めていたわ。
と、調理場でロールキャベジの準備をしながらそんな事を思っていたら、ジェフェリー様の妖精ヴィントからの知らせを受けたであろうザック様が我が家にやって来られたの。
しかもかなり急いで来られたらしく、
「ロールキャベジとやらはまだあるのですか?」
と、玄関でお迎えしたマーサに飛びつく様に仰ったものですから、マーサが驚いて腰を抜かしてしまったの。
その場にバッタリと倒れてしまったマーサは、どうやら倒れた拍子に腰を痛めてしまったらしく、一人では立ち上がれないでいたの。
私は急いでロールキャベジの温め直しをしてた鍋を釜戸からおろしマーサに駆け寄ると、
「大丈夫?マーサ。立てるかしら?」
「えぇ。大丈夫でございます、お嬢様。少し驚いてしまっただけですので。」
と言いながら、腰を擦り擦りどうにか立ち上がろうとするマーサに手を貸しながら、
「アイザックス様!いえ。ウィンザード伯爵令息様!!貴方様は女性になんと酷い事をなさるのですか!いくらロールキャベジを召し上がりたかったとはいえ、今のは行き過ぎでしてよ?」
とザック様を一喝してやったわ。
そんな私の剣幕に驚かれたのか、
「申し訳ありません、マーサ嬢。お怪我はありませんか?」
とマーサに椅子を勧めるザック様。その様子はといえば、酷く落ち込んでいたわね。
そんなザック様に、
「ありがとう存じますアイザックス伯爵令息様。」
と言って笑顔でお礼を言って勧められた椅子に座ろうとするマーサ。でも次の瞬間、
「イッ!」
と言ったまま下唇をギュッと噛み、あれよあれよという間に彼女の瞳に涙が溜まってきたの。
これは相当ダメなやつだわ
さぁ困ったわ…
流石私も、前世は教師だったけど養護教諭じゃなかったもの。
マーサみたいなあんな症状に対して手当なんて無理!
てか、ザック様てば、食い意地張りすぎだっちゅーの!
とりあえずマーサには横になってもらわないとだよね。
そう思った私は、恥ずかしがるマーサを説き伏せ、階段を駆け上がると、マーサの部屋から布団を持ってマーサのところに戻ったのはいいんだけど……
床、しかも土足の板の間に布団を直に敷くわけにも行かず、かと言って二階に連れていこうにも、マーサは一歩も歩けそうにない。
どうしたものかと途方に暮れていたら、
「マーサ嬢を伯爵邸へお連れしましょう、お義姉上。」
とジェフェリー様がそう言ってくれたの。
ジェフェリー様てば、ナイスアイディアだわ
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