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第10章 ブス姉が幸せになる為に(準備編)
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ザック様からの求婚をお受けすると申し上た私を、ザック様は大層優しく抱き締めて下さい乍、
「ありがとうジェーン。嬉しいよ!」
と何度も何度もそう仰ってた。
そして、いつの間にかテーブルの上に置かれていた指輪の入った小箱を再び手に取られると、指輪を私の左手の紅差し指に嵌めようとなさったの。でも、私はその彼の手を止め、
「ザック様。私は先程、ザック様からの求婚をお受けすると申しました。が、確認しておきとう事柄がございます。」
と言ったわ。
「何を確認したいの?ジェーン。」
とザック様は、私の両の手を取ったまま少しだけ頭を傾げられ、そう問うて来られたわ。
「皆様がご存知のとおり、私はハワード殿下に婚約破棄をされた所謂傷もの令嬢にございます。また、マリヴェル公爵家からも離籍し、今は平民の身。いくらランドルフ公爵家に養女として入らせて頂いたと致しましても、社交における私の評価は、"ハワード殿下に婚約破棄された元公爵令嬢”である事に変わりはないと存じますわ。それでもザック様は、私で宜しいんですの?」
とお聞きしたの。
するとザック様は、
「俺がジェーンを好きになったのは、ジェーンの家柄でも身分でも無いよ。ジェーンがジェーンだから好きになったんだ。だから、ジェーンの事を誰がなんと言おうと関係ない。それに…、俺は、ジェーンが殿下から大勢の人の前で婚約を破棄された時、傍にいられなかった、ジェーンを守れなかった。」
そう仰るザック様の瞳には後悔の念が表れていたわ。
そんな彼の様子に私は慌てて、
「でもそれは致し方の無い事ですわ。だってザック様とは学年が違うのですもの。」
とそれを払拭して頂こうとしたの。なのに
「そうだね。確かに不可能だった。でも俺は悔しかったんだ。あの日あの時、その場にいてキミを守れていたらと、ずっとずっとそう思っていた。」
と、ザック様は一瞬だけ悲しげに瞳を揺らされ眼を伏せられたわ。だけど直ぐに私を熱っぽい視線で見据え、
「ジェーンが度々ウィンザード領に来られてる事を俺は知っていた。それは前にも伝えたよね?」
「えぇ。」
「ジェーンが楽しそうにあの家の修繕をしていたのを見た時、俺はジェーンがこのウィンザード伯爵領を選んでくれ、そして移り住んでくれるのかもしれないと思って、期待で胸がワクワクしたんだ。だってそうだろ?これからずっとジェーンが傍にいてくれるかもしれない。俺の手の届く所にいてくれるのかもしれないのだからね。だから、本当に此の地に来てくれたと分かった時、俺は本当に嬉しかったんだ。そしてその時決めたんだ!俺はこの手で、ジェーンを悲しませる全ての事柄から守ってみせる。ジェーンの笑顔を守るんだって。だから、家柄も身分も関係ない。ジェーン自身が俺の傍にいてくれたらそれで良い。他には何もいらないんだ。」
そう仰ってくださった。
そして、
「改めて申し込むよ。アンジェリータ様。私の生涯たった一人の妻になって下さい。私の全てで貴女を幸せに致します。」
と仰ると再び私の前に跪かれ、プロポーズして下さったの。
(男性にここまで言わせたくせに、これ以上グダグダと駄々をこねる様な事を言ったら、それこそ罰当たりだしめちゃくちゃ失礼よね?)
そう思った私は、
「ザック様……。大変嬉しゅうございます。私の方こそ、ザック様の想いを試す様な事を申しました。大変失礼致しましたわ。こんな私で宜しければ、どうか末永く宜しくお願い申し上げますわ。」
と申し上げ、正式に求婚をお受けしたの。
その後、私達のやり取りをじっと見守って下さいましたランドルフ公爵閣下とウィンザード伯爵ご夫妻から割れんばかりの拍手を頂いてしまった私は、盛大に恥ずかしくなっちゃったけど、そんな私を「可愛い可愛い」と仰って抱き締めて下さるザック様の広くて逞しい腕の中で、(あぁ、本当に幸せだな。やっと私にも幸せが廻ってきたんだな。凛子先生。私、今度こそ幸せになります!)と前世で本当にお世話になった凛子先生に、心の中でそう話しかけたわ。
「ありがとうジェーン。嬉しいよ!」
と何度も何度もそう仰ってた。
そして、いつの間にかテーブルの上に置かれていた指輪の入った小箱を再び手に取られると、指輪を私の左手の紅差し指に嵌めようとなさったの。でも、私はその彼の手を止め、
「ザック様。私は先程、ザック様からの求婚をお受けすると申しました。が、確認しておきとう事柄がございます。」
と言ったわ。
「何を確認したいの?ジェーン。」
とザック様は、私の両の手を取ったまま少しだけ頭を傾げられ、そう問うて来られたわ。
「皆様がご存知のとおり、私はハワード殿下に婚約破棄をされた所謂傷もの令嬢にございます。また、マリヴェル公爵家からも離籍し、今は平民の身。いくらランドルフ公爵家に養女として入らせて頂いたと致しましても、社交における私の評価は、"ハワード殿下に婚約破棄された元公爵令嬢”である事に変わりはないと存じますわ。それでもザック様は、私で宜しいんですの?」
とお聞きしたの。
するとザック様は、
「俺がジェーンを好きになったのは、ジェーンの家柄でも身分でも無いよ。ジェーンがジェーンだから好きになったんだ。だから、ジェーンの事を誰がなんと言おうと関係ない。それに…、俺は、ジェーンが殿下から大勢の人の前で婚約を破棄された時、傍にいられなかった、ジェーンを守れなかった。」
そう仰るザック様の瞳には後悔の念が表れていたわ。
そんな彼の様子に私は慌てて、
「でもそれは致し方の無い事ですわ。だってザック様とは学年が違うのですもの。」
とそれを払拭して頂こうとしたの。なのに
「そうだね。確かに不可能だった。でも俺は悔しかったんだ。あの日あの時、その場にいてキミを守れていたらと、ずっとずっとそう思っていた。」
と、ザック様は一瞬だけ悲しげに瞳を揺らされ眼を伏せられたわ。だけど直ぐに私を熱っぽい視線で見据え、
「ジェーンが度々ウィンザード領に来られてる事を俺は知っていた。それは前にも伝えたよね?」
「えぇ。」
「ジェーンが楽しそうにあの家の修繕をしていたのを見た時、俺はジェーンがこのウィンザード伯爵領を選んでくれ、そして移り住んでくれるのかもしれないと思って、期待で胸がワクワクしたんだ。だってそうだろ?これからずっとジェーンが傍にいてくれるかもしれない。俺の手の届く所にいてくれるのかもしれないのだからね。だから、本当に此の地に来てくれたと分かった時、俺は本当に嬉しかったんだ。そしてその時決めたんだ!俺はこの手で、ジェーンを悲しませる全ての事柄から守ってみせる。ジェーンの笑顔を守るんだって。だから、家柄も身分も関係ない。ジェーン自身が俺の傍にいてくれたらそれで良い。他には何もいらないんだ。」
そう仰ってくださった。
そして、
「改めて申し込むよ。アンジェリータ様。私の生涯たった一人の妻になって下さい。私の全てで貴女を幸せに致します。」
と仰ると再び私の前に跪かれ、プロポーズして下さったの。
(男性にここまで言わせたくせに、これ以上グダグダと駄々をこねる様な事を言ったら、それこそ罰当たりだしめちゃくちゃ失礼よね?)
そう思った私は、
「ザック様……。大変嬉しゅうございます。私の方こそ、ザック様の想いを試す様な事を申しました。大変失礼致しましたわ。こんな私で宜しければ、どうか末永く宜しくお願い申し上げますわ。」
と申し上げ、正式に求婚をお受けしたの。
その後、私達のやり取りをじっと見守って下さいましたランドルフ公爵閣下とウィンザード伯爵ご夫妻から割れんばかりの拍手を頂いてしまった私は、盛大に恥ずかしくなっちゃったけど、そんな私を「可愛い可愛い」と仰って抱き締めて下さるザック様の広くて逞しい腕の中で、(あぁ、本当に幸せだな。やっと私にも幸せが廻ってきたんだな。凛子先生。私、今度こそ幸せになります!)と前世で本当にお世話になった凛子先生に、心の中でそう話しかけたわ。
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