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第10章 ブス姉が幸せになる為に(準備編)
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ウィンザード伯爵邸に到着した私とマーサは、執事長のマハンドールさんの後に続き、伯爵ご夫妻がおらるという応接室に入りました。勿論ザック様も一緒にですわ。
「やぁ!よく来てくれたね、アンジェリータ嬢。待っていたよ。」
「よくいらしてくれたわ、アンジーちゃん。」
とご夫妻がソファから立ち上がって迎えて下さったの。
「本日は私事にも関わらずお心をお砕き下さり、誠にありがとう存じますわ。」
とワンピースのスカートを持ってカーテシーをすると、
「もう!嫌だわ、アンジーちゃんたら。ザックから話は聞いてるのでしょう?義理とはいえ貴女は私の姪になるのよ。そして、その後の良き頃に、私の義娘になるの。なのにそんな他人行儀な振る舞いをされてしまうと、私…悲しくなってしまうわ。」
と息継ぎも無く一気にそう仰られた伯爵夫人は、私の刺した刺繍入りのレースの手巾を目に当ててしくしくと泣いてしまわれました。
ですが、
「母上。その様に泣き真似をしてジェーンを困らすのはお止め下さい。」
とザック様がお母上である夫人を冷めた目でご覧になりながらそう仰いましたの。
「え?泣き真似でしたの?」
と困惑していた私の顔を手巾をずらしてちらりとご覧になられた夫人の目は、ザック様が仰るとおり、涙に濡れた形跡は全くございませんでした。そればかりか、
「もう!つまらないわね、ザックったら。もう少しこの状況を楽しませてくれたら良いのに。」
と仰い乍、手巾を外された夫人は口元からペロリと小さく舌を出され、私にウィンクなさいましたの。
そのご様子は、前世で言うところの"てへぺろ”そのものでしたわ。
そして、そんな夫人のご様子に、ザック様はハァ…と大きなため息と共に呆れられ、伯爵閣下はガハハと大笑いなさっておられましたわ。
そんなウィンザード伯爵家の和気あいあいなやり取りを見た私は、
「ウィンザード家は、素敵なご家族で羨ましいですわ。それに比べて私の家族は……。」
と思わず声に出してしまいましたの。
そう……
前世でも今世でも両親とこんな風に和気あいあいと過ごした思い出は、私には一度も無かった。
前世の父は教師でもあったからか、とても厳格な人だったし、今世の父は、自分と母のいいとこ取りの可愛いリーナを溺愛する人だったから。
そして二人の父に共通しているのは前世の親も今世の親も、私は彼等に愛されていたという思いが無いという事だ。
私は、そんな事を思い出して、また少し気持ちが沈んでしまいましたの。ですが、そんな私の様子をいち早く察して下さったザック様は、
「大丈夫だ、ジェーン。君はもう俺の家族の一員と同じなんだ。父上も母上もそう思っていらっしゃるはずだ。」
と私の肩をそっと抱いて下さいましたの。
すると伯爵閣下も、
「そうだぞ、アンジー嬢。君はもう、私達夫婦の娘同様だよ。」
と穏やかな笑顔でそう仰ってくださり、またそのお言葉に続けて、
「そうですわよ、アンジーちゃん。現に貴女はもう、私の姪になる手筈も整ってるのよ。こちらをご覧なさい?」
と、ウィンザード伯爵夫人は、夫人の前の席に座っております私の前に、そっと一通の封書を差し出されましたの。
夫人から差し出された封書の中身をちらりと拝見致しました私は、その内容に困惑してしまいましたわ。
すると、
「先程馬車の中で話たろう?さぁ、全文をしっかりと読んでごらん。」
と、ザック様はそう仰ってにこりと笑って下さいましたの。
「分かりましたわ、ザック様。しっかりと拝読致しますわね。」
と申しまして、私は中身をじっくりと拝読致しました。
そこにはザック様が車中で仰っていられました内容が、綺麗な文字で書かれておりましたわ。
「やぁ!よく来てくれたね、アンジェリータ嬢。待っていたよ。」
「よくいらしてくれたわ、アンジーちゃん。」
とご夫妻がソファから立ち上がって迎えて下さったの。
「本日は私事にも関わらずお心をお砕き下さり、誠にありがとう存じますわ。」
とワンピースのスカートを持ってカーテシーをすると、
「もう!嫌だわ、アンジーちゃんたら。ザックから話は聞いてるのでしょう?義理とはいえ貴女は私の姪になるのよ。そして、その後の良き頃に、私の義娘になるの。なのにそんな他人行儀な振る舞いをされてしまうと、私…悲しくなってしまうわ。」
と息継ぎも無く一気にそう仰られた伯爵夫人は、私の刺した刺繍入りのレースの手巾を目に当ててしくしくと泣いてしまわれました。
ですが、
「母上。その様に泣き真似をしてジェーンを困らすのはお止め下さい。」
とザック様がお母上である夫人を冷めた目でご覧になりながらそう仰いましたの。
「え?泣き真似でしたの?」
と困惑していた私の顔を手巾をずらしてちらりとご覧になられた夫人の目は、ザック様が仰るとおり、涙に濡れた形跡は全くございませんでした。そればかりか、
「もう!つまらないわね、ザックったら。もう少しこの状況を楽しませてくれたら良いのに。」
と仰い乍、手巾を外された夫人は口元からペロリと小さく舌を出され、私にウィンクなさいましたの。
そのご様子は、前世で言うところの"てへぺろ”そのものでしたわ。
そして、そんな夫人のご様子に、ザック様はハァ…と大きなため息と共に呆れられ、伯爵閣下はガハハと大笑いなさっておられましたわ。
そんなウィンザード伯爵家の和気あいあいなやり取りを見た私は、
「ウィンザード家は、素敵なご家族で羨ましいですわ。それに比べて私の家族は……。」
と思わず声に出してしまいましたの。
そう……
前世でも今世でも両親とこんな風に和気あいあいと過ごした思い出は、私には一度も無かった。
前世の父は教師でもあったからか、とても厳格な人だったし、今世の父は、自分と母のいいとこ取りの可愛いリーナを溺愛する人だったから。
そして二人の父に共通しているのは前世の親も今世の親も、私は彼等に愛されていたという思いが無いという事だ。
私は、そんな事を思い出して、また少し気持ちが沈んでしまいましたの。ですが、そんな私の様子をいち早く察して下さったザック様は、
「大丈夫だ、ジェーン。君はもう俺の家族の一員と同じなんだ。父上も母上もそう思っていらっしゃるはずだ。」
と私の肩をそっと抱いて下さいましたの。
すると伯爵閣下も、
「そうだぞ、アンジー嬢。君はもう、私達夫婦の娘同様だよ。」
と穏やかな笑顔でそう仰ってくださり、またそのお言葉に続けて、
「そうですわよ、アンジーちゃん。現に貴女はもう、私の姪になる手筈も整ってるのよ。こちらをご覧なさい?」
と、ウィンザード伯爵夫人は、夫人の前の席に座っております私の前に、そっと一通の封書を差し出されましたの。
夫人から差し出された封書の中身をちらりと拝見致しました私は、その内容に困惑してしまいましたわ。
すると、
「先程馬車の中で話たろう?さぁ、全文をしっかりと読んでごらん。」
と、ザック様はそう仰ってにこりと笑って下さいましたの。
「分かりましたわ、ザック様。しっかりと拝読致しますわね。」
と申しまして、私は中身をじっくりと拝読致しました。
そこにはザック様が車中で仰っていられました内容が、綺麗な文字で書かれておりましたわ。
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