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第六章 本格的な始動
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ウィンザード閣下に元家名で呼ばないようにお願いした私は続けて、
「しかしながらマリヴェル公爵家と離縁致しましたにも関わらず、元両親が私を探しておられるのというのであれば、『アンジェーヌ』という名前さえも捨ててしまう方が良いのでは無いかと思うのです。」
「ほほぅ。それは改名なさりたいということかな?」
「はい閣下。仰るとおりにございます。いつまでも『アンジェーヌ』を名乗っておりますと、元両親やハワード殿下に見つかってしまいますわ。その様な事になりましたら、私はこの領地から出て行かなくてはならなくなりますもの。」
「公爵様に見つかったらウィンザード領を出ていくというの?」
「はい、夫人。私、あの方々とは二度と関わりを持ちたくないんですの。」
「そうか。それ程までに元ご家族と殿下に見つかりたく無いのだな?」
「はい……」
閣下のお言葉に、如何にも辛そうな顔で答えてみせたわ。
本当はこれっぽっちも辛くはないんだけど、あの人達と金輪際関わりたくないのは事実だものね。
すると
「でしたらわたくしに良い考えがありますわ。これからアンジェーヌ様は、『アンジー』と名乗れば良いわ。」
と仰って胸の前でパンと手を叩かれる伯爵夫人。
おそらく私の元お母さまより年上でいらっしゃるのだと思うけど、仕草もお言葉もとても可愛らしいわ。
夫人のそのご様子に
「母上。その呼び名なくて、私が既にジェ…「なら問題無いじゃない。」え?」
「あら?聞こえなかったの?わたくしは、問題無いと言ったのよ?アイザックス。」
「は、はぁ……。それは分かっておりますが……。何故アンジーと呼ぶ事に問題が無いと?」
「だってそうでしょう?アンジェーヌ様は既にアイザックスからアンジーと呼ばれていらっしゃるのでしょう?でしたら既に呼ばれ慣れていらして、その呼び名に抵抗を感じてはいらっしゃらない。そうではなくて?アンジー様?」
と問われた私は、
「え、えぇ。学園に在学中、仲良くして下さっていたお友達からも、『アンジー』の愛称で呼ばれておりましたから、全くございませんわ。」
とお答えしたの。
「ほらご覧なさいな。わたくしが言ったとお「お言葉ですが母上。私は彼女をアンジーとは呼んではおりませんよ。」え?そうなの?」
ザック様にバッサリと否定され、夫人は目をぱちくり。
「あら、そうなの?では、アイザックスはなんて?」
「私は…その……。私だけの特別な呼び方が良いと思って……。彼女を…その……。」
と口篭るザック様に
「ほほぉ。特別な呼び名でとな?アイザックスも隅には置けないな。」
夫人に私を何と呼んでいるか?を問われ、ザック様がたじろいでおられるところを、閣下からも弄られて始めたザック様。
「それ程迄にアンジー嬢の事を……。そうかそうか。」
と、また嬉しそうにワインを召し上がる閣下と、
「特別な存在なのね?アイザックスにとってアンジー様は。」
とこれまた上機嫌な夫人。
「どうせ兄上は、『此処で言ったら特別感無くなるだろう。』って思ってるんでしょ?でも無駄だよ?お二人に適うわけないじゃない。」
とフルーツゼリーを召し上がりながら、ザック様を揶揄うジェフェリー様に、
「煩いぞ、ジェフ。」
と真っ赤な顔で反論なさるザック様。
「母上。私からお答えします。兄上は、アンジェーヌ様の事を……ジェ、ふごッ!?」
言いかけたジェフ様の口を手で押さえるザック様。
そのお顔は真っ赤に染まってましたね。
「あらあら。そんなに恥ずかしくなるようなお名前で呼んでいるの?アイザックスは。」
と夫人はとてもにこやかに微笑まれながらも、『素直に白状なさい?』という無言の圧力をおかけになっていたの。
「しかしながらマリヴェル公爵家と離縁致しましたにも関わらず、元両親が私を探しておられるのというのであれば、『アンジェーヌ』という名前さえも捨ててしまう方が良いのでは無いかと思うのです。」
「ほほぅ。それは改名なさりたいということかな?」
「はい閣下。仰るとおりにございます。いつまでも『アンジェーヌ』を名乗っておりますと、元両親やハワード殿下に見つかってしまいますわ。その様な事になりましたら、私はこの領地から出て行かなくてはならなくなりますもの。」
「公爵様に見つかったらウィンザード領を出ていくというの?」
「はい、夫人。私、あの方々とは二度と関わりを持ちたくないんですの。」
「そうか。それ程までに元ご家族と殿下に見つかりたく無いのだな?」
「はい……」
閣下のお言葉に、如何にも辛そうな顔で答えてみせたわ。
本当はこれっぽっちも辛くはないんだけど、あの人達と金輪際関わりたくないのは事実だものね。
すると
「でしたらわたくしに良い考えがありますわ。これからアンジェーヌ様は、『アンジー』と名乗れば良いわ。」
と仰って胸の前でパンと手を叩かれる伯爵夫人。
おそらく私の元お母さまより年上でいらっしゃるのだと思うけど、仕草もお言葉もとても可愛らしいわ。
夫人のそのご様子に
「母上。その呼び名なくて、私が既にジェ…「なら問題無いじゃない。」え?」
「あら?聞こえなかったの?わたくしは、問題無いと言ったのよ?アイザックス。」
「は、はぁ……。それは分かっておりますが……。何故アンジーと呼ぶ事に問題が無いと?」
「だってそうでしょう?アンジェーヌ様は既にアイザックスからアンジーと呼ばれていらっしゃるのでしょう?でしたら既に呼ばれ慣れていらして、その呼び名に抵抗を感じてはいらっしゃらない。そうではなくて?アンジー様?」
と問われた私は、
「え、えぇ。学園に在学中、仲良くして下さっていたお友達からも、『アンジー』の愛称で呼ばれておりましたから、全くございませんわ。」
とお答えしたの。
「ほらご覧なさいな。わたくしが言ったとお「お言葉ですが母上。私は彼女をアンジーとは呼んではおりませんよ。」え?そうなの?」
ザック様にバッサリと否定され、夫人は目をぱちくり。
「あら、そうなの?では、アイザックスはなんて?」
「私は…その……。私だけの特別な呼び方が良いと思って……。彼女を…その……。」
と口篭るザック様に
「ほほぉ。特別な呼び名でとな?アイザックスも隅には置けないな。」
夫人に私を何と呼んでいるか?を問われ、ザック様がたじろいでおられるところを、閣下からも弄られて始めたザック様。
「それ程迄にアンジー嬢の事を……。そうかそうか。」
と、また嬉しそうにワインを召し上がる閣下と、
「特別な存在なのね?アイザックスにとってアンジー様は。」
とこれまた上機嫌な夫人。
「どうせ兄上は、『此処で言ったら特別感無くなるだろう。』って思ってるんでしょ?でも無駄だよ?お二人に適うわけないじゃない。」
とフルーツゼリーを召し上がりながら、ザック様を揶揄うジェフェリー様に、
「煩いぞ、ジェフ。」
と真っ赤な顔で反論なさるザック様。
「母上。私からお答えします。兄上は、アンジェーヌ様の事を……ジェ、ふごッ!?」
言いかけたジェフ様の口を手で押さえるザック様。
そのお顔は真っ赤に染まってましたね。
「あらあら。そんなに恥ずかしくなるようなお名前で呼んでいるの?アイザックスは。」
と夫人はとてもにこやかに微笑まれながらも、『素直に白状なさい?』という無言の圧力をおかけになっていたの。
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