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第七章 ヒロインが出ていった後の王都の人々
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「そうそう。これよ。このドレスが相応しいと思うわ。」
アンジェーヌさん(もう、お姉様でも何でもないんだから、そう呼んだっていいわよね。)の部屋だった壁にかけられていた豪華なドレスを見て、うっとりしてしまいましたの。
「前にも一度見た事があったけど、やっぱり素敵なドレスよね。こんなに素敵なドレスを着られないだなんて、アンジェーヌさんはなんて可哀想だったのかしら。」
早速、壁にかかっているドレスを取ろうとしましたの。でも、ドレスは手が届かない高さにありましたのよ。
「前に見た時は、直ぐに取れましたのに……。変ですわね。」
と不思議に思いましたが、
「あ!きっとアンジェーヌさんが意地悪で高い所に掛け直したんだわ!そうよ、そうに違いありませんわね。本当に意地の悪いこと。きっとリーナが、アンジェーヌさんより小さくて可愛くてハワード様から愛されております事を恨んで、意地悪したんですのね。その気持ちは分かりますけども……。でも、アンジェーヌさんの背丈が伸びてしまったのは、リーナの所為ではないのですから、意地悪しなくても良いと思いますわ。ですわよね?イリヤ?」
とイリヤに尋ねますと、
「はい。お嬢様はとてもお可愛いらしいです。壁のドレスは私がお取り致しますね。」
とイリヤが言いましたので、
「偉いわ、イリヤ。リーナが言わなくても気づきましたのね。」
と彼女を褒め、ドレスを取って貰いましたの。
流石私の侍女ですわね。よく気が付いて偉いですわ。後でお父様に言って、イリヤのお給金を上げて貰いましょう。
イリヤから受け取ったドレスを、アンジェーヌさんが置いていった鏡台の前で合わせてみましたの。
するとどうでしょう!
「まぁ!とても良くお似合いですわ、お嬢様。まるでお伽の中のお姫様の様にございます。」
とイリヤが感激した様な声でそう言いましたの。
イリヤが言うとおり、鏡に写っていたのは、何処かの国のお姫様になったかの様な私でしたわ。
前にもこうやってドレスを身体に当てましたが、鏡では見ませんでしたわね。
それに致しましても、ハワード様のお見立ては流石ですわね。
本当に素敵なドレスなんですもの。
きっとこのドレスも、本当はリーナに贈って下さるおつもりでしたのに、何かも間違いでアンジェーヌさんのところに届いてしまったに違いありませんわ。
そのように結論付けますと、また鏡に映った自身の姿にうっとりしながら、
「本当にそうね。リーナはお姫様なんですわ。決めましたわ!明日のお茶会のドレスはこれにしますわね。」
と鏡越しでイリヤにそう申しますと、イリヤが慌てて止めようとしましたの。
「お嬢様、そのドレスは夜会の方が相応しかと存じ…「お黙りなさい!リーナがこれにすると言ったらするんですの!貴女はリーナの侍女なんだから、リーナの言うことに従えば良いのよ!」は、はい!!も、申し訳ございません。」
イリヤは頭を下げて謝りましたの。ですから直ぐに許してあげましたわ。
そういう心遣いも、主として、高貴な身分の令嬢として振る舞うべき事ですものね。
そうよ。私は公爵令嬢なんですの。
そんじょそこらの貴族令嬢なんかより格が断然上なんですもの、ドレスもより相応しいものを着るべきなのですわ。
イリヤは元は子爵令嬢だったらしいから、その辺はよく分かっておりませんのね。
良いですわ。リーナが直々に一から教育し直して差し上げますわね。
「さあ、ドレスは決まりましたから、次はお茶会の会場ですわね。お茶会といったらお庭で綺麗なお花を見ながらですわよね。さぁイリヤ、リーナについていらっしゃい。」
そう言って、イリヤを従えお母様自慢のお庭に意気揚々と向かいましたの。
でもそこでまさか、庭師からとんでもない事を言われるとは思いもしませんでしたわ。
*☼*―――――*☼*―――――*☼*
作者より補足
リーナカレンデュナが、ドレスが前より高い位置になっていると言っておりました件ですが、彼女の気の所為ではありません。
確かに、ドレスはアンジェーヌ(アンジェリータ)の部屋の壁の上の方にかかっていましたが、かけたのはアンジェーヌではありません。
掛け直したのは、マーサの後輩侍女であるメリッサという者です。
そもそもアンジェリータは、公爵家と離縁してから、一度も帰って来てないというのに、どうして意地悪が出来ると言うのでしょうね。
流石頭の中がお花畑令嬢ですね。
因みにですが、後にマーサとメリッサとの手紙のやり取りから、マーサの行方が公爵閣下にバレてしまいます。ですが、それはまた後ほどのお話で……。
アンジェーヌさん(もう、お姉様でも何でもないんだから、そう呼んだっていいわよね。)の部屋だった壁にかけられていた豪華なドレスを見て、うっとりしてしまいましたの。
「前にも一度見た事があったけど、やっぱり素敵なドレスよね。こんなに素敵なドレスを着られないだなんて、アンジェーヌさんはなんて可哀想だったのかしら。」
早速、壁にかかっているドレスを取ろうとしましたの。でも、ドレスは手が届かない高さにありましたのよ。
「前に見た時は、直ぐに取れましたのに……。変ですわね。」
と不思議に思いましたが、
「あ!きっとアンジェーヌさんが意地悪で高い所に掛け直したんだわ!そうよ、そうに違いありませんわね。本当に意地の悪いこと。きっとリーナが、アンジェーヌさんより小さくて可愛くてハワード様から愛されております事を恨んで、意地悪したんですのね。その気持ちは分かりますけども……。でも、アンジェーヌさんの背丈が伸びてしまったのは、リーナの所為ではないのですから、意地悪しなくても良いと思いますわ。ですわよね?イリヤ?」
とイリヤに尋ねますと、
「はい。お嬢様はとてもお可愛いらしいです。壁のドレスは私がお取り致しますね。」
とイリヤが言いましたので、
「偉いわ、イリヤ。リーナが言わなくても気づきましたのね。」
と彼女を褒め、ドレスを取って貰いましたの。
流石私の侍女ですわね。よく気が付いて偉いですわ。後でお父様に言って、イリヤのお給金を上げて貰いましょう。
イリヤから受け取ったドレスを、アンジェーヌさんが置いていった鏡台の前で合わせてみましたの。
するとどうでしょう!
「まぁ!とても良くお似合いですわ、お嬢様。まるでお伽の中のお姫様の様にございます。」
とイリヤが感激した様な声でそう言いましたの。
イリヤが言うとおり、鏡に写っていたのは、何処かの国のお姫様になったかの様な私でしたわ。
前にもこうやってドレスを身体に当てましたが、鏡では見ませんでしたわね。
それに致しましても、ハワード様のお見立ては流石ですわね。
本当に素敵なドレスなんですもの。
きっとこのドレスも、本当はリーナに贈って下さるおつもりでしたのに、何かも間違いでアンジェーヌさんのところに届いてしまったに違いありませんわ。
そのように結論付けますと、また鏡に映った自身の姿にうっとりしながら、
「本当にそうね。リーナはお姫様なんですわ。決めましたわ!明日のお茶会のドレスはこれにしますわね。」
と鏡越しでイリヤにそう申しますと、イリヤが慌てて止めようとしましたの。
「お嬢様、そのドレスは夜会の方が相応しかと存じ…「お黙りなさい!リーナがこれにすると言ったらするんですの!貴女はリーナの侍女なんだから、リーナの言うことに従えば良いのよ!」は、はい!!も、申し訳ございません。」
イリヤは頭を下げて謝りましたの。ですから直ぐに許してあげましたわ。
そういう心遣いも、主として、高貴な身分の令嬢として振る舞うべき事ですものね。
そうよ。私は公爵令嬢なんですの。
そんじょそこらの貴族令嬢なんかより格が断然上なんですもの、ドレスもより相応しいものを着るべきなのですわ。
イリヤは元は子爵令嬢だったらしいから、その辺はよく分かっておりませんのね。
良いですわ。リーナが直々に一から教育し直して差し上げますわね。
「さあ、ドレスは決まりましたから、次はお茶会の会場ですわね。お茶会といったらお庭で綺麗なお花を見ながらですわよね。さぁイリヤ、リーナについていらっしゃい。」
そう言って、イリヤを従えお母様自慢のお庭に意気揚々と向かいましたの。
でもそこでまさか、庭師からとんでもない事を言われるとは思いもしませんでしたわ。
*☼*―――――*☼*―――――*☼*
作者より補足
リーナカレンデュナが、ドレスが前より高い位置になっていると言っておりました件ですが、彼女の気の所為ではありません。
確かに、ドレスはアンジェーヌ(アンジェリータ)の部屋の壁の上の方にかかっていましたが、かけたのはアンジェーヌではありません。
掛け直したのは、マーサの後輩侍女であるメリッサという者です。
そもそもアンジェリータは、公爵家と離縁してから、一度も帰って来てないというのに、どうして意地悪が出来ると言うのでしょうね。
流石頭の中がお花畑令嬢ですね。
因みにですが、後にマーサとメリッサとの手紙のやり取りから、マーサの行方が公爵閣下にバレてしまいます。ですが、それはまた後ほどのお話で……。
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