妹よりブスな姉の幸せ

Saeko

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第五章 ウィンザード領での生活

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「極めつけは、弟の入学式だった。俺はあの会場にいて、君の妹君の隣の席である俺の弟の席に座られ、彼女を構っておられたハワード殿下を、君は弟の席から追い払ってくれただろ?俺はその経緯をずっと見ていたんだ。」
「え?そうでしたの?あの様なみっともない状況をザック様に見られていただなんて、恥ずかしいですわ。」
「いや、君は本当に素敵だったよ。"勇敢な女神”だと思った。たとえ王族相手だとしても、媚びを売ること無く、正論でその場を切り抜けていたあの凛としたその態度がね。」

凛とした態度…ねぇ……。
まぁあの頃はもう、殿下の事を見限ってたものね~。
だから正直、不敬だろうがなんだろうがどうでも良かったってところはあったのよね。
既にそんな感じだったのだもの。
たとえ殿下相手だろうが強気の態度でガンガン行っちゃうわよね~。

「それからというもの、弟が君との学園での出来事を逐一報告してくれるようになんったんだ。『君が作ったお弁当を食べた。とても美味しかった。』とか、他にも学園での君の様子等が、彼から毎日送られてくる手紙にそう書かれていたよ。」
「…………。」
「弟が羨ましかった。俺は在学中、君に話しかける事さえ出来なかったのに、弟は積極的に君と関わりを持ちにいった事が。」
「そ、そうでしたか…。」
「そしてとても心配になった…………。もし弟が、君に惹かれてしまったら…君の事を好きになってしまったらどうしようと思った。在学中、君と全く接点が無かった俺より、接点を持った弟の方が断然有利だと思ったからね。」
「確かにザック様とは全く接点がございませんでしたものね。」
「あぁ……。でも…そんな事は稀有けうに終わったよ。弟は手紙の中で、毎回こう書き記してくれたんだ。"早くアンジェーヌ様を【お義姉様】とお呼びしたい。だから兄上。頑張って下さい。”とね。」
「え?ジェフェリー=ウィンザード伯爵令息様がそんな事を?」
「あぁそうなんだ。彼はこの一年、ずっと俺のを応援してくれていたんだ。」
「恋……でございますか。そ、うでしたのね……。」

"恋”というワードがアイザック様の口から出てきて戸惑っている私に微笑まれ、ザック様は再び言葉を続けられたわ。
「そして先日。君が学園の卒業舞踏会の会場から文字通り飛び去った・・・・・と、弟から早馬で知らせが入った時は、嬉しさのあまり屋敷で小躍りしてしまったよ。」
「え?こ…小躍りでございますか?ザック様がですの?」
「そうだよ。これでようやく君の本拠地がウィンザード領こっちになる。だから今度こそ、積極的に君と接点を持とう!とね。」

まぁ確かにさっきはグイグイきたものね。
まぁ、弟君おとうとぎみがグイグイ来るキャラだったから、アイザックス様のグイグイにもあんまり驚きはしなかったけども……。

「わ…分かりましたわ、ザック様。では、本日は街への護衛をお願い致しますわ。」
と、私が折れるかたちでアイザックス様に同行をお願いする事にしたの。

そしたら……
あら?幻覚かな?
アイザックス様  ┄ あぁ、面倒だからもうザック様でいっか ┄ ザック様に耳と大きな尻尾が見える様な気が……
しかも尻尾はちぎれんばかりにブンブンと……。

そしてザック様は、今日一の笑顔で
「一緒に行って良いんだね?ジェーン!あぁ、やっぱり君は女神だよ。護衛は任せてくれ。では、今から伯爵家の馬車を…「ザック様。馬車は必要ございませんわ。」え?必要ないのか?」
「えぇ。そうですわ。庭にある幌馬車と、私の愛馬で参りましょ。」
「幌馬車?愛馬?……君は御者も出来るのかい?」
「えぇ、出来ますわよ。王都からここ迄、私が御者をやって参りましたんですもの。」

私がドヤ顔で胸を張ってザック様にそう言うと、
「アーッハッハッハ。流石ジェーンだね。益々好きになった。こうなったらジェーン。絶対堕としてやるから覚悟しておいて?」
と前半は大笑いされながら…後半は顔を少し背けながら小声で仰ったのです。

「え?最後の方は、なんと仰ったのですの?」
とお聞きしたのに、ザック様ってばすっとぼけられ、
「此方の話だよ、ジェーン。では参ろうか。俺もその御者席に乗らせて貰うからね。いいだろ?」
そう仰って、意気揚々と我が家を出ていかれたの。

ザック様との長かった攻防に「はぁ」と大きなため息を一つ。
それにしても、なかなかのゴリ押しだったわよね、ザック様ってば。
まぁ良いわ
なんとかなるでしょ

「では、マーサ。そういう事ですので、ザック様と一緒に行って参りますわね。」
「はい、お嬢様。承知致しました。お気をつけて行ってらっしゃいませ。」

こうして私は、マーサに見送られ、領主様のご子息のアイザックス様と、ウィンザード領の商店街迄ご一緒する事になったの。
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