妹よりブスな姉の幸せ

Saeko

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第四章 新天地

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「何からお話し致しましょう。先ずは、私がしている"仕事”について……お話致しますわね。私がこの家の購入を決めさせて頂いた際にお支払い致しましたお金は全て、私がとある仕事を致しました事で得たお金なんですの。けっして元実家の両親から頂いたお金ではありませんのよ。」
「仕事……でございますか?」
私の言葉に、マーサが反応したの。
「そうよ、マーサ。仕事・・をしたの。そしてその対価を頂き、それを貯め、この家を購入致しましたのよ。」
と言うと
「凄いわね。仕事が出来る貴族令嬢だったわけね。ユーリちゃんは。」
「はい…ですが、そう言って下さいます事は、私にとってとてもくすぐったいのですけれどもね。」

アニーさんが仰った『仕事が出来る』貴族令嬢という言葉は、前世、私がよく同僚や先輩達から言われた言葉だったわ。

はぁ……
全く…今世もやっぱり私は仕事に生きる女なわけね。我ながら笑っちゃうわ。
と内心、自分を嘲笑していたら、
「してお嬢様。お仕事とは何を?それは此方でも続けられるのでございましょうか?此方でも出来る事なのでございますか?」
とマーサが真剣な顔をしながら聞いてきたの。

「えぇ。勿論出来ますわよ。」
「では、私にもそのお仕事のお手伝いをさせて頂く事は……。」
「いいわよ。これからはマーサにもお願いするわね。ただ……。」
「ただ?」
「少し修行を受けて貰うことになると思うわ。ですがマーサ。その件に関しましては、また後ほどに致しましょう。私はまだ"ユーリ”と名乗った事への説明を終えていませんものね。」
とアニーさんの顔を見てそう言うと、
「そうね、ユーリちゃん。違う名前を名乗っていた理由を聞かせて貰えるかしら?」
とアニーさんが少しだけ首を横に傾け乍そう言ったの。

私は、私の仕事の手伝いが出来ると聞いて喜んでいるマーサを置いておいて、
「はい、アニーさん。承知致しましたわ。」
と返事をしたの。


ここで一旦言葉を切った私は、数秒間目を瞑り、ゆっくりと目を開けてから話を始めたわ。
目を瞑っていたその数秒で、どこまで打ち明けるかを思案してからね。

「アニーさんは、『ユーリブランド』という名前をご存知でいらっしゃいますの?」
と問うと、
「『ユーリブランド』?えぇ。勿論知ってるわ。とても精巧な刺繍とレースで有名なブランドよね?」
「はい。お褒め頂き、ありがとう存じますわ。」
「私も存じております!侍女仲間の中でも『ユーリブランド』は有名でしたから。」
と、先程迄一人で感動していたマーサが話に加わってきたの。
にしても意外ね
侍女仲間にも有名だっただなんて。

そういえば、いつだったかお仕着せ用のエプロンにとある貴族の家紋の刺繍をして欲しいと、大量受注を頂いた事があったわね。まぁマリヴェル公爵家では無かったけれども。

でもきっとその受注がきっかけで、侍女達にも『ユーリブランド』が広がったに違いないわね。

でもあれはキツかったわ
だってあの時受けた数って、本当半端なかったんだもの。
あまりに大量だったから、私一人じゃ無理!ってなって……人手が欲しくて悩んでたら、私の周りを飛び乍、
『アンジー?どうしたの?』
『凄い怖い顔だよ?』
と心配そうに言ってくる妖精彼等に急遽お手伝いを頼んだんだったわね。

それからというもの、妖精達には基本的に刺繍の方では無くレース編みの方を頼んでいるの。

その理由はね
彼等の身体の大きさからすると、人間用の刺繍針は大きすぎて、とても危ないのよ。
だって間違って身体や羽に針が当たって傷ついてしまうかもでしょ?
だから私は、比較的安全なレース編みの方のお手伝いをお願いしているのよ。

ただ…またあの時の様に大量受注が来たとしたら困っちゃうだろうから、対策は必要よね。
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