49 / 179
第四章 新天地
9
しおりを挟む
「何からお話し致しましょう。先ずは、私がしている"仕事”について……お話致しますわね。私がこの家の購入を決めさせて頂いた際にお支払い致しましたお金は全て、私がとある仕事を致しました事で得たお金なんですの。けっして元実家の両親から頂いたお金ではありませんのよ。」
「仕事……でございますか?」
私の言葉に、マーサが反応したの。
「そうよ、マーサ。仕事をしたの。そしてその対価を頂き、それを貯め、この家を購入致しましたのよ。」
と言うと
「凄いわね。仕事が出来る貴族令嬢だったわけね。ユーリちゃんは。」
「はい…ですが、そう言って下さいます事は、私にとってとてもくすぐったいのですけれどもね。」
アニーさんが仰った『仕事が出来る』貴族令嬢という言葉は、前世、私がよく同僚や先輩達から言われた言葉だったわ。
はぁ……
全く…今世もやっぱり私は仕事に生きる女なわけね。我ながら笑っちゃうわ。
と内心、自分を嘲笑していたら、
「してお嬢様。お仕事とは何を?それは此方でも続けられるのでございましょうか?此方でも出来る事なのでございますか?」
とマーサが真剣な顔をしながら聞いてきたの。
「えぇ。勿論出来ますわよ。」
「では、私にもそのお仕事のお手伝いをさせて頂く事は……。」
「いいわよ。これからはマーサにもお願いするわね。ただ……。」
「ただ?」
「少し修行を受けて貰うことになると思うわ。ですがマーサ。その件に関しましては、また後ほどに致しましょう。私はまだ"ユーリ”と名乗った事への説明を終えていませんものね。」
とアニーさんの顔を見てそう言うと、
「そうね、ユーリちゃん。違う名前を名乗っていた理由を聞かせて貰えるかしら?」
とアニーさんが少しだけ首を横に傾け乍そう言ったの。
私は、私の仕事の手伝いが出来ると聞いて喜んでいるマーサを置いておいて、
「はい、アニーさん。承知致しましたわ。」
と返事をしたの。
ここで一旦言葉を切った私は、数秒間目を瞑り、ゆっくりと目を開けてから話を始めたわ。
目を瞑っていたその数秒で、どこまで打ち明けるかを思案してからね。
「アニーさんは、『ユーリブランド』という名前をご存知でいらっしゃいますの?」
と問うと、
「『ユーリブランド』?えぇ。勿論知ってるわ。とても精巧な刺繍とレースで有名なブランドよね?」
「はい。お褒め頂き、ありがとう存じますわ。」
「私も存じております!侍女仲間の中でも『ユーリブランド』は有名でしたから。」
と、先程迄一人で感動していたマーサが話に加わってきたの。
にしても意外ね
侍女仲間にも有名だっただなんて。
そういえば、いつだったかお仕着せ用のエプロンにとある貴族の家紋の刺繍をして欲しいと、大量受注を頂いた事があったわね。まぁマリヴェル公爵家では無かったけれども。
でもきっとその受注がきっかけで、侍女達にも『ユーリブランド』が広がったに違いないわね。
でもあれはキツかったわ
だってあの時受けた数って、本当半端なかったんだもの。
あまりに大量だったから、私一人じゃ無理!ってなって……人手が欲しくて悩んでたら、私の周りを飛び乍、
『アンジー?どうしたの?』
『凄い怖い顔だよ?』
と心配そうに言ってくる妖精に急遽お手伝いを頼んだんだったわね。
それからというもの、妖精達には基本的に刺繍の方では無くレース編みの方を頼んでいるの。
その理由はね
彼等の身体の大きさからすると、人間用の刺繍針は大きすぎて、とても危ないのよ。
だって間違って身体や羽に針が当たって傷ついてしまうかもでしょ?
だから私は、比較的安全なレース編みの方のお手伝いをお願いしているのよ。
ただ…またあの時の様に大量受注が来たとしたら困っちゃうだろうから、対策は必要よね。
「仕事……でございますか?」
私の言葉に、マーサが反応したの。
「そうよ、マーサ。仕事をしたの。そしてその対価を頂き、それを貯め、この家を購入致しましたのよ。」
と言うと
「凄いわね。仕事が出来る貴族令嬢だったわけね。ユーリちゃんは。」
「はい…ですが、そう言って下さいます事は、私にとってとてもくすぐったいのですけれどもね。」
アニーさんが仰った『仕事が出来る』貴族令嬢という言葉は、前世、私がよく同僚や先輩達から言われた言葉だったわ。
はぁ……
全く…今世もやっぱり私は仕事に生きる女なわけね。我ながら笑っちゃうわ。
と内心、自分を嘲笑していたら、
「してお嬢様。お仕事とは何を?それは此方でも続けられるのでございましょうか?此方でも出来る事なのでございますか?」
とマーサが真剣な顔をしながら聞いてきたの。
「えぇ。勿論出来ますわよ。」
「では、私にもそのお仕事のお手伝いをさせて頂く事は……。」
「いいわよ。これからはマーサにもお願いするわね。ただ……。」
「ただ?」
「少し修行を受けて貰うことになると思うわ。ですがマーサ。その件に関しましては、また後ほどに致しましょう。私はまだ"ユーリ”と名乗った事への説明を終えていませんものね。」
とアニーさんの顔を見てそう言うと、
「そうね、ユーリちゃん。違う名前を名乗っていた理由を聞かせて貰えるかしら?」
とアニーさんが少しだけ首を横に傾け乍そう言ったの。
私は、私の仕事の手伝いが出来ると聞いて喜んでいるマーサを置いておいて、
「はい、アニーさん。承知致しましたわ。」
と返事をしたの。
ここで一旦言葉を切った私は、数秒間目を瞑り、ゆっくりと目を開けてから話を始めたわ。
目を瞑っていたその数秒で、どこまで打ち明けるかを思案してからね。
「アニーさんは、『ユーリブランド』という名前をご存知でいらっしゃいますの?」
と問うと、
「『ユーリブランド』?えぇ。勿論知ってるわ。とても精巧な刺繍とレースで有名なブランドよね?」
「はい。お褒め頂き、ありがとう存じますわ。」
「私も存じております!侍女仲間の中でも『ユーリブランド』は有名でしたから。」
と、先程迄一人で感動していたマーサが話に加わってきたの。
にしても意外ね
侍女仲間にも有名だっただなんて。
そういえば、いつだったかお仕着せ用のエプロンにとある貴族の家紋の刺繍をして欲しいと、大量受注を頂いた事があったわね。まぁマリヴェル公爵家では無かったけれども。
でもきっとその受注がきっかけで、侍女達にも『ユーリブランド』が広がったに違いないわね。
でもあれはキツかったわ
だってあの時受けた数って、本当半端なかったんだもの。
あまりに大量だったから、私一人じゃ無理!ってなって……人手が欲しくて悩んでたら、私の周りを飛び乍、
『アンジー?どうしたの?』
『凄い怖い顔だよ?』
と心配そうに言ってくる妖精に急遽お手伝いを頼んだんだったわね。
それからというもの、妖精達には基本的に刺繍の方では無くレース編みの方を頼んでいるの。
その理由はね
彼等の身体の大きさからすると、人間用の刺繍針は大きすぎて、とても危ないのよ。
だって間違って身体や羽に針が当たって傷ついてしまうかもでしょ?
だから私は、比較的安全なレース編みの方のお手伝いをお願いしているのよ。
ただ…またあの時の様に大量受注が来たとしたら困っちゃうだろうから、対策は必要よね。
35
お気に入りに追加
3,413
あなたにおすすめの小説

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?
つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです!
文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか!
結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。
目を覚ましたら幼い自分の姿が……。
何故か十二歳に巻き戻っていたのです。
最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。
そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか?
他サイトにも公開中。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる