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第三章 旅立ち
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「良いですか?マーサ。よくお聞きなさい。この屋敷を出るという事は、貴族では無くなるという事なのです。貴女は男爵家の「者ですがそれが何か?」え?」
「実家の男爵家を出て、行儀見習いとして此方で13の頃から働かせていただいてから早10年。お嬢様の専属侍女として、お嬢様の幸せだけを祈り勤めて参りました。そんなお嬢様が、自ら貴族をお捨てになり厳しい生活になる事を選ばれましたのに、このマーサがお嬢様のお傍を離れる事など到底出来かねます。私はとうにお嬢様に一生仕えると決めているのです。どうぞ、どうぞこのマーサをお連れ下さいませ。必ずお役に立つとお約束致します!アンジェーヌお嬢様。」
マーサの熱い訴えにとうとう根負け致しました私は、
「マーサ……。そうですか。そこまで言うのなら致し方ありませんわね。一緒に連れて参る事に致しますわ。でも後悔してもあとの祭りですわよ。それでも宜しいの?」
と、折れる事に致しましたの。
そんな私の言葉にマーサは飛び上がって喜びましたわ。
「お嬢様!あぁなんて嬉しい事でございましょう。」
はしゃぐマーサを落ち着かせる様に、
「喜ぶのはまだ早くてよ?マーサ。いい事?これから話す事をしっかり聞いて頂戴。」
「はい、お嬢様。」
私の言葉ですぐはしゃぐのを止めたマーサに、今後の段取りを伝えますと、
「畏まりましたわお嬢様。これからお暇請いの手紙を執事長にお渡し致しましたら、直ぐ荷物を纏め市井におありだというアパルトマンにてお待ちしております。」
と預けた鍵を握り締め、マーサが嬉しそうに微笑みましたの。
「ふふっ。マーサったら。これからどんな生活が待っているのか分からないのに、そんなに嬉しいの?」
「勿論でございます。マーサは、お嬢様のお傍にいられる事こそが幸せなのですから。」
「そう……。ありがとう、マーサ。じゃ、これがアパルトマンの住所と地図よ?どう?行けそうかしら?」
「…………はい、この付近でしたら侍女仲間行きつけの店がございます。私もよく利用しておりますので、行けると思いますわ。」
「そう。じゃ安心ね。では、私は舞踏会へ行って参りますわ。」
「はい。行ってらっしゃいませ、お嬢様。私はアパルトマンにてお待ちしております。」
そう言ってマーサは私を送り出すと、私の部屋の前で深々と礼を致しましたわ。
「ありがと、マーサ。ウィンザード領へ着いたら、私の秘密を教えますわ。それから、マーサに苦労は絶対にさせないから安心してね。」
私はマーサをぎゅっと抱きしめると、耳元でそう話し、屋敷の出入口で待つ両親の元へと向かいましたの。
屋敷の扉の前で待っていらした両親は、そこにおりますリーナに対し
「何故お前が行くのか?」
と尋ねておられましたが、リーナは
「ハワード様に来るように言われました。」
と言うと梃子でも動かなかったので連れて行く事になったと仰いましたの。
まぁ私は殿下が今宵の舞踏会で、私と婚約破棄をし、リーナと婚約をしたいと陛下に訴える事を知っておりましたので、
「宜しいんじゃないでしょうか?殿下がそう仰ったのでしたら、逆らえませんでしょう?」
とお父様に申しましたの。
「アンジェーヌが良いのなら…。」
お父様はそう仰ると執事長に留守を頼み、私達四人で舞踏会場へと向かいましたわ。
馬車の中でリーナは、始終はしゃいでおりましたわね。
逆に私はじっと外を見つめながら、
さぁ!いよいよ決戦ですわね!
綺麗に潔く断罪されて、華麗に消えてみせますわよ!
と意気込んでおりましたの。
まさか殿下があんな阿呆な事を仰るとは思いもしないで……。
「実家の男爵家を出て、行儀見習いとして此方で13の頃から働かせていただいてから早10年。お嬢様の専属侍女として、お嬢様の幸せだけを祈り勤めて参りました。そんなお嬢様が、自ら貴族をお捨てになり厳しい生活になる事を選ばれましたのに、このマーサがお嬢様のお傍を離れる事など到底出来かねます。私はとうにお嬢様に一生仕えると決めているのです。どうぞ、どうぞこのマーサをお連れ下さいませ。必ずお役に立つとお約束致します!アンジェーヌお嬢様。」
マーサの熱い訴えにとうとう根負け致しました私は、
「マーサ……。そうですか。そこまで言うのなら致し方ありませんわね。一緒に連れて参る事に致しますわ。でも後悔してもあとの祭りですわよ。それでも宜しいの?」
と、折れる事に致しましたの。
そんな私の言葉にマーサは飛び上がって喜びましたわ。
「お嬢様!あぁなんて嬉しい事でございましょう。」
はしゃぐマーサを落ち着かせる様に、
「喜ぶのはまだ早くてよ?マーサ。いい事?これから話す事をしっかり聞いて頂戴。」
「はい、お嬢様。」
私の言葉ですぐはしゃぐのを止めたマーサに、今後の段取りを伝えますと、
「畏まりましたわお嬢様。これからお暇請いの手紙を執事長にお渡し致しましたら、直ぐ荷物を纏め市井におありだというアパルトマンにてお待ちしております。」
と預けた鍵を握り締め、マーサが嬉しそうに微笑みましたの。
「ふふっ。マーサったら。これからどんな生活が待っているのか分からないのに、そんなに嬉しいの?」
「勿論でございます。マーサは、お嬢様のお傍にいられる事こそが幸せなのですから。」
「そう……。ありがとう、マーサ。じゃ、これがアパルトマンの住所と地図よ?どう?行けそうかしら?」
「…………はい、この付近でしたら侍女仲間行きつけの店がございます。私もよく利用しておりますので、行けると思いますわ。」
「そう。じゃ安心ね。では、私は舞踏会へ行って参りますわ。」
「はい。行ってらっしゃいませ、お嬢様。私はアパルトマンにてお待ちしております。」
そう言ってマーサは私を送り出すと、私の部屋の前で深々と礼を致しましたわ。
「ありがと、マーサ。ウィンザード領へ着いたら、私の秘密を教えますわ。それから、マーサに苦労は絶対にさせないから安心してね。」
私はマーサをぎゅっと抱きしめると、耳元でそう話し、屋敷の出入口で待つ両親の元へと向かいましたの。
屋敷の扉の前で待っていらした両親は、そこにおりますリーナに対し
「何故お前が行くのか?」
と尋ねておられましたが、リーナは
「ハワード様に来るように言われました。」
と言うと梃子でも動かなかったので連れて行く事になったと仰いましたの。
まぁ私は殿下が今宵の舞踏会で、私と婚約破棄をし、リーナと婚約をしたいと陛下に訴える事を知っておりましたので、
「宜しいんじゃないでしょうか?殿下がそう仰ったのでしたら、逆らえませんでしょう?」
とお父様に申しましたの。
「アンジェーヌが良いのなら…。」
お父様はそう仰ると執事長に留守を頼み、私達四人で舞踏会場へと向かいましたわ。
馬車の中でリーナは、始終はしゃいでおりましたわね。
逆に私はじっと外を見つめながら、
さぁ!いよいよ決戦ですわね!
綺麗に潔く断罪されて、華麗に消えてみせますわよ!
と意気込んでおりましたの。
まさか殿下があんな阿呆な事を仰るとは思いもしないで……。
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