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第三章 旅立ち
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ジェフェリー様にカーテシーを致しました後、顔を上げつつ未来の住処にする予定でもある領地の領主様のご親族のお顔をちらりと拝見致しましたの。
だって当然でございましょう?淑女たるもの、人様をジロジロと不躾に見るわけにも参りませんものね。
ですが、公爵家にございます貴族名鑑に掲載されておりますウィンザード伯爵家の皆様の絵姿は数年前のものでしたので、現在のジェフェリー様がどのようなルックスをされてるのか存じませんでしたの。
そんな私の様子に気づく事なく、ジェフェリー様は何故か興奮したご様子で
「そうですか、貴女があの、マリヴェル公……「あ!あの!私は、アンジェーヌお姉様の妹で、リーナカレンデュラと申します。リーナって呼んで下さいね、ジェフェリー様。」…はぁ……此方こそ。」
あらあら。人様がお話なさろうとされていらっしゃる時に話し始めたばかりでなく、初対面の伯爵令息をファーストネームでお呼びするだなんて、マナーが全くなっておりませんわね、リーナ。
ほらご覧なさい
ジェフェリー様が呆れておいでですわよ。
確かにジェフェリー様は辺境伯のご子息でいらっしゃる為、すらっとした背丈ではございますが、制服を着ておられても分かる程、がっしりとした躯体をなさっておられますし、またお顔立ちも前世で言う所の超絶イケメンなんですの。
ですので、リーナがジェフェリー様の言葉に自己紹介を被せたくなる気持ちは分からないでもないですが、失礼にあたりますもの。
後から注意しておかなくてはなりませんわね。
「さぁ!そろそろ式典が始まりますわ、ジェフェリー様。どうか有意義な学園生活となりますよう。では、私は失礼致しますわね。」
私はそう申し上げ、その場から離れましたの。
まさかそのやり取りを、ご覧になっていらした方がいらっしゃった事に、その時は全く気付きも致しませんでしたのよ。
入学式が始まってしまえば、在校生の私達は無用な存在になってしまいますの。
ですので私。他の在校生の方々に失礼をして、市井へと足を伸ばす事に致しましたわ。
市井では、昼食時の喧騒も収まっている時間帯でもございましたので、あちらこちらでのんびりとお茶の時間を楽しんでいる人々の様子が見受けられましたの。
私は、馭者に幾らばかりかの金銭をにぎらせ、彼に休み時間を取らせる事に致しましたわ。
その間に、倉庫代わりに借りているアパルトマンに寄り、注文を受けておりましたレース小物やリボン、それから結婚式に使われる総レースのヴェーや、ドレスのスカート部分に使われる刺繍入りのオーガンジー等を納品する事に致しましたの。
そうそう
私、レース編みだけでなく、刺繍も始めたんですの。
刺繍も貴族令嬢の嗜みの一環ではございましたので、刺すのは簡単でしたが、まさか刺繍も売れるとは思っておりませんでしたわね。
あら、話が逸れてしまいましたわ。
元に戻しますわね
いつもは出来るだけ簡素なワンピースで市井へ訪れる私なのですが、どうしても生地の良さ等で、身バレしそうになってしまうんですの。ですが、本日の服装は学園の制服。
学園は、貴族でも平民でも通うことができますので、私の身分がバレる心配がないので安心して歩けますの。
アパルトマンで平民服に着替えを済ませますと、私は商品を納入する為、納品先のオートクチュールの店と雑貨店に寄りましたわ。
それぞれの店主からは、「待ってました!」とばかり、お見せした品物に飛びつかれ、直ぐに検品を始められましたの。
いつもそうではございますが、この時間が一番緊張致しますわね。
だって、商売人の目利きは侮れないと申しますもの。
「ユーリちゃん。今回のもとても素晴らしい出来でしたよ。きっと先方の貴族様もお喜びになられると思うわ。」
と、オートクチュールの店の女店主である、マダムがとても喜んで下さいましたわ。
また、雑貨店の店主からも、商品の出来の良さを褒められ、とても嬉しかったですわ。
そして両店舗共、前回納品分の売り上げ金の中から、私の取り分をお支払い下さいましたの。
私はそれに対して、しっかりと帳簿に記入し、領収書を発行致しますのよ。
金銭授受は証拠が大事でございましょ?
最も、領収書なんて物を見た事が無い今世の方々でしたので、初めはなかなか納得して下さらなくて大変でしたわね。
それでもなんとか浸透して参りましたので、とても良かったと思っておりますの。
店舗内の在庫の確認と、次に納品する商品の注文を受けました私は、
「じゃ、また来るわね~。」
「あぁ。次のも頼んだよ、ユーリちゃん。」
と手を振って挨拶をし、お店を出ましたの。
あ!因みにでございますが、"ユーリ”とは、私の前世での名前、"悠香里”からもじりましたの。
公爵家を出ました後は、ユーリとして生きていく予定なんですのよ。
お店を出ました私は、すぐにアパルトマンに戻り、再び制服に着替えまして、御者が待つ公爵家の馬車に戻ったんですの。
公爵家へと戻りましたら、明日から本格的始まります学園生活の準備やら、納品致します商品の製作やらで、今夜も忙しいですわよね。
私の長い一日は、まだまだ終わりそうにもありませんわ。
だって当然でございましょう?淑女たるもの、人様をジロジロと不躾に見るわけにも参りませんものね。
ですが、公爵家にございます貴族名鑑に掲載されておりますウィンザード伯爵家の皆様の絵姿は数年前のものでしたので、現在のジェフェリー様がどのようなルックスをされてるのか存じませんでしたの。
そんな私の様子に気づく事なく、ジェフェリー様は何故か興奮したご様子で
「そうですか、貴女があの、マリヴェル公……「あ!あの!私は、アンジェーヌお姉様の妹で、リーナカレンデュラと申します。リーナって呼んで下さいね、ジェフェリー様。」…はぁ……此方こそ。」
あらあら。人様がお話なさろうとされていらっしゃる時に話し始めたばかりでなく、初対面の伯爵令息をファーストネームでお呼びするだなんて、マナーが全くなっておりませんわね、リーナ。
ほらご覧なさい
ジェフェリー様が呆れておいでですわよ。
確かにジェフェリー様は辺境伯のご子息でいらっしゃる為、すらっとした背丈ではございますが、制服を着ておられても分かる程、がっしりとした躯体をなさっておられますし、またお顔立ちも前世で言う所の超絶イケメンなんですの。
ですので、リーナがジェフェリー様の言葉に自己紹介を被せたくなる気持ちは分からないでもないですが、失礼にあたりますもの。
後から注意しておかなくてはなりませんわね。
「さぁ!そろそろ式典が始まりますわ、ジェフェリー様。どうか有意義な学園生活となりますよう。では、私は失礼致しますわね。」
私はそう申し上げ、その場から離れましたの。
まさかそのやり取りを、ご覧になっていらした方がいらっしゃった事に、その時は全く気付きも致しませんでしたのよ。
入学式が始まってしまえば、在校生の私達は無用な存在になってしまいますの。
ですので私。他の在校生の方々に失礼をして、市井へと足を伸ばす事に致しましたわ。
市井では、昼食時の喧騒も収まっている時間帯でもございましたので、あちらこちらでのんびりとお茶の時間を楽しんでいる人々の様子が見受けられましたの。
私は、馭者に幾らばかりかの金銭をにぎらせ、彼に休み時間を取らせる事に致しましたわ。
その間に、倉庫代わりに借りているアパルトマンに寄り、注文を受けておりましたレース小物やリボン、それから結婚式に使われる総レースのヴェーや、ドレスのスカート部分に使われる刺繍入りのオーガンジー等を納品する事に致しましたの。
そうそう
私、レース編みだけでなく、刺繍も始めたんですの。
刺繍も貴族令嬢の嗜みの一環ではございましたので、刺すのは簡単でしたが、まさか刺繍も売れるとは思っておりませんでしたわね。
あら、話が逸れてしまいましたわ。
元に戻しますわね
いつもは出来るだけ簡素なワンピースで市井へ訪れる私なのですが、どうしても生地の良さ等で、身バレしそうになってしまうんですの。ですが、本日の服装は学園の制服。
学園は、貴族でも平民でも通うことができますので、私の身分がバレる心配がないので安心して歩けますの。
アパルトマンで平民服に着替えを済ませますと、私は商品を納入する為、納品先のオートクチュールの店と雑貨店に寄りましたわ。
それぞれの店主からは、「待ってました!」とばかり、お見せした品物に飛びつかれ、直ぐに検品を始められましたの。
いつもそうではございますが、この時間が一番緊張致しますわね。
だって、商売人の目利きは侮れないと申しますもの。
「ユーリちゃん。今回のもとても素晴らしい出来でしたよ。きっと先方の貴族様もお喜びになられると思うわ。」
と、オートクチュールの店の女店主である、マダムがとても喜んで下さいましたわ。
また、雑貨店の店主からも、商品の出来の良さを褒められ、とても嬉しかったですわ。
そして両店舗共、前回納品分の売り上げ金の中から、私の取り分をお支払い下さいましたの。
私はそれに対して、しっかりと帳簿に記入し、領収書を発行致しますのよ。
金銭授受は証拠が大事でございましょ?
最も、領収書なんて物を見た事が無い今世の方々でしたので、初めはなかなか納得して下さらなくて大変でしたわね。
それでもなんとか浸透して参りましたので、とても良かったと思っておりますの。
店舗内の在庫の確認と、次に納品する商品の注文を受けました私は、
「じゃ、また来るわね~。」
「あぁ。次のも頼んだよ、ユーリちゃん。」
と手を振って挨拶をし、お店を出ましたの。
あ!因みにでございますが、"ユーリ”とは、私の前世での名前、"悠香里”からもじりましたの。
公爵家を出ました後は、ユーリとして生きていく予定なんですのよ。
お店を出ました私は、すぐにアパルトマンに戻り、再び制服に着替えまして、御者が待つ公爵家の馬車に戻ったんですの。
公爵家へと戻りましたら、明日から本格的始まります学園生活の準備やら、納品致します商品の製作やらで、今夜も忙しいですわよね。
私の長い一日は、まだまだ終わりそうにもありませんわ。
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