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第一章 苦しい思い出
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子供の頃、地元の祭典時。
近所のおじさんが酔っ払いながら、私の所へやって来て不躾に言った。
「お前のところは、お前より妹の方が可愛くなるな。」
酔っているとはいえ、いきなりの暴言とも取れる言葉に返す言葉を失うも、なんとか悔し涙を堪え
「エヘヘ。そうなんですよ~。本当に可愛い妹なんです。」
と答えた。
それからというもの、祭典で会っても日常で会ったとしても、私はそのおじさんから距離を置いた。
妹は確かに男ウケする顔なのかもしれないが、私にはよく分からなかった。
ただ……私は不細工なのだとレッテルを貼られた事だけは分かった。
私 小学校6年生
妹 小学校4年生の秋だった。
✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚
「ごめんな?悠香里。俺、茉莉奈の事が好きになったんだ。悪いけど、別れよう。」
「え?凌平?どういう事?私より、妹の茉莉奈を選んだの?」
「ごめんね、お姉ちゃん。凌ちゃんてば茉莉奈と結婚したいんだって。茉莉奈も凌ちゃんの事大好きだから。だから分かって?ね?」
26歳の冬。しかも二人にとって初めてのクリスマスイブ。
私は凌平から別れを告げられた。
子供の頃、おじさんに不細工レッテルをはられた事で、せめて勉強を頑張ろうと思い、必死で勉強した学生時代。
そして、父の背中を見て育った私は、子供の頃から憧れていた、念願である教師になった。
初めての授業
初めてのクラス運営
保護者対応
初任者研修 等など
慣れないことの連続で心が疲弊する中、唯一の楽しみは乙女ゲームだった。
非現実的な世界の中に入るのは癒しになっていた。
それでも大好きな子供達の笑顔に支えられ、先輩先生や同期の先生達と頑張って乗り切ることが出来たのだ。
そして、26歳の春。
そんな私にも彼氏が出来た。
名前は、服部凌平27歳。
彼とは2校目の赴任先の学校で知り合った。
イケメンで背が高い凌平は、児童からも独身の女性教師達からも人気があった。
そんな凌平から
「付き合って欲しい。」
と言われた時、
「こんな不細工な私より、もっと可愛い子 綺麗な人がいっぱいいますよ。」
と相手にしなかった。が、凌平は
「悠香里先生は不細工なんかじゃないよ。肌も綺麗だし、声も綺麗だ。ピアノも上手いし、字も上手い。いつも子供達と笑顔で接していて、懐かれてる。そんな悠香里先生が好きなんだ。」
と。
言われ慣れてない美辞麗句(当時の私にとっては)に、私が折れ凌平と付き合う事になった。
そんなある日の夏。
2人で合わせて取った夏休み。
プールへ行こうと、凌平が車で迎えに来た。
玄関のチャイムが鳴り、応対のために出て行く私の後を、何故か妹の茉莉奈が着いてきた。
「いらっしゃい。お迎えありがとう、凌平。」
そう言って私は凌平に笑顔を向けるが、凌平の顔は固まったまま動かない。
「凌平?」
と首を傾げながら、視線が合わない凌平の目線を辿ると、私の隣りに立つ茉莉奈を見つめている事が分かった。
「あぁ…紹介するわね。妹の茉莉奈よ。」
「はじめまして~。いつもお姉ちゃんがお世話になってま~す。私、妹の茉莉奈です。宜しくお願いしま~す。」
24歳の女性とは思えない(幼い子供の様な)可愛らしい挨拶をした茉莉奈。
茉莉奈は子供の頃からモテていて、恋人が切れる時が無かった。
本当に男ウケが良かったのだ。
茉莉奈の挨拶に、
「宜しく。」
と短く返事をした凌平は、
「い、行こうか。悠香里。」
と言って肩を抱いてくれた。
その後プールデートは楽しかった。
凌平は何事もなかったかのように私に接してくれたから。
それからも私達は順調に交際を続けていった。はずだった……。
まさか、私が知らない間に、凌平と茉莉奈が付き合っていただなんて……。
しかも結婚まで……。
凌平から別れを告げられた夜。
私は部屋のベッドで、布団を被り、枕に顔を押し付けて泣いた。
やっぱり私は不細工なんだ。
不細工だから選ばれなかった。
不細工だから捨てられたんだ。
近所のおじさんが酔っ払いながら、私の所へやって来て不躾に言った。
「お前のところは、お前より妹の方が可愛くなるな。」
酔っているとはいえ、いきなりの暴言とも取れる言葉に返す言葉を失うも、なんとか悔し涙を堪え
「エヘヘ。そうなんですよ~。本当に可愛い妹なんです。」
と答えた。
それからというもの、祭典で会っても日常で会ったとしても、私はそのおじさんから距離を置いた。
妹は確かに男ウケする顔なのかもしれないが、私にはよく分からなかった。
ただ……私は不細工なのだとレッテルを貼られた事だけは分かった。
私 小学校6年生
妹 小学校4年生の秋だった。
✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚
「ごめんな?悠香里。俺、茉莉奈の事が好きになったんだ。悪いけど、別れよう。」
「え?凌平?どういう事?私より、妹の茉莉奈を選んだの?」
「ごめんね、お姉ちゃん。凌ちゃんてば茉莉奈と結婚したいんだって。茉莉奈も凌ちゃんの事大好きだから。だから分かって?ね?」
26歳の冬。しかも二人にとって初めてのクリスマスイブ。
私は凌平から別れを告げられた。
子供の頃、おじさんに不細工レッテルをはられた事で、せめて勉強を頑張ろうと思い、必死で勉強した学生時代。
そして、父の背中を見て育った私は、子供の頃から憧れていた、念願である教師になった。
初めての授業
初めてのクラス運営
保護者対応
初任者研修 等など
慣れないことの連続で心が疲弊する中、唯一の楽しみは乙女ゲームだった。
非現実的な世界の中に入るのは癒しになっていた。
それでも大好きな子供達の笑顔に支えられ、先輩先生や同期の先生達と頑張って乗り切ることが出来たのだ。
そして、26歳の春。
そんな私にも彼氏が出来た。
名前は、服部凌平27歳。
彼とは2校目の赴任先の学校で知り合った。
イケメンで背が高い凌平は、児童からも独身の女性教師達からも人気があった。
そんな凌平から
「付き合って欲しい。」
と言われた時、
「こんな不細工な私より、もっと可愛い子 綺麗な人がいっぱいいますよ。」
と相手にしなかった。が、凌平は
「悠香里先生は不細工なんかじゃないよ。肌も綺麗だし、声も綺麗だ。ピアノも上手いし、字も上手い。いつも子供達と笑顔で接していて、懐かれてる。そんな悠香里先生が好きなんだ。」
と。
言われ慣れてない美辞麗句(当時の私にとっては)に、私が折れ凌平と付き合う事になった。
そんなある日の夏。
2人で合わせて取った夏休み。
プールへ行こうと、凌平が車で迎えに来た。
玄関のチャイムが鳴り、応対のために出て行く私の後を、何故か妹の茉莉奈が着いてきた。
「いらっしゃい。お迎えありがとう、凌平。」
そう言って私は凌平に笑顔を向けるが、凌平の顔は固まったまま動かない。
「凌平?」
と首を傾げながら、視線が合わない凌平の目線を辿ると、私の隣りに立つ茉莉奈を見つめている事が分かった。
「あぁ…紹介するわね。妹の茉莉奈よ。」
「はじめまして~。いつもお姉ちゃんがお世話になってま~す。私、妹の茉莉奈です。宜しくお願いしま~す。」
24歳の女性とは思えない(幼い子供の様な)可愛らしい挨拶をした茉莉奈。
茉莉奈は子供の頃からモテていて、恋人が切れる時が無かった。
本当に男ウケが良かったのだ。
茉莉奈の挨拶に、
「宜しく。」
と短く返事をした凌平は、
「い、行こうか。悠香里。」
と言って肩を抱いてくれた。
その後プールデートは楽しかった。
凌平は何事もなかったかのように私に接してくれたから。
それからも私達は順調に交際を続けていった。はずだった……。
まさか、私が知らない間に、凌平と茉莉奈が付き合っていただなんて……。
しかも結婚まで……。
凌平から別れを告げられた夜。
私は部屋のベッドで、布団を被り、枕に顔を押し付けて泣いた。
やっぱり私は不細工なんだ。
不細工だから選ばれなかった。
不細工だから捨てられたんだ。
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