オモチャ。

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短編

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はじめは、生身の人間って感じがしなくて、精霊とか妖精とか、そんなんだと思った。

ガラにもなく。


真っ直ぐ俺を見るキレイな瞳が、大きめの白シャツからでも分かる華奢な体が。


周りの緑に映えていて、現実味がないくらいキレイで。


ドーベルマンが吠え立ててるはずなのに、俺の耳はその音も拾わず、まるで映画のワンシーンのように、その人から目が離せなかった。
吠え立てるドーベルマンに、泣きそうな顔をするその人を見て、一気に現実に引き戻されて、耳も思考もクリアになってくる。

「わっ....ちょっと、そんなに吠えないで....」
「待てっ!」

俺の一言で、ドーベルマンは静かに伏せをした。
その人の瞳は、涙で潤んでいる。


そんな瞳で、俺を見るなよ....頭がクラクラしてしまう....。


「ここ、俺ん家なんだけど。なんで勝手に入ったの?」
「えっ?!そうなの!?....散歩してたら迷っちゃって....勝手に入ってごめんなさい」

そう言うと、その人は茂みの中に入ろうとする。

「そっち、行かない方がいいと思うよ」
「えっ?」
「....ヘビとか、たくさんいるし」

びっくりした顔をして、後ずさったその人の手を取って、俺は言った。

「ちゃんとした出口まで案内するから、こっちおいで」



....少し冷たい、細い手。



新しいオモチャを手にした時みたいに、俺の心の中に独占欲が広がる。


〝この手を離したくない。この人をもっと知りたい〟


俺は今まで、手にできないものなんて何もなくって、何でも手に入れることができた。

だからきっと。

俺は、この人も手に入れる。







俺の目の前にいる人は、朱里と言った。

就学のために引っ越してきたばっかりで、この辺に全く土地勘がないらしい。
自宅周辺を散策してたら、道に迷ってしまって....。

そして、俺ん家の敷地に迷い込んだ。

「君ん家、すごい家だね....」

家の中に通された朱里は、目を見開いて家中を見渡す。
朱里が驚くのも無理はない。
俺の家は、この辺で代々続く〝名家〟だから。
俺はこの家の一人息子で、何不自由なく暮らしている。

だから、小さい頃から手に入らないものはなかった。

朱里は落ち着かない様子で、ソファに腰掛ける。
その黒い瞳は、まばたきが多くなってて。
その朱里の様子に俺はさらにドキドキしてしまった。


....なんか、イジワルしたくなる。

困った顔が見てみたいし。


何より、さっきの....。


さっきの、泣きそうな顔がもう一度見たい。


そして、その顔で、その声で、名前を呼んで欲しい。


だから、俺はウソをついた。


「父親に勝手に敷地に入ったことが知れたら、すごい剣幕で怒り出すんだよね」
「....え....?」
「前にも何人かいて、無事にここから出た人なんていないんだよ」

朱里の顔が、だんだん青ざめていく。

膝の上に置いてある細い指が、ぎゅっとなっていて、緊張しているのが手に取るようにわかった。

「....一つだけ、父親に知られない方法がある」

朱里が目を見開いて、俺を見る。

まってたよ、その反応。

「....僕は、どうすればいい?」
「俺が、黙っとけばいい」
「....本当に?」

朱里は、安心したように表情をゆるめた。

「でも、条件がある」
「なに?」
「俺の言うこと、なんでも聞いてくれる?」
「....それで、いいの?」
「あぁ」
「....わかったよ。君の言うこと、なんでも聞くよ」

視線を落として、朱里は言った。

じゃあ、好きにさせてもらうよ。

「....朱里、服、脱いで」
「えっ!?」
「なんでも言うこと聞くって、言ったじゃん」
「............」

朱里は困った顔をして、そして、震える細い指で、シャツのボタンを一つ一つはずしていく。

露わになった細い腕、華奢でキレイな肌をした体.....。

恥ずかしそうに俯く顔も、たまんない....。

「下もだよ」

泣きそうな顔をした朱里が、涙をためた瞳で俺を見る。

下唇をギュッと噛んで、朱里はベルトにゆっくり手をかけた。




俺は、朱里の細い体に覆いかぶさって、キツく抱きしめる。
その体温が気持ちよくて。
俺より一回り小さなその身体は、小さく震えていて。

欲望が抑えられなくなる....。

今にも泣きそうな顔を背ける朱里に、無理矢理、唇を重ねた。

「....ん、や!......」

必死に抵抗してるけど、力で俺に敵うはずもないから。
アッと言う間に、互いの舌が朱里の口の中で絡み合う。
深くて濃いキスをして、一旦唇を離すと、朱里の瞳から涙がこぼれ落ちていた。


荒い呼吸と、涙をためた悲しそうな顔。


赤らんだ頰に、小刻みに震える身体。


俺の〝新しいオモチャ〟は、この上なく、俺を興奮させる。


色々、遊びたくなるよ....。


「朱里、立って」

細い腕を掴んで、俺は朱里を強引に立たせた。
そして、その両手を壁につかせて、後ろ向きにさせる。
震える華奢な背中....指でなぞると、身体をしならせて「....あ」って、さらに興奮させるような朱里の声が、俺の耳をくすぐった。


....この人を壊したくなる。


俺は、朱里の首筋や耳たぶを舌で攻めながら、朱里の身体中を手で愛撫する。
そのたびに、吐息のような、感じてるような、やらしい朱里の声がかすかに響く。


我慢できなくなるよ....。


「ん!......あっ、あ.....ん、やぁ......」


俺の動きに合わせて、壁にしがみつく朱里が、乱れた声を上げる。

「なに?....気持ちいい?....もっと欲しがってよ....ほら、声にだして。俺の名前を呼んで」

朱里は、涙で濡れるキレイな瞳をして、肩越しに俺を見る。

「ほら、なんでも言うこと、聞くんだろ?」
「........宗介.......もっと......ほしい」

そのかすかな声に、その切ない表情に、俺の理性はフッ飛んでしまった。





俺の〝新しいオモチャ〟は、俺を止まらなくさせるから。


だから、色々遊んでしまう。


俺の上に座らせて、朱里の中をかき乱したり。


押し倒して、激しく朱里を弄んだり。


ついつい激しくなる俺の愛撫に朱里は、キレイな瞳から涙を流して、俺に強く感じて......だんだん、乱れて。

そして、その華奢な身体が俺を求めてくる。


俺は、〝最高のオモチャ〟を手に入れてしまった。








何回も俺が遊んだから、朱里はぐったりしてソファに横たわる。

黒くてキレイな瞳は、呆然と空を見つめて。

とめどなく涙を流していて。

こんなキレイな人が、俺のものだと思うと嬉しくて、嬉しくて、たまらなくなる。

俺が、涙に濡れる小さな頰に手を触れると、ピクッとした。
まばたきした朱里の瞳から、また涙がこぼれ落ちる。


「朱里、俺は約束は必ず守るから。
朱里、俺の言うこと、なんでも聞いて.....約束だからね」
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