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「……目的、見つかっただろ」
『はぁ、何のことだ?』
「嘘つけ! さっきのあの超美形がおまえの目的そのものだろ!! サタナキア!!』
『さぁ~? なんのことかなぁ?』
「!! しらばっくれんな、この悪魔!!」
『悪魔だけど、何か?』
「っっ!!」

しらばっくれるサタナキアと、こんな「暖簾に腕押し」みたいな会話を続けて30分あまり。

バイト帰りに、ほぼほぼ独り言の域を脱しない罵詈雑言をしている僕は。
通りすがりの人からも、だいぶ距離を置かれている雰囲気を感じていた。

「だったら、さっきのあの態度はなんなんだよ!! 途端に甘い声なんか出しやがって!! 僕には偉そうなこと言ってるくせに、ひょっとしたらおまえがアツイに、ニャンニャン言わされてんじゃないのか?!」
『…………』

……急に黙り込む、サタナキア。

なんだよ……図星かよ、マジかよ。

僕の図星に、ショックを受けたのか。

それっきり、今まであんなに饒舌にしゃべっていたサタナキアが、うんともすんともしゃべらなくなって。

そっからの家路が、やたら静かで、やたら長く感じた。

……悪い事、したかな?

「おかえり、サタナキア」

感傷に浸りながらアパートの階段を昇って、家の鍵をポケットから出したその時。

「!?」

どこかで聞いたことがある声と、目が覚めるようなデジャブなイケメンの存在に。
僕は叫び声を上げそうになった。

『カマエル』

そのかわり、今まで単語すら発しなかったサタナキアが、僕を押しのけるように答える。
サタナキアは勝手に鍵を開けると、カマエルと呼ばれるイケメンの手を強引に引っ張った。

重たい玄関のドアを閉めると。
僕の体を乗っ取ったサタナキアは、イケメンの頬を両手で覆って深いキスをする。

次の瞬間、体がフッと軽くなった。
ガクっと膝が崩れて、イケメンを押し倒すような形で倒れ込む。

「あ、ごめん」
「いや、こっちこそ」
「あれ?」
「あ?」

なんか、声が違う……。

カマエルじゃない、のか? 

上を見上げると、丸い光が2つ。

ひっつき合って、フラフラフラフラ、部屋の中を浮遊していて。

直感的にサタナキアとカマエルだと思った。


よかったなぁ……。


幸せになれよ、サタナキア。


さよなら、サタナキア。


と、妙に親心が生まれた瞬間、丸い光がまた僕たちに近づいて、体の中に入ってくる。


ちょ……ちょっと。


僕の体よ、さようなら。

幸せなります、僕たち……の流れじゃないのかよ。


『やっぱ、実体ないと満足しねぇな』
『そうだね』


……はぁ!? 


はぁぁ?! なんだよそれーっ!?


勝手に、服を脱ぐサタナキア。

勝手に、イケメンが僕ん家で全裸になって。


あらゆるところが眩しいイケメンは、僕を押し倒して、胸の膨らみに歯を立てた。


『「いや……」』


サタナキアと僕の声が、重なる。


……やっぱり受けか、コイツ。


イケメン、いや……カマエルと重なっている肌が、熱を帯びて敏感になって。 

今までにないくらい……僕もサタナキアも感じているのが分かる。

『グズグズにしてあげる、サタナキア』
『……早く……早く……シ、てぇ』

人間の僕とイケメンを通して、自称天使と悪魔の愛の営みが、始まった。
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