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詐欺師 碓氷 政
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「おい…」
「ん?」
俺は声をかけられ目を覚ます。
「目が覚めたか…」
「月城…」
「(ここは…そうか…疲労と魔力の使いすぎで…)」
「…大丈夫か?」
「あぁ…お前は?」
「平気だ。毒も消えた」
「そうか…」
「……」
「……」
…全く話が続かねぇ…とりあえず戻るか?
「クリアしたぞ」
「え?」
「…クエストとやらだ」
「あぁ…(すっかり忘れてた)」
ピロン
【[地下鉄に忍び込んだブラックヘドパーを倒せ]クリア達成 報酬:1000コイン】
ピロン
「⁉︎」
[《ユニコーン》が貴方の活躍を喜んでいます〔2ポイント支援しました》]
ピロン
ピロン
ピロン
[《翼をもち大空を駆け回る馬》が無事なことを喜んでいます〔2ポイント支援します〕]
[《曲がったくちばし》が貴方の活躍した姿を見れて喜んでいます。それと同時に無事だったことに安心しています〔2ポイント支援します〕]
[《海の中歌で人を惑わせる者》が騒ぎを聞き顔を出しました。事情を聞き怒りながら〔2ポイント支援しました〕]
「…(怒りながらって…)」
ピロン
ピロン
「‼︎」
[《戦争の神》が貴方の戦い方に感動しています〔300コイン支援します〕]
[《勝利の女神》が貴方の判断に興味を示しました〔100コイン支援しました〕]
「(新しい神…てことは頑張れば神たちとも契約できるのか??)」
「…お前も神たちとやらから支援が来たか?」
「あ?あぁ…」
「お前のは見えないが俺も今すごい通知が来てな…多分お前のところにも来てるだろうと思ったが…そうか…」
「……」
「安心しろ。お前の能力のことは聞かない。少しの間だ行動を共にしわかる。お前は自分のことを知られたくないのだろう…」
「……」
「それならそれで構わん。知られたくないことは誰しも一つはあるからな」
「……」
「だが…礼を言う」
「⁉︎」
「あのヤマタノタイカガシの毒は優しいものじゃなかったはずだ…それなのに生きているのはお前の能力のおかげだろう…」
「……」
「今回は助かった。感謝する」
「…いや…」
「それでお前に相談がある」
「……」
タ…タ…タ…
「⁉︎」
「お兄ちゃん!」
「‼︎樹…無事だったか…」
「うん!お兄ちゃんは?大丈夫?」
「あぁ…大丈夫だ…」
「朝宮さんと佐織さんは?」
「冷泉さん!私たちは大丈夫です!」
「そうですか…」
「月城/さん/くん‼︎」
「あぁ…お前らも平気そうだな…」
「えぇ…でも、少数の人たちが毒に侵されてしまって…」
「う…」
「う~」
「しっかり!誰か!誰かこの子を助けてください!」
「やはり私の今の力では毒は完全に治せくて…」
「私も花染さんと一緒にやってみましたが無理でした…」
「お前ならできるんじゃねぇ~か?」
「…」
「そうですね…佐織さんの毒を消せた貴方なら…」
それを聞いた他の人たちは一斉に群がってきた。
「お前!毒を消せるのか!頼む!こいつを治してくれ!」
「いや!俺が先だ!」
「貴方なんて少ししかかかってなかったじゃない!私の方がひどいわ!」
……うるさい……
「…おい」
『!?』
「こいつはさっきボスとやり合ってきたんだ。落ち着け」
「つ、月城…」
「な、なによ!私たちは毒にかかってるのよ!」
「そ、そうだ!俺たちは毒に…」
「黙れ!!」
「!?」
『!?』
突然の怒声に俺も周りの奴らも驚いた。
「お前ら、周りも見ないで自分のことばかりだな。見たところそんなに騒げるんならそんな重くはないだろう。だがな周りの…子供達を見てみろ」
『……』
「お前ら大人と違って子供はまだ弱い。少量の毒でも体に回るのが早い。現に今でも親に抱き抱えられながら苦しそうにしているぞ」
『……』
月城の言葉にみんな子供達の方を見る。
「……俺らかも言わせてもらおう」
俺が発するとみんな俺に注目する。
「みんなにもあるように俺にも魔力がある。つまりここにいる全員を俺の能力で今治せるかはわからないということだ」
『⁉︎』
「医療関係の人たちならこの言葉を聞けばわかると思うが…トリアージを行うことになると思います」
「…トリアージ??」
「はい。簡単に言えば優先順位…重症の方を先に治療し軽い人を後に回す…と言うことです」
『⁉︎』
「おい!それは症状が軽いからって俺たちを見捨てるってことかよ!」
「別に見捨てるとは言ってません。魔力が回復するまで待ってもらうだけです」
「それじゃあ、待ってる間にあたしたちが死んじゃうかもしれないじゃない!」
「それなら、ポーションを使えばいいじゃないですか。完全に治らずとも進行を防げるかもしれませんし、そもそも治るかもしれないじゃないですか」
「そ、それはそうだけど!治せる人がいるならなるべくポーションを使わないほうがいいに決まってるじゃない!」
「…はぁ…そうやって人任せにしてるとこれから先生き残れなくなりますよ?」
「…そうだな。それにお前たちも今回それなりに活躍したからそれなりに契約をした神々たち中心に支援もされてるんじゃないか?」
「そ、それは…」
「それなら、あの案内役を呼びポーションでもなんでも買えると思うが?」
俺と月城の言葉に追い詰められる一同。本当はこの言い争い中も毒が回ってるはずだから子供達を中心に治したいんだが…
「この…黙って聞いていれば…つべこべ言わずにとっと治せっつってんだろうが!」
…どうやら佐織さんを置いて行った仲間の一人が俺に胸ぐらを掴もうとしているようだ。
「そこまでよ!」
「!!」
「!?」
佐織さんが俺の前に来て庇ってくれていた。その手に…刀を持って…
「冷泉さんに一歩でも近づいたら斬ります」
「な、何言って…」
「月城さんと冷泉さんの話を聞いたでしょう?時間はかかるけど治すって…それが子供が先なだけ…話聞いてたの?」
「だから、その子供よりみろよ!この俺の腕を!もう肘まで紫になっちゃまった!あの子供は息は荒いがまだ俺より全然紫にもなってねぇ~から平気だよ!」
「…貴方の方がひどい?そう…ならなんでそんなに騒げるのかしら?」
「あ?」
「毒に侵されてるのなら特にひどい人は貴方みたいに騒げないわよ?」
「そ、それは!」
「何を言っても無駄よ。毒に侵されてない人もされてる人もどう見たってその子供たちの方がひどいわ。いいかげん、自分の言ってることと行動が違うことに気づきなさいよ。口ではひどいって言ってるけどどう見ても元気そうだわ」
すると佐織さんはすごいことを言った。
「あ、そうだわ。そんなにその腕が気になるなら私が斬ってあげましょうか?」
『!?』
「な…んだと?」
「だって、その腕に毒があるから気になるんでしょう?それならその腕を切り落とせば毒も回らないわよ?」
「お、お前…そんなこと…平気で…言う女だったか?」
「(確かに…俺たちと会った時もどっちかって言うと内気な方じゃなかったか?)」
ピロン
[専用スキル【リサーチ】が発動します】
[佐織 華月の専用スキル【恩返し】が発動しています]
「(恩返し…)」
ピロン
[《ユニコーン》が今までの貴方の業績を讃え、[専用スキル【浄化(D)】]をランクを1アップさせます]
「え?」
[専用スキル【浄化(D)】が【浄化(C)】ランクアップしました]
【浄化(C)】
神獣から伝授された。ランクが上がり、初級程度の汚染や毒から魔力を大幅に使えば中級の汚染や毒までも浄化することができる。さらに人であれば単体ではなく複数人(6人まで)使用することができる。
「(ここでランクがアップ…俺の契約した神獣は優しいな)」
ピロン
[《ユニコーン》がなんか褒められた気がする!と嬉しそうに駆け回っています]
ピロン
[《翼をもち大空を駆け回る馬》がうるさいと《ユニコーン》を足で蹴りました]
ピロン
[《ユニコーン》が怒ってやり返しました]
ピロン
[《ユニコーン》と《翼をもち大空を駆け回る馬》が喧嘩し始めました]
ピロン
[《曲がったくちばし》が呆れています]
ピロン
[《海の中歌で人を惑わす者》が騒々しさに顔を顰めて海の中へと潜りました]
「(…神獣は心の中でも読めるのか…しかもなんだこの異常な喜びようは…そんなことより…)」
今のこの状況…俺は早く休みたいし残りの人たちのステータスも見たいんだが…
「…はぁ…」
「お兄ちゃん?」
「おい」
『!?』
「とにかく…これ以上騒いでも何にもならないので子供達から順にいきます」
「ちょ!」
「安心してください。すぐに順番が来るともうので」
俺は男に力強い目線を送った。よほど俺の目力が凄かったのか男は黙った。
「すみませんが、ここに子供たちは何人いますか?」
「えっと、おそらく12人ほどだと思います」
朝宮さんがすぐに答えてくれた。さすが医療関係者というか…人数の把握が早く記憶力もいいな…
「ありがとうございます。(ちょうど半数…)それでは…6人の子供達を俺の周りに集めてください。」
そう俺が言うと誰から行くか少し迷っているようだ。自分の子のことも早く助けたいと思うが他の子供達とのことも心配なんだろう…あの大人たちとは違うな…さすが親と言ったところか…
フッ
!?…今更あのことを思い出してどうする…もう俺は関係ないんだ…
「すぐに済みますので誰からでも大丈夫ですよ」
そう言うと渋々と前に出てきた親たちが子どもを俺の周りに寝かせた。
「それでは、眩しいと思うので少し離れていてください」
月城たちも樹も朝宮さん、佐織さんたちみんな少し離れた。
「ふぅ…」
ピロン
[専用スキル【浄化(C)】を発動します]
パァ!!
『!?』
俺ががスキルを使ったと同時に勇希を中心に明るく神々しい光が放たれた。それをみた一同は驚いていた。しかし驚いている間に子供達の毒はみるみる消えていった。それと同時に光も消えていく…
「…ふぅ…」
『ん~』
『ふぅ…』
「智樹!?」
「愛!?」
子供達が辛い表情から穏やかな表情になり、それを見た親達が一斉に子供達に歩み寄る。そして、涙ぐみながらお礼を言ってきた。
「ありがとうございます。ありがとうございます!!」
そう何度も言って来た。
「い、いえ…怪我の治療はそちらにいる花染さんか朝宮さんに。...それでは次の子供達をお願いします」
俺がそういうと、戸惑いなどなくさっきと同じように俺の周りに子供達を寝かせた。そして同じようにスキルを使い、同じような風景が起きる。
「よし…他に毒状態の子はいませんか?」
俺ん問いに子持ちの親達は頷く。
「よし!じゃあ、早く俺の治療を…」
「では、毒状態が重度な人と中度、軽度と別れてください。動ける人は重度の方を中心に移動の手伝いをお願いします」
「おい!早く俺を治せよ!」
「…あなたはまだ大丈夫です」
「どこが大丈夫なんだよ!俺の腕見てるだろう!?こんなに広がって…」
「あなたは動けているので大丈夫です」
「な!?」
「あなたは重度と軽度の違いわかりますか?重度の人は動くこともままならず話すことも困難で命に危機のある人たちのことです。あなたはどう見ても動けているし話せています。どこからどう見ても軽度の人です」
「こいつっ!!」
例の男が俺の胸ぐらを掴もうとしてきた。
バッ!!
「「!?!?」」
佐織さんと月城が俺の前に出て剣・刀を受けていた。
「わからない人ですね」
「お前は黙っていろ」
「本当にその腕を切られたいのかしら?」
「うっ!」
「…おい、お前少し落ち着けよ…」
「そ、そうよ…ちょっと落ちつこう?じゃないと本当に佐織に腕切られちゃうわよ?」
「…落ち着け…」
「…でもよ!」
「ちょっと!いい加減にしなさい!」
「そうよ!そうやっている間に毒の状態の人たちが助からないかもしれなのよ??」
「そうだ。お前さんはちょっとわがまますぎないかい?子供以下だな」
「ちゃんと治すって言ってんだから大人しく待ってろよ」
「ねぇねぇ、お母さん、お父さんあの人どうして騒いでるの?」
「しっ!あの人毒にかかって頭が変になっちゃったのよ」
「そうだぞ。ちょっと頭がおかしくなっちゃったんだ」
「ふぅ~ん。そっか!」
気づけば周りの人たちも味方になってくれていた。
「...ちっ...わかったよ...」
「...それでは先程と同じように俺の周りに集まってください」
それからはスムーズに事が進んだ。まずは重傷者を治した。全ての重症者がいなくなったところで魔力切れを防ぐため休憩に入ることにした。
「ふぅ...」
「おい。大丈夫か」
「月城...少し疲れてるが大丈夫だ」
「...ほら」
「え?」
「ポーションだ。位は一番低い初級だが、これぐらいで足りるだろう」
「...どうも」
「礼などいい。今一番頑張っているのはお前だ。それにお前のおかげでこうして生き残れる人たちがたくさんいるのだからな」
「......」
「それより、俺の提案を考えといてくれ。今興味がなくてもいつかそうなる日が来るかもしれないからな」
「......」
...あのヤマタノタイカガシが去ってしばらくたったあと...
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「...俺は確か重度の毒状態にかかっていたはずだが...冷泉...お前が治してくれたのか?」
「...あぁ...この先お前を必要としている人たちがこれからも現れるはずだし、それにお前に死なれちゃこっちだって困るからな」
「...そのお前...いや、今まで出会った人たちもそうだが、それはどういう意味だ?」
「...それに関しては今は言えないな...言ったところでお前には伝わらないようだしな...」
「......」
「だが、いずれ知る事にはなるだろう。お前はそんなことなんか気にせず、やるべきことをしてくれ...勝手にこんなこと言われても困るだろうけどな」
「...」
月城は黙って話を聞いていた。俺の言葉に怒ることもなく。
「よし、そろそろ」
「提案なんだが...」
俺の言葉を遮り、月城が言った。
「お前...俺たちと一緒に来ないか?」
「...はぁ?」
「お前には何かある。だから俺達と一緒に来ればこの世界を救える気がする...そんな気がするんだ」
「...」
「もちろん、お前と共にここまできた朝宮たちも一緒で構わない。どうだ?」
「...どうしてそう思ったのかはわからないが、お前と一緒にはいかない」
「......」
「もちろん、目的が同じで共に戦うことも今後あるだろう。その時は協力してもいい(こいつを死なせないようにしなきゃいけないしな)」
「...そうか...」
「あぁ。すま」
「だが、考えといてくれ」
「え?」
「お前のその言葉が正しいのならばこの先数えきれないくらい会うことになるのだろう。その時気が変わったらいつでも俺と共に来ることを許そう」
「......(こいつ...こんなこという奴だったか?)あ、あぁ...考えとく...一応...」
「感謝する」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「よし。そろそろ、再開するか」
「大丈夫か」
「あぁ。お前からもらった魔力回復ポーションと疲労回復ポーションものんですっかり元気になったよ」
「...そうか」
「あぁ」
そして俺は中度の人たちを治した。終わったところで少し休憩をはさみ、月城からまたなぜか魔力回復ポーションと疲労回復ポーションを貰いすぐ軽度の人たちを治した。
「やっと治ったぜ!」
「ちょっと!あんた治してもらったんだからお礼ぐらい言いなさいよ!」
「......」
「あんたね!」
「いいよ。佐織さん、こんな奴にお礼なんて言われても嬉しくないから」
「冷泉さん...」
「...っ!」
「冷泉さん!」
「お兄ちゃん!!」
俺はポーションを使用したとはいえ、ボスを倒した後でもあったのか少しふらついてしまった。
ボスッ
「!?」
「大丈夫か?」
「月城...」
ピロン
ピロン
ピロン
ピロン
ピロン
ピロン
[《愛や性愛の神》が目を見開いています]
[《愛と美と性を司る神》が胸を抑えています]
[《神々の伝令指定的な存在》が関心を持ちました]
[《ユニコーン》が目を見開いて固まっています]
[《曲がったくちばし》が倒れた《翼をもち大空を駆け回る馬》を起こそうとしています]
[《海の中歌で人を惑わす者》が怒っています]
「......(通知がうるさい...てか《翼をもち大空を駆け回る馬》はどうした一体何があった...新しい神様もいたけどどうしたんだ?どうしてそんな反応になってるんだ?)」
今の俺の状況か??確かに俺は今ふらついたからそれを月城が支えてくれている。俺の腰を持って...うん?腰?あっ!
「んんっ(咳)月城もう大丈夫だ。離れろ」
「...そうか」
ピロン
[《愛や性愛の神》が少し落ち込んでいます]
ピロン
[《愛と美と性を司る神》が残念そうに溜め息を吐きました]
ピロン
[《翼をもち大空を駆け回る馬》が飛び起き、暴れています]
ピロン
[《曲がったくちばし》が《翼をもち大空を駆け回る馬》を抑えています]
「(あぁ...通知が...それより月城はこんなスキンシップが激しかったか?花染さんが恋人になった四回目以降は確かにスキンシップはあったが...他人にここまで触れる奴じゃなかったはず...)」
するとここである人物が登場してきた。
「いや~あなた、すごいスキルをもっているのですね?」
どこに隠れていたのか、碓氷 政が現れた。
「......」
「いやぁ~あなたのおかげで多くの死者を出さずにすみました」
なぜか俺の近くによる...
「よければこの後、お話を聞かせていただけませんか?」
「...」
ギュ...
何かを感じ取っているのか、樹は俺の手を握った。
「...どのような話を?言っときますが、俺の能力などに関しては教えませんよ?」
「あぁ、いえいえ。そんなことはいいのです。...まぁ、これから仲良くさせてもらって信頼関係ができたらぜひ、教え願いたいですが...とりあえず世間話をしようと思いましてね」
意味深のある笑顔をむける碓氷。
ㇲッ
「!!」
俺の前に来たのは月城...
「その話に俺も参加させてもらえないか?」
「え?」
「!!月城さん...もちろんです!今準備しますね!」
碓氷は張り切って拠点にもどった。
「...おい、どういうつもりだ?」
「別に。ただ、あいつが何か企んでいると思っただけだ」
「...」
「月城君」
「あぁ。花染」
「私達はどうする?」
「そうだな、とりあえずまた何が来るかわからないから交代で見張りでもしておいてくれ」
「わかったわ」
「頼む」
「冷泉さん」
「??朝宮さん??」
「私達はどうしましょう?」
「朝宮さんは治療して疲れたでしょう。休んでていいですよ」
「あの私は...」
「佐織さんは橘さんたちと協力して見張りをお願いします」
「わかりました」
「樹は俺と一緒にいよう」
「うん!」
朝宮さんたちにそう告げ俺らは碓氷の拠点に向かった。
「さて、冷泉さん...でしたか?」
「...はい」
「さきほどはありがとうございました。素晴らしいスキルをお持ちの様で...」
「いえ...(そういえばこいつはあの時どこにいたんだ?)」
「お前はどこにいたんだ?」
「...はい?」
「ここにいる人たちが戦ったり、自分の子を守ったりとしているなかでお前はどこにいたんだ?」
「...私も戦っていました。いや~あの混乱でしたからね。私が何処にいたかなんて気づかなかったのは仕方のない事ですが...」
「...」
「...」
こいつの言っていることが嘘だということは月城が持っている[真実の目]がなくてもわかる。なにせこいつ...詐欺師だからな...
ピロン
[専用スキル【リサーチ】を発動します]
〈人物紹介〉
名前:碓氷 政(うすい つかさ)
年齢:27歳
加護:???
専用特性:詐欺師
▶詳細(観覧可能)
ポチッ
【詐欺師】
平気な顔で相手をだますことができる。相手が信じれば信じる程信頼感を得られ操り人形とかすことができる。逆に嘘がばれれば洗脳が解ける。
【罠仕掛け】
場所に罠を仕掛ける事ができる。使い道は様々。相手を落とすあり、逆に相手を信頼させることに使うこともできる。
【巧み】
相手を巧みにだます。話がうまければうまい程信憑性が高くなる。どんなあり得ない話でも信じさせることができる。
「(...やっぱり質の悪いな...詐欺師ってのは...)」
ピッ
【総合評価】
稀にみるプロの詐欺師。今までだましてきた数は数えきれない。人の良さとコミュニケーション能力が高いため周りは疑わない。信じさせるのは得意だが、相手は信じないことにしている。
「(信じさせるのに信じないか...)」
「それで?」
「??なんですか??」
「お前は俺達に何をさせたい...いや...させるんだ?」
「!!」
「...」
俺は黙って聞いていることにした。
「...やはり、あなたは騙せませんね...月城紅さん...」
「...」
「そうですね...あなたには私を守ってほしいんですよ」
「...守れだと?」
すると碓氷は人のいい笑顔から目を細め、意味深のある笑顔に変わった。いわゆる詐欺師の顔と言うやつだ。
「はい。今まで私が生き残るためにいろんな方たちを私を守るように仕向けてきましたが...最後まで生き残った者はいませんでした...」
俺と月城は黙って話を聞いていた。
「しかし、ここで月城紅...あなたに会うことができました」
「俺?」
「えぇ。あなたはこの世界の終わりに欠かせない人です。それゆえあなたはそこらの者たちより強い...あなたさえいてくれれば、私は安泰です」
笑顔を崩さず淡々と答える碓氷...
「それに...あなたもなかなか強いスキルをお持ちの様だ...」
碓氷は何を思ったのか俺の手に自分の手を重ねてきた。それになぜか月城は俺より先に碓氷の手を払ってくれていた。
「......」
碓氷は少し月城を睨んだようにみえたがすぐに何ともない顔をした。
「冷泉さん...先程も言ったようにあなたのそのスキルのおかげで此処にいる者たちほぼ全員が助かりました。これほど素晴らしいスキルを持ったものは今までいませんでした」
「......」
「それに...あなたは私と同じ感じがします」
「...どういうことしょう」
俺は冷静に答えた。
「私は人を信じさせるのは得意ですが、人を信じません。あなたも今は仲間と共に行動しているようですが...人を信じていませんね?」
「......」
俺は図星を突かれ黙った。
「ふふ。そういう点では私達は同じ立場の人間だと思いませんか?」
「...お」
「お前と一緒にするな」
「!?」
月城が口をはさんできた。
「一緒にするな...とはどういう事でしょうか?」
「こいつが人を信じていなくともお前みたいに人をだましてまで此処に辿り着いている訳では無い。こいつは自分の力でここまで来たんだ。人をだましてまで此処にきたお前と違ってな」
「...」
俺は正直驚いた。驚いて目を見開いてしまったほどだ。人にあまり感傷しない月城がここまで俺を庇うなんてゲームの中でもないからだ。
「...」
それは碓氷も同じようで目を見開いていた。
「あはは。貴方がそこまで言うなんて驚きだ。いや~そこは許してほしいですね。私も生きるのに必死でしたからね」
「ふん。だとしても、人を犠牲にすることは無いんじゃなかったのか?」
「ですが、私にはテイマー...と言ってもそんなスキルを持っている人がいるのかもわかりませんが、そんなスキルは持っていないので必然的にそうなってしまったんですよ。もちろん、そんなスキルがあったのなら人なんて使いませんよ。私はそもそも人を信じないのでね」
「......」
「......」
「そんな深刻そうな顔をしないでください。もちろん、月城さんのお仲間たちも素晴らしいスキルを持っているのは知っていますし歓迎します。冷泉さんのお仲間たちももちろん歓迎しますよ?もちろん、あなた方には何もしませんよ?」
こいつはそう言っているが、本当の所はわからない。月城の仲間は兎も角、俺と今行動を共にしている樹たちには俺達がいない間になにをするのかわからない。
「あ、私を信じていただくために考える時間は必要だと思うので、また後日お話を伺うことにしましょう。いい返事を待っていますよ?」
そう言って、碓氷は拠点から離れ月城と俺の二人になった。
「...月城」
「......」
「お前はもちろん今の話を完全には信じていないだろう?」
「...そうだな」
「...どうだ。ここは俺にまかせないか?」
「どうするつもりだ?」
「俺に考えがある」
「...まさかとは思うが、あいつを仲間にいれる気じゃないだろうな?」
「そのつもりだ」
「...!...なぜだ」
「詐欺師は気に入らないが、なぜかあいつはこっち側につかせた方がいい気がする」
「その根拠は?」
「わからない...強いていうならうまくあいつを使えば今後役に立つ可能性が浮かんだ...というところだ」
「...俺の時は断られて考えると言われたんだが...」ボソッ
「ん?なにか言ったか?」
「...いやなんでもない」
「...そうか...」
俺はこの時、月城たちさえ知らないある方法をして碓氷を味方にしようと考えていた。
「ん?」
俺は声をかけられ目を覚ます。
「目が覚めたか…」
「月城…」
「(ここは…そうか…疲労と魔力の使いすぎで…)」
「…大丈夫か?」
「あぁ…お前は?」
「平気だ。毒も消えた」
「そうか…」
「……」
「……」
…全く話が続かねぇ…とりあえず戻るか?
「クリアしたぞ」
「え?」
「…クエストとやらだ」
「あぁ…(すっかり忘れてた)」
ピロン
【[地下鉄に忍び込んだブラックヘドパーを倒せ]クリア達成 報酬:1000コイン】
ピロン
「⁉︎」
[《ユニコーン》が貴方の活躍を喜んでいます〔2ポイント支援しました》]
ピロン
ピロン
ピロン
[《翼をもち大空を駆け回る馬》が無事なことを喜んでいます〔2ポイント支援します〕]
[《曲がったくちばし》が貴方の活躍した姿を見れて喜んでいます。それと同時に無事だったことに安心しています〔2ポイント支援します〕]
[《海の中歌で人を惑わせる者》が騒ぎを聞き顔を出しました。事情を聞き怒りながら〔2ポイント支援しました〕]
「…(怒りながらって…)」
ピロン
ピロン
「‼︎」
[《戦争の神》が貴方の戦い方に感動しています〔300コイン支援します〕]
[《勝利の女神》が貴方の判断に興味を示しました〔100コイン支援しました〕]
「(新しい神…てことは頑張れば神たちとも契約できるのか??)」
「…お前も神たちとやらから支援が来たか?」
「あ?あぁ…」
「お前のは見えないが俺も今すごい通知が来てな…多分お前のところにも来てるだろうと思ったが…そうか…」
「……」
「安心しろ。お前の能力のことは聞かない。少しの間だ行動を共にしわかる。お前は自分のことを知られたくないのだろう…」
「……」
「それならそれで構わん。知られたくないことは誰しも一つはあるからな」
「……」
「だが…礼を言う」
「⁉︎」
「あのヤマタノタイカガシの毒は優しいものじゃなかったはずだ…それなのに生きているのはお前の能力のおかげだろう…」
「……」
「今回は助かった。感謝する」
「…いや…」
「それでお前に相談がある」
「……」
タ…タ…タ…
「⁉︎」
「お兄ちゃん!」
「‼︎樹…無事だったか…」
「うん!お兄ちゃんは?大丈夫?」
「あぁ…大丈夫だ…」
「朝宮さんと佐織さんは?」
「冷泉さん!私たちは大丈夫です!」
「そうですか…」
「月城/さん/くん‼︎」
「あぁ…お前らも平気そうだな…」
「えぇ…でも、少数の人たちが毒に侵されてしまって…」
「う…」
「う~」
「しっかり!誰か!誰かこの子を助けてください!」
「やはり私の今の力では毒は完全に治せくて…」
「私も花染さんと一緒にやってみましたが無理でした…」
「お前ならできるんじゃねぇ~か?」
「…」
「そうですね…佐織さんの毒を消せた貴方なら…」
それを聞いた他の人たちは一斉に群がってきた。
「お前!毒を消せるのか!頼む!こいつを治してくれ!」
「いや!俺が先だ!」
「貴方なんて少ししかかかってなかったじゃない!私の方がひどいわ!」
……うるさい……
「…おい」
『!?』
「こいつはさっきボスとやり合ってきたんだ。落ち着け」
「つ、月城…」
「な、なによ!私たちは毒にかかってるのよ!」
「そ、そうだ!俺たちは毒に…」
「黙れ!!」
「!?」
『!?』
突然の怒声に俺も周りの奴らも驚いた。
「お前ら、周りも見ないで自分のことばかりだな。見たところそんなに騒げるんならそんな重くはないだろう。だがな周りの…子供達を見てみろ」
『……』
「お前ら大人と違って子供はまだ弱い。少量の毒でも体に回るのが早い。現に今でも親に抱き抱えられながら苦しそうにしているぞ」
『……』
月城の言葉にみんな子供達の方を見る。
「……俺らかも言わせてもらおう」
俺が発するとみんな俺に注目する。
「みんなにもあるように俺にも魔力がある。つまりここにいる全員を俺の能力で今治せるかはわからないということだ」
『⁉︎』
「医療関係の人たちならこの言葉を聞けばわかると思うが…トリアージを行うことになると思います」
「…トリアージ??」
「はい。簡単に言えば優先順位…重症の方を先に治療し軽い人を後に回す…と言うことです」
『⁉︎』
「おい!それは症状が軽いからって俺たちを見捨てるってことかよ!」
「別に見捨てるとは言ってません。魔力が回復するまで待ってもらうだけです」
「それじゃあ、待ってる間にあたしたちが死んじゃうかもしれないじゃない!」
「それなら、ポーションを使えばいいじゃないですか。完全に治らずとも進行を防げるかもしれませんし、そもそも治るかもしれないじゃないですか」
「そ、それはそうだけど!治せる人がいるならなるべくポーションを使わないほうがいいに決まってるじゃない!」
「…はぁ…そうやって人任せにしてるとこれから先生き残れなくなりますよ?」
「…そうだな。それにお前たちも今回それなりに活躍したからそれなりに契約をした神々たち中心に支援もされてるんじゃないか?」
「そ、それは…」
「それなら、あの案内役を呼びポーションでもなんでも買えると思うが?」
俺と月城の言葉に追い詰められる一同。本当はこの言い争い中も毒が回ってるはずだから子供達を中心に治したいんだが…
「この…黙って聞いていれば…つべこべ言わずにとっと治せっつってんだろうが!」
…どうやら佐織さんを置いて行った仲間の一人が俺に胸ぐらを掴もうとしているようだ。
「そこまでよ!」
「!!」
「!?」
佐織さんが俺の前に来て庇ってくれていた。その手に…刀を持って…
「冷泉さんに一歩でも近づいたら斬ります」
「な、何言って…」
「月城さんと冷泉さんの話を聞いたでしょう?時間はかかるけど治すって…それが子供が先なだけ…話聞いてたの?」
「だから、その子供よりみろよ!この俺の腕を!もう肘まで紫になっちゃまった!あの子供は息は荒いがまだ俺より全然紫にもなってねぇ~から平気だよ!」
「…貴方の方がひどい?そう…ならなんでそんなに騒げるのかしら?」
「あ?」
「毒に侵されてるのなら特にひどい人は貴方みたいに騒げないわよ?」
「そ、それは!」
「何を言っても無駄よ。毒に侵されてない人もされてる人もどう見たってその子供たちの方がひどいわ。いいかげん、自分の言ってることと行動が違うことに気づきなさいよ。口ではひどいって言ってるけどどう見ても元気そうだわ」
すると佐織さんはすごいことを言った。
「あ、そうだわ。そんなにその腕が気になるなら私が斬ってあげましょうか?」
『!?』
「な…んだと?」
「だって、その腕に毒があるから気になるんでしょう?それならその腕を切り落とせば毒も回らないわよ?」
「お、お前…そんなこと…平気で…言う女だったか?」
「(確かに…俺たちと会った時もどっちかって言うと内気な方じゃなかったか?)」
ピロン
[専用スキル【リサーチ】が発動します】
[佐織 華月の専用スキル【恩返し】が発動しています]
「(恩返し…)」
ピロン
[《ユニコーン》が今までの貴方の業績を讃え、[専用スキル【浄化(D)】]をランクを1アップさせます]
「え?」
[専用スキル【浄化(D)】が【浄化(C)】ランクアップしました]
【浄化(C)】
神獣から伝授された。ランクが上がり、初級程度の汚染や毒から魔力を大幅に使えば中級の汚染や毒までも浄化することができる。さらに人であれば単体ではなく複数人(6人まで)使用することができる。
「(ここでランクがアップ…俺の契約した神獣は優しいな)」
ピロン
[《ユニコーン》がなんか褒められた気がする!と嬉しそうに駆け回っています]
ピロン
[《翼をもち大空を駆け回る馬》がうるさいと《ユニコーン》を足で蹴りました]
ピロン
[《ユニコーン》が怒ってやり返しました]
ピロン
[《ユニコーン》と《翼をもち大空を駆け回る馬》が喧嘩し始めました]
ピロン
[《曲がったくちばし》が呆れています]
ピロン
[《海の中歌で人を惑わす者》が騒々しさに顔を顰めて海の中へと潜りました]
「(…神獣は心の中でも読めるのか…しかもなんだこの異常な喜びようは…そんなことより…)」
今のこの状況…俺は早く休みたいし残りの人たちのステータスも見たいんだが…
「…はぁ…」
「お兄ちゃん?」
「おい」
『!?』
「とにかく…これ以上騒いでも何にもならないので子供達から順にいきます」
「ちょ!」
「安心してください。すぐに順番が来るともうので」
俺は男に力強い目線を送った。よほど俺の目力が凄かったのか男は黙った。
「すみませんが、ここに子供たちは何人いますか?」
「えっと、おそらく12人ほどだと思います」
朝宮さんがすぐに答えてくれた。さすが医療関係者というか…人数の把握が早く記憶力もいいな…
「ありがとうございます。(ちょうど半数…)それでは…6人の子供達を俺の周りに集めてください。」
そう俺が言うと誰から行くか少し迷っているようだ。自分の子のことも早く助けたいと思うが他の子供達とのことも心配なんだろう…あの大人たちとは違うな…さすが親と言ったところか…
フッ
!?…今更あのことを思い出してどうする…もう俺は関係ないんだ…
「すぐに済みますので誰からでも大丈夫ですよ」
そう言うと渋々と前に出てきた親たちが子どもを俺の周りに寝かせた。
「それでは、眩しいと思うので少し離れていてください」
月城たちも樹も朝宮さん、佐織さんたちみんな少し離れた。
「ふぅ…」
ピロン
[専用スキル【浄化(C)】を発動します]
パァ!!
『!?』
俺ががスキルを使ったと同時に勇希を中心に明るく神々しい光が放たれた。それをみた一同は驚いていた。しかし驚いている間に子供達の毒はみるみる消えていった。それと同時に光も消えていく…
「…ふぅ…」
『ん~』
『ふぅ…』
「智樹!?」
「愛!?」
子供達が辛い表情から穏やかな表情になり、それを見た親達が一斉に子供達に歩み寄る。そして、涙ぐみながらお礼を言ってきた。
「ありがとうございます。ありがとうございます!!」
そう何度も言って来た。
「い、いえ…怪我の治療はそちらにいる花染さんか朝宮さんに。...それでは次の子供達をお願いします」
俺がそういうと、戸惑いなどなくさっきと同じように俺の周りに子供達を寝かせた。そして同じようにスキルを使い、同じような風景が起きる。
「よし…他に毒状態の子はいませんか?」
俺ん問いに子持ちの親達は頷く。
「よし!じゃあ、早く俺の治療を…」
「では、毒状態が重度な人と中度、軽度と別れてください。動ける人は重度の方を中心に移動の手伝いをお願いします」
「おい!早く俺を治せよ!」
「…あなたはまだ大丈夫です」
「どこが大丈夫なんだよ!俺の腕見てるだろう!?こんなに広がって…」
「あなたは動けているので大丈夫です」
「な!?」
「あなたは重度と軽度の違いわかりますか?重度の人は動くこともままならず話すことも困難で命に危機のある人たちのことです。あなたはどう見ても動けているし話せています。どこからどう見ても軽度の人です」
「こいつっ!!」
例の男が俺の胸ぐらを掴もうとしてきた。
バッ!!
「「!?!?」」
佐織さんと月城が俺の前に出て剣・刀を受けていた。
「わからない人ですね」
「お前は黙っていろ」
「本当にその腕を切られたいのかしら?」
「うっ!」
「…おい、お前少し落ち着けよ…」
「そ、そうよ…ちょっと落ちつこう?じゃないと本当に佐織に腕切られちゃうわよ?」
「…落ち着け…」
「…でもよ!」
「ちょっと!いい加減にしなさい!」
「そうよ!そうやっている間に毒の状態の人たちが助からないかもしれなのよ??」
「そうだ。お前さんはちょっとわがまますぎないかい?子供以下だな」
「ちゃんと治すって言ってんだから大人しく待ってろよ」
「ねぇねぇ、お母さん、お父さんあの人どうして騒いでるの?」
「しっ!あの人毒にかかって頭が変になっちゃったのよ」
「そうだぞ。ちょっと頭がおかしくなっちゃったんだ」
「ふぅ~ん。そっか!」
気づけば周りの人たちも味方になってくれていた。
「...ちっ...わかったよ...」
「...それでは先程と同じように俺の周りに集まってください」
それからはスムーズに事が進んだ。まずは重傷者を治した。全ての重症者がいなくなったところで魔力切れを防ぐため休憩に入ることにした。
「ふぅ...」
「おい。大丈夫か」
「月城...少し疲れてるが大丈夫だ」
「...ほら」
「え?」
「ポーションだ。位は一番低い初級だが、これぐらいで足りるだろう」
「...どうも」
「礼などいい。今一番頑張っているのはお前だ。それにお前のおかげでこうして生き残れる人たちがたくさんいるのだからな」
「......」
「それより、俺の提案を考えといてくれ。今興味がなくてもいつかそうなる日が来るかもしれないからな」
「......」
...あのヤマタノタイカガシが去ってしばらくたったあと...
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「...俺は確か重度の毒状態にかかっていたはずだが...冷泉...お前が治してくれたのか?」
「...あぁ...この先お前を必要としている人たちがこれからも現れるはずだし、それにお前に死なれちゃこっちだって困るからな」
「...そのお前...いや、今まで出会った人たちもそうだが、それはどういう意味だ?」
「...それに関しては今は言えないな...言ったところでお前には伝わらないようだしな...」
「......」
「だが、いずれ知る事にはなるだろう。お前はそんなことなんか気にせず、やるべきことをしてくれ...勝手にこんなこと言われても困るだろうけどな」
「...」
月城は黙って話を聞いていた。俺の言葉に怒ることもなく。
「よし、そろそろ」
「提案なんだが...」
俺の言葉を遮り、月城が言った。
「お前...俺たちと一緒に来ないか?」
「...はぁ?」
「お前には何かある。だから俺達と一緒に来ればこの世界を救える気がする...そんな気がするんだ」
「...」
「もちろん、お前と共にここまできた朝宮たちも一緒で構わない。どうだ?」
「...どうしてそう思ったのかはわからないが、お前と一緒にはいかない」
「......」
「もちろん、目的が同じで共に戦うことも今後あるだろう。その時は協力してもいい(こいつを死なせないようにしなきゃいけないしな)」
「...そうか...」
「あぁ。すま」
「だが、考えといてくれ」
「え?」
「お前のその言葉が正しいのならばこの先数えきれないくらい会うことになるのだろう。その時気が変わったらいつでも俺と共に来ることを許そう」
「......(こいつ...こんなこという奴だったか?)あ、あぁ...考えとく...一応...」
「感謝する」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「よし。そろそろ、再開するか」
「大丈夫か」
「あぁ。お前からもらった魔力回復ポーションと疲労回復ポーションものんですっかり元気になったよ」
「...そうか」
「あぁ」
そして俺は中度の人たちを治した。終わったところで少し休憩をはさみ、月城からまたなぜか魔力回復ポーションと疲労回復ポーションを貰いすぐ軽度の人たちを治した。
「やっと治ったぜ!」
「ちょっと!あんた治してもらったんだからお礼ぐらい言いなさいよ!」
「......」
「あんたね!」
「いいよ。佐織さん、こんな奴にお礼なんて言われても嬉しくないから」
「冷泉さん...」
「...っ!」
「冷泉さん!」
「お兄ちゃん!!」
俺はポーションを使用したとはいえ、ボスを倒した後でもあったのか少しふらついてしまった。
ボスッ
「!?」
「大丈夫か?」
「月城...」
ピロン
ピロン
ピロン
ピロン
ピロン
ピロン
[《愛や性愛の神》が目を見開いています]
[《愛と美と性を司る神》が胸を抑えています]
[《神々の伝令指定的な存在》が関心を持ちました]
[《ユニコーン》が目を見開いて固まっています]
[《曲がったくちばし》が倒れた《翼をもち大空を駆け回る馬》を起こそうとしています]
[《海の中歌で人を惑わす者》が怒っています]
「......(通知がうるさい...てか《翼をもち大空を駆け回る馬》はどうした一体何があった...新しい神様もいたけどどうしたんだ?どうしてそんな反応になってるんだ?)」
今の俺の状況か??確かに俺は今ふらついたからそれを月城が支えてくれている。俺の腰を持って...うん?腰?あっ!
「んんっ(咳)月城もう大丈夫だ。離れろ」
「...そうか」
ピロン
[《愛や性愛の神》が少し落ち込んでいます]
ピロン
[《愛と美と性を司る神》が残念そうに溜め息を吐きました]
ピロン
[《翼をもち大空を駆け回る馬》が飛び起き、暴れています]
ピロン
[《曲がったくちばし》が《翼をもち大空を駆け回る馬》を抑えています]
「(あぁ...通知が...それより月城はこんなスキンシップが激しかったか?花染さんが恋人になった四回目以降は確かにスキンシップはあったが...他人にここまで触れる奴じゃなかったはず...)」
するとここである人物が登場してきた。
「いや~あなた、すごいスキルをもっているのですね?」
どこに隠れていたのか、碓氷 政が現れた。
「......」
「いやぁ~あなたのおかげで多くの死者を出さずにすみました」
なぜか俺の近くによる...
「よければこの後、お話を聞かせていただけませんか?」
「...」
ギュ...
何かを感じ取っているのか、樹は俺の手を握った。
「...どのような話を?言っときますが、俺の能力などに関しては教えませんよ?」
「あぁ、いえいえ。そんなことはいいのです。...まぁ、これから仲良くさせてもらって信頼関係ができたらぜひ、教え願いたいですが...とりあえず世間話をしようと思いましてね」
意味深のある笑顔をむける碓氷。
ㇲッ
「!!」
俺の前に来たのは月城...
「その話に俺も参加させてもらえないか?」
「え?」
「!!月城さん...もちろんです!今準備しますね!」
碓氷は張り切って拠点にもどった。
「...おい、どういうつもりだ?」
「別に。ただ、あいつが何か企んでいると思っただけだ」
「...」
「月城君」
「あぁ。花染」
「私達はどうする?」
「そうだな、とりあえずまた何が来るかわからないから交代で見張りでもしておいてくれ」
「わかったわ」
「頼む」
「冷泉さん」
「??朝宮さん??」
「私達はどうしましょう?」
「朝宮さんは治療して疲れたでしょう。休んでていいですよ」
「あの私は...」
「佐織さんは橘さんたちと協力して見張りをお願いします」
「わかりました」
「樹は俺と一緒にいよう」
「うん!」
朝宮さんたちにそう告げ俺らは碓氷の拠点に向かった。
「さて、冷泉さん...でしたか?」
「...はい」
「さきほどはありがとうございました。素晴らしいスキルをお持ちの様で...」
「いえ...(そういえばこいつはあの時どこにいたんだ?)」
「お前はどこにいたんだ?」
「...はい?」
「ここにいる人たちが戦ったり、自分の子を守ったりとしているなかでお前はどこにいたんだ?」
「...私も戦っていました。いや~あの混乱でしたからね。私が何処にいたかなんて気づかなかったのは仕方のない事ですが...」
「...」
「...」
こいつの言っていることが嘘だということは月城が持っている[真実の目]がなくてもわかる。なにせこいつ...詐欺師だからな...
ピロン
[専用スキル【リサーチ】を発動します]
〈人物紹介〉
名前:碓氷 政(うすい つかさ)
年齢:27歳
加護:???
専用特性:詐欺師
▶詳細(観覧可能)
ポチッ
【詐欺師】
平気な顔で相手をだますことができる。相手が信じれば信じる程信頼感を得られ操り人形とかすことができる。逆に嘘がばれれば洗脳が解ける。
【罠仕掛け】
場所に罠を仕掛ける事ができる。使い道は様々。相手を落とすあり、逆に相手を信頼させることに使うこともできる。
【巧み】
相手を巧みにだます。話がうまければうまい程信憑性が高くなる。どんなあり得ない話でも信じさせることができる。
「(...やっぱり質の悪いな...詐欺師ってのは...)」
ピッ
【総合評価】
稀にみるプロの詐欺師。今までだましてきた数は数えきれない。人の良さとコミュニケーション能力が高いため周りは疑わない。信じさせるのは得意だが、相手は信じないことにしている。
「(信じさせるのに信じないか...)」
「それで?」
「??なんですか??」
「お前は俺達に何をさせたい...いや...させるんだ?」
「!!」
「...」
俺は黙って聞いていることにした。
「...やはり、あなたは騙せませんね...月城紅さん...」
「...」
「そうですね...あなたには私を守ってほしいんですよ」
「...守れだと?」
すると碓氷は人のいい笑顔から目を細め、意味深のある笑顔に変わった。いわゆる詐欺師の顔と言うやつだ。
「はい。今まで私が生き残るためにいろんな方たちを私を守るように仕向けてきましたが...最後まで生き残った者はいませんでした...」
俺と月城は黙って話を聞いていた。
「しかし、ここで月城紅...あなたに会うことができました」
「俺?」
「えぇ。あなたはこの世界の終わりに欠かせない人です。それゆえあなたはそこらの者たちより強い...あなたさえいてくれれば、私は安泰です」
笑顔を崩さず淡々と答える碓氷...
「それに...あなたもなかなか強いスキルをお持ちの様だ...」
碓氷は何を思ったのか俺の手に自分の手を重ねてきた。それになぜか月城は俺より先に碓氷の手を払ってくれていた。
「......」
碓氷は少し月城を睨んだようにみえたがすぐに何ともない顔をした。
「冷泉さん...先程も言ったようにあなたのそのスキルのおかげで此処にいる者たちほぼ全員が助かりました。これほど素晴らしいスキルを持ったものは今までいませんでした」
「......」
「それに...あなたは私と同じ感じがします」
「...どういうことしょう」
俺は冷静に答えた。
「私は人を信じさせるのは得意ですが、人を信じません。あなたも今は仲間と共に行動しているようですが...人を信じていませんね?」
「......」
俺は図星を突かれ黙った。
「ふふ。そういう点では私達は同じ立場の人間だと思いませんか?」
「...お」
「お前と一緒にするな」
「!?」
月城が口をはさんできた。
「一緒にするな...とはどういう事でしょうか?」
「こいつが人を信じていなくともお前みたいに人をだましてまで此処に辿り着いている訳では無い。こいつは自分の力でここまで来たんだ。人をだましてまで此処にきたお前と違ってな」
「...」
俺は正直驚いた。驚いて目を見開いてしまったほどだ。人にあまり感傷しない月城がここまで俺を庇うなんてゲームの中でもないからだ。
「...」
それは碓氷も同じようで目を見開いていた。
「あはは。貴方がそこまで言うなんて驚きだ。いや~そこは許してほしいですね。私も生きるのに必死でしたからね」
「ふん。だとしても、人を犠牲にすることは無いんじゃなかったのか?」
「ですが、私にはテイマー...と言ってもそんなスキルを持っている人がいるのかもわかりませんが、そんなスキルは持っていないので必然的にそうなってしまったんですよ。もちろん、そんなスキルがあったのなら人なんて使いませんよ。私はそもそも人を信じないのでね」
「......」
「......」
「そんな深刻そうな顔をしないでください。もちろん、月城さんのお仲間たちも素晴らしいスキルを持っているのは知っていますし歓迎します。冷泉さんのお仲間たちももちろん歓迎しますよ?もちろん、あなた方には何もしませんよ?」
こいつはそう言っているが、本当の所はわからない。月城の仲間は兎も角、俺と今行動を共にしている樹たちには俺達がいない間になにをするのかわからない。
「あ、私を信じていただくために考える時間は必要だと思うので、また後日お話を伺うことにしましょう。いい返事を待っていますよ?」
そう言って、碓氷は拠点から離れ月城と俺の二人になった。
「...月城」
「......」
「お前はもちろん今の話を完全には信じていないだろう?」
「...そうだな」
「...どうだ。ここは俺にまかせないか?」
「どうするつもりだ?」
「俺に考えがある」
「...まさかとは思うが、あいつを仲間にいれる気じゃないだろうな?」
「そのつもりだ」
「...!...なぜだ」
「詐欺師は気に入らないが、なぜかあいつはこっち側につかせた方がいい気がする」
「その根拠は?」
「わからない...強いていうならうまくあいつを使えば今後役に立つ可能性が浮かんだ...というところだ」
「...俺の時は断られて考えると言われたんだが...」ボソッ
「ん?なにか言ったか?」
「...いやなんでもない」
「...そうか...」
俺はこの時、月城たちさえ知らないある方法をして碓氷を味方にしようと考えていた。
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