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トルコ編〜イスタンブールの遊郭「ミラーボール」での日々〜
ハルさん
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そして、一ヵ月ぶりに客引きをやることになった夜。支配人室に呼ばれた私は、支配人から下記のような言葉をかけられた。
「あなたが、拒否をしなければあんなことにはならないから安心して」
「はい」
内心、抵抗しなくても「ヤる」ことは、分かっているのだから恐怖心が消えることはなかったがそれを言えば、支配人の態度が、これまでと一変することが、なんとなく分かったので、仕方なく従うことにした。ミラーボールに限らず、遊郭は、人の言うことを聞かないと、恨まれ、嫌われ、殴られるということが、あの事件からの一ヵ月間で、なんとなく分かってきたのだ。
ここで、可愛がられるのは素直ないい子だけ。素直ないい子は、性行為を拒まないし先輩の言うことを、いやでも従う。
正直、そういう考えになればなるほど、私の心は荒んでいるように感じた。
今日のお客様は、私より四歳上の二十歳。名前は、香月ハルさんと言う。お金持ちではなく、平凡な日本人の大学生だった。私は、その彼を見た瞬間、どこかで会ったような雰囲気になった。
「テッサちゃんは、どこの出身なの」
とても綺麗なギリシャ語で、そう聞かれたので私はとても驚いた。私は、もともとフランス人なので、フランス語しか話せなかったのだが、ヘルプになってからは、朝の時間にお勉強の時間があり、いろんな国の言葉を勉強することができるので、その時間を活用してフランス語の他に、トルコ語、ギリシャ語、英語を話せるようになっていた。
「フランスです」
ギリシャ語は、覚えたてで自信がなかったが私がそう答えると、相手は少しニコッとしてくれた。
「そうなの? 僕、フランスに語学留学にきているんだよ。今日は、プチ旅行がしてみたくて、イスタンブールにきたんだ」
「えぇ、そうなんですか!」
思わず、フランス語で、相づちをしてしまった。そして、それと同時に、久々にフランスのことを思い出して、少し悲しくなった。そんな私を見て、心配そうな顔で、流暢なフランス語を使い、ハルさんはこう聞いた。
「テッサちゃん。もしかして……会いたい人がいるの?」
「実は……」
さすがにお店なので皆までは、話せなかったが、言葉を選んでお父さんとお母さんの話をした。
「私や、エマがいなくなって、お母さんはきっと苦しい思いをしている。どうにかして、連絡を取りたいけど、お父さんに知られたくなくて、手紙も出さずに今日まで過ごしてきたの。残してきた、二人の妹のことも心配で。それに、お父さんだって、昔はあんなんじゃなかったから、どうしたらいいか分からないの」
「そうなんだね。それだったら、ぼくがお母さんに会って、君と妹ちゃんのことを話してきてあげるよ。お父さんにも、仕事を見つけてあげて、君の家族が幸せになれるようにしてあげるから」
「そんな……。悪いわ」
大学生の彼に、父の仕事の世話までさせたら悪いと思った。それに、今家族があの家にいるかも分からないのに、迷惑はかけれない。
「そして、結果を伝えに、またここにお酒を飲みに来たらお店は儲かるだろ? もちろん、テッサちゃんを指名するから」
内心申し訳ないと思いながらも、母や妹が心配だったので、彼を信用することにした。
「ありがとうございます! それじゃぁ、よろしくお願いいたします」
そうして、私とハルさんは、約束を交わした。ハルさんが、次にイスタンブールに来るのは、八月くらいだという。今は、五月なので三カ月待つことになるが、それでも良かった。だって、お母さんの安否が分かるのだから。
「あなたが、拒否をしなければあんなことにはならないから安心して」
「はい」
内心、抵抗しなくても「ヤる」ことは、分かっているのだから恐怖心が消えることはなかったがそれを言えば、支配人の態度が、これまでと一変することが、なんとなく分かったので、仕方なく従うことにした。ミラーボールに限らず、遊郭は、人の言うことを聞かないと、恨まれ、嫌われ、殴られるということが、あの事件からの一ヵ月間で、なんとなく分かってきたのだ。
ここで、可愛がられるのは素直ないい子だけ。素直ないい子は、性行為を拒まないし先輩の言うことを、いやでも従う。
正直、そういう考えになればなるほど、私の心は荒んでいるように感じた。
今日のお客様は、私より四歳上の二十歳。名前は、香月ハルさんと言う。お金持ちではなく、平凡な日本人の大学生だった。私は、その彼を見た瞬間、どこかで会ったような雰囲気になった。
「テッサちゃんは、どこの出身なの」
とても綺麗なギリシャ語で、そう聞かれたので私はとても驚いた。私は、もともとフランス人なので、フランス語しか話せなかったのだが、ヘルプになってからは、朝の時間にお勉強の時間があり、いろんな国の言葉を勉強することができるので、その時間を活用してフランス語の他に、トルコ語、ギリシャ語、英語を話せるようになっていた。
「フランスです」
ギリシャ語は、覚えたてで自信がなかったが私がそう答えると、相手は少しニコッとしてくれた。
「そうなの? 僕、フランスに語学留学にきているんだよ。今日は、プチ旅行がしてみたくて、イスタンブールにきたんだ」
「えぇ、そうなんですか!」
思わず、フランス語で、相づちをしてしまった。そして、それと同時に、久々にフランスのことを思い出して、少し悲しくなった。そんな私を見て、心配そうな顔で、流暢なフランス語を使い、ハルさんはこう聞いた。
「テッサちゃん。もしかして……会いたい人がいるの?」
「実は……」
さすがにお店なので皆までは、話せなかったが、言葉を選んでお父さんとお母さんの話をした。
「私や、エマがいなくなって、お母さんはきっと苦しい思いをしている。どうにかして、連絡を取りたいけど、お父さんに知られたくなくて、手紙も出さずに今日まで過ごしてきたの。残してきた、二人の妹のことも心配で。それに、お父さんだって、昔はあんなんじゃなかったから、どうしたらいいか分からないの」
「そうなんだね。それだったら、ぼくがお母さんに会って、君と妹ちゃんのことを話してきてあげるよ。お父さんにも、仕事を見つけてあげて、君の家族が幸せになれるようにしてあげるから」
「そんな……。悪いわ」
大学生の彼に、父の仕事の世話までさせたら悪いと思った。それに、今家族があの家にいるかも分からないのに、迷惑はかけれない。
「そして、結果を伝えに、またここにお酒を飲みに来たらお店は儲かるだろ? もちろん、テッサちゃんを指名するから」
内心申し訳ないと思いながらも、母や妹が心配だったので、彼を信用することにした。
「ありがとうございます! それじゃぁ、よろしくお願いいたします」
そうして、私とハルさんは、約束を交わした。ハルさんが、次にイスタンブールに来るのは、八月くらいだという。今は、五月なので三カ月待つことになるが、それでも良かった。だって、お母さんの安否が分かるのだから。
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