テッサ～私の遊郭物語～

トルコ編〜イスタンブールの遊郭｢ミラーボール｣での日々〜

イスタンブール編 プロローグ

　ミラーボールの朝は、4時に起床をし、表の掃除から始まる。その後、雑用をこなし眠りにつくのは、夜中の2時くらいだ。

    ミラーボールには、私と同じくらいの年齢の子たちがたくさん居たが、その子たちは幼少の頃から居るため、お客さん相手の｢ヘルプ｣をしていて、一人前にお客さんを取れるようになる｢客引き｣になる順番待ちの子もいるという。

　私たち姉妹の教育係は、十歳の「アメリアさん」という方になった。彼女は、貧しい農民の娘で、奉公で遊郭に出されているという。

｢三年経ったら家に帰れるから、客引きもヘルプもできないんだろうな｣

    これが、アメリアさんの口癖だった。ヘルプになれるのは、十六歳からで、そこから3年間はヘルプとして働き、見込みがあれば客引きになることができるという。

　見込みのないものは、万年ヘルプか国に返されるらしい。

　それを聞いた私は、家に帰されるのは嫌だから、客引きになれるように頑張ろうと心に決めた。

　実はこの時、ヘルプが何をし、客引きは何をするのかを知らなかった。このことは、のちに問題となるのだがそれは、また話すことにする。

　アメリアさんもほかの先輩方も、とても優しかったので、お父さんの暴力に苦しんでいたころと比べると、ミラーボールでの暮らしの方が、何倍も幸せだった。
 
　あの日までは……。