テッサ～私の遊郭物語～

フランス編～お父さんに売られた日～

ユースおじさんとイスタンブール遊郭｢ミラーボール｣

    馬車に乗り込んだ私たちは、駅まで行き電車に乗った。これからトルコのイスタンブールまで行くらしい。

   イスタンブールでの暮らしがどんなものになるのか分からないが、遊郭の暮らしなんて怖いに決まっている。

すぐにでも逃げ出したいくらいだった。
 

「おれもなぁ。金があればこんなことをしなくて済んだのに。すまなかったな。嬢ちゃんたち」

　電車の中で、人買いのおじさんはこう言いながら泣いていた。おじさんの名前は、ユース。

    ユースおじさんの奥さんは病気らしく、人買いで生計を立てなければ病気を治すほどのお金が手に入らないそうだ。


　本当は、子供好きのおじさんらしくイスタンブールに着くまでの4時間本当に親切にしてくださった。
 
（つぎは、イスタンブール。イスタンブールです）
 
　イスタンブールに着き、遊郭までは馬車で行った。
　この時ばかりは、おじさんも人買いらしく私たちに手荒に接してきた。

　しかし、おじさんの優しさを知っている私たちは、怖くなかった。それよりも、おじさんと別れなければいけないことが、辛かった。

 
「着いたぞ」
　私たちが連れてこられた遊郭「ミラーボール」は、この街では一番大きなところらしく、着いてすぐにきれいな着物を着せてもらうことができた。
 
「わぁ。かわいい！　エマ、すごく似合っているよ」
「おねえちゃんだって！」
　私たちが着替えている間に、おじさんは居なくなっていた。私たちとの別れが辛くなるかららしい。
 
　私たちは、この日から「見習い」として遊郭でさまざまな教養を磨くこととなった。