上 下
40 / 52
すごくヤバい特別講師とダンジョンで修行

ダンジョンでの寝泊まりの様子らしい

しおりを挟む
 ダンジョン、〈姫と騎士の密やかな逢瀬〉3階層の安全地帯で休憩中の俺と生徒達。

 ここは洞窟状の3層の中でも後半、つまり4層に近い部分にあるスペースで、俺や従魔に加え、40人近い生徒達が集まると少し手狭な場所だ。


 そしてお泊まりの際に重要な水場は、4層入り口近くの魔物がいた元安全地帯か、1層の奥の方にしか無いらしい。
 そして4層は黒騎士が様子を見た所、倒しても魔物がすぐに出てくるから危険とのことで、水をあまり持って来れなかった生徒は1層まで補給に行くこととなった。
 尚、その際には安全のため、5人以上での団体行動を心掛けるよう黒騎士から言われている。


 俺とキィナは、俺の背中に大量に積まれた荷物の中に水の入った樽が2つあるから1日くらいは問題ない。容量は合わせて多分40㍑くらい。

 ...キィナさんや、やっぱりグリ使い荒くない?
 年老いたグリフォンでも牛や馬とかの家畜を持ち上げられるから、これは信頼の証だって?
 俺、もうすぐ生後2年くらいで一応子供なんだけどな...。

 因みに俺は1日樽1杯分くらいは水分要るけど、水魔法で補っても良いんだぞ?
 水魔法の水はあんまし美味しくないけど、旅の途中はよく飲んでたし。


 話は逸れるが、俺は巣立ち後1年間の旅で、縄張りを持たず狩りをし続けてレベルを上げまくった結果、大人と殆ど変わらない体型や並のグリフォンを凌ぐ強さを持ってたりする。ぶっちゃけ今なら親より強い筈。

 だが年は2歳もない。あいあむあショタグリフォン。

 俺の自称子供発言に、キィナかすっごく納得いかなそうな顔をしているが、事実だ。


 ...あれ?そういやグリフォンって何歳で大人なんだ?




 さて、黒騎士さんからのお話タイムだ。4層の安全地帯で休憩することができず予定が少し狂ったが、今日はこの3層の安全地帯で夜営をし、明日は危険地帯と化した4層を越え、最終層である5層でボスを倒す予定である、ということらしい。

 そして、ボス部屋の奥にあるダンジョンコアとやらを見て、今回の異変の原因を探すんだとか。

 黒騎士が先ほど4層を偵察してきた時の様子だと、本来このダンジョンでは出ない魔物が多く出ており、生徒達は苦戦するかもしれないとのことだ。

 なので、皆の荷物はこの3層の安全地帯に置いていって、帰りに回収していくとのこと。流石に荷物を持ったままで、危険な4層へ踏み込む訳にはいかないからな。

 キィナ以外の皆は喜んでいる。重い荷物から解放され喜ぶ皆と、ほぼ全ての荷物を俺に積んでいたキィナは、背負った鞄から保存食を摘まみ食いできなくなり、落胆するという現象が起こったりしたが、どうでもいいな。




 夕飯の時間、各々用意した保存食や道中狩った肉を好きに食べていいと聞き、歓喜するキィナと俺や一部生徒達。

 虹色にはなれないけど、鷲の頭をグルグル回して、テンション上がってる感を出す俺。

 久々のPartyグリフォンであるが...うーん、勢いのあるBGMが欲しい。取り敢えずこういうネタは勢いと音圧でごり押せば笑いが取れると思ってるからな、俺は。


 キィナに飯は何にするか聞いて見るも、逆に聞き返された。俺が作る流れみたいだ、解せぬ。

 試しに、オークの生肉に噛り付きながらキィナにも生のまま渡して見る。
 流石に拒否られた。良かった、人間性はまだ残ってる。


 試しに料理でイキって見ようと、水魔法で両前足を洗って後ろ足で立ちながら、オーク肉をぐちゃぐちゃの挽き肉にする。
 卵とパン粉を荷物から探してみる...パン粉は無かったが小麦粉と卵ならキィナの荷物にあった。なんであるし。てか、卵とか割れそうな物入れんなし。

 卵を前足で器用に割り、卵と小麦粉と潰した肉と混ぜる。あと塩胡椒...塩しかなかった。まぁいいや。それも入れる。

 玉葱は流石に無かったが、何故か牛乳はあった。キィナが好きらしい。でも身長も胸部も...あだだ、羽毛を抜くんじゃない。
 どうやらキィナをディスると、俺の羽毛を抜くのがお決まりのパターンになってきているらしい。困ったものだ。

 色々混ぜて出来た肉塊を味見する。うん、塩加減は悪くない。
 その肉塊を2つに分け、大きく人間の顔くらいのサイズに平たく雑に丸めて、後はフライパンで焼く。
 フライ返しが無いから、俺の硬くて大きい翼部分の羽を数枚抜いて洗ってから、それを重ねて持ってフライ返し代わりにした。すぐ生やせるのでご安心を。


 焼き上がったけど、なんだかんだ色々足りないしソースも無い。
 適当に残り汁に塩追加し、少し煮詰めて上から掛けとく。

 色々と足りないけどハンバーグもどきの完成だ。ドヤ顔してたら、いつの間にか1つ無くなってる。
 キィナの顔がめっちゃ膨れてる。こいつ、まさか一口で...!?そんなに見たって、もう1つはやらんぞ!これは俺のだ!

 思わず両前足で、ハンバーグもどきを抱えて天井近くまで飛びながら食べた。
 うん、パン粉の代わりに小麦粉を使ったからか少し違和感あるのと、少々味が足りない感。でもただの焼き肉とは違った旨さがあっていいと思う。(雑な食レポ)

 周りからハンバーグだ、という声がチラホラ聞こえる。貴族生徒の皆さんは、ハンバーグという料理は知っているらしい。
 この異世界でもハンバーグが存在していたのか、元いた世界の転生者が俺みたいにイキって持ち込んだのか?知らんけど。


 キィナがもっと作れとせがんできた。けれども、グリフォンは普段は大食いだが、一度多く食べれば、暫くは大丈夫で、しかも昨日沢山食べといたので断る。
 俺の前足、料理しにくくて無駄に疲れるし、料理はお前ら人間の専売特許だろ。

 暫く駄々を捏ねられたが、諦めて保存食を貪り始めるキィナ。こいつ、俺といるときは肉を食いまくってるが、普段の家とか学校では何をどれくらいの量食ってるんだろうか...?

 因みに周りの生徒はシンプルに肉を焼いたり、保存食を食べたりしてる。うん、普通だ。ダンジョンで凝った料理する奴は流石におらんか。

 ダンジョンで食を求めるのは間違っているだろう、と思う。




 食後の寝る前の少し空いた時間。狩り以外は自由にして良い空き時間になったんだが、生徒が黒騎士に色々と質問したりしてるっぽい。
 キィナと時のような質問もあり、少しヒヤヒヤしたが、中でも黒騎士の名前を教えて欲しいという話題は少し気になったので、ちょいと耳を傾けて盗み聞きしてみる。

 だけど黒騎士は名前を教える事を勿体ぶるかのように、〈鑑定〉のスキルでも使って覗いてみるといい、なんて言ってる。
 周りの残念そうにしている様子をみると、鑑定のスキルを持っている生徒はいないらしい。

 鑑定ってレアなスキルなのかな?本人がして良いって言ってるし、遠慮無く黒騎士を鑑定してみることにした。


rbl/@b0
名me:kra
syzk:mgzuk
sok業:krのkdosybrkinbstgider
tiry:r-,0
mry:/-o0(~o-k0)
kgk:r0o-(:b-e:)
bugo:g-,-
mjg:@j-0(~lo0.)
mbgy:l,.0
hys:@t-,-

ー力の差がありすぎる為、これ以上鑑定を継続できませんー
ー強制終了しますー


 「キュアェ!?」


 うぉあぇ!?なんだこれ!?つい声出しちまったぞ!パソコンのバグみたいで恐いじゃねぇか!
 しかも俺が鑑定した瞬間、黒騎士がギュンッ!て音がなるくらいの速度でこっち見てきたぁ!兜と鎧の接合部火花散ってるぅ!?

 あ、しょんべんチビりそう...






 「すまない、驚かせてしまったようだな...まさかグリフォンが鑑定を使えると思わなくてな、私も少々驚いてしまった。」


 と、黒騎士が謝ってくれた。こちらも声を掛けずに鑑定したことを頭下げて謝る。意図は通じないだろうけど、気持ちの問題だ。

 それを見たキィナが俺に対して「鑑定使えるの!?」と驚きまくってる。
 あれ?言ってなかったか?...言ってなかったわ。親鳥にしか直接言ったこと無かったな、すまん。

 あ、でも俺に攻撃してきたドリミドールの兵士の奴は知ってるかもしれない。鑑定で挑発しまくったし。


 黒騎士が鑑定結果を聞いてきたので、数字や文字がめちゃくちゃで訳が分からなかったことを、キィナ経由で伝えておくと「やっぱりか...」と考え込んでいる様子。
 過去にも鑑定された時に、同じような結果になったのかな?


 でもおかしいな...生まれたばかりの頃に.親のステータス見ようとしたら力の差があるからと、鑑定結果すら出なかったのに...

 あの時の俺と親鳥の力の差が、今の俺と黒騎士の時より大きかったのか?
 それか何らかの方法で親鳥は鑑定を弾いたのか...うーむ、自分が鑑定されたこと無いからよくわからない。

 鳥頭は考えることを止めた。




 この後は何事もなく、生徒達は交代で見張りを行い就寝することになった。
 俺はスフィンクスみたいな姿勢で地べたに寝て、キィナはその俺の背中で羽毛に埋もれて寝た。

 見張りの順番が来た時には俺から出て、しっかり見張りをしてたからまぁ、問題はないだろう。




 どうやら俺は寝袋として優秀、らしい。

_____________________

○グリフォンは5年くらいで大人になる。そして100年近くは生きる。

○鑑定の所有者は少ない。異世界から来たとされる人物が、何故かよく持っているスキル。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

俺の娘、チョロインじゃん!

ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ? 乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……? 男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?  アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね? ざまぁされること必至じゃね? でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん! 「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」 余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた! え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ! 【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生墓守は伝説騎士団の後継者

深田くれと
ファンタジー
 歴代最高の墓守のロアが圧倒的な力で無双する物語。

ピンクの髪のオバサン異世界に行く

拓海のり
ファンタジー
私こと小柳江麻は美容院で間違えて染まったピンクの髪のまま死んで異世界に行ってしまった。異世界ではオバサンは要らないようで放流される。だが何と神様のロンダリングにより美少女に変身してしまったのだ。 このお話は若返って美少女になったオバサンが沢山のイケメンに囲まれる逆ハーレム物語……、でもなくて、冒険したり、学校で悪役令嬢を相手にお約束のヒロインになったりな、お話です。多分ハッピーエンドになる筈。すみません、十万字位になりそうなので長編にしました。カテゴリ変更しました。

友人に可愛い女の子紹介してって言ったら、グリフォンを紹介されました

鯨井イルカ
恋愛
 可愛い恋人を求める主人公の佐藤ヒロシが、友人の山本アツシに若干ずれた女の子(?)たちを紹介される、短いラブコメディ。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...