82 / 97
第2章
ホワイトデー1
しおりを挟む二回目の慰霊の日からも、シェイド様は忙しいままでなかなかお会いできなかった。
朝ごはんぐらい一緒にと思っても既にいない事の方が多い。
その代わり、グラセン騎士団の人が側にいてくれる事が増えた。
「姫ちゃ~ん!おじさんこの日を待ってたよぉおお!!!なっかなかシェイドがおじさんを入れてくれないから拗ねちゃう所だった!」
今日は叔父様の日だった様で、朝からハイテンションの叔父様と対面している。
公爵邸の中庭で朝からお茶会なんて、贅沢だなと思う。
「叔父様、この前は自己紹介もせず、失礼致しました。リリ・ユウキと申します」
カーテシーもだんだん様になってきた。
ケイトさんはわりとスパルタなんだよね。
すぐ横で、満足気な顔をしているケイトさんが見れたので、合格点だった様だ。
「ヴァルド•グラセンだよ~!シェイドの父方の叔父だね。ひめちゃんのばあやがずっとうちで働いていたから、おじさんの事を聞きたかったらメイルに聞けばなんでもわかるよ!さぁすわろうすわろう!」
「ばあやが?」
「うん、そこの侍女も昔うちの子だった子だね~、ケイト君、久しぶり。大出世だねぇ」
「お久しぶりにございます。その節はお力添えを頂き、ありがとうございました」
ケイトさんが頭を下げる。
「叔父様も、推薦状を下さったんですか?」
「そうそう、ダメ元でも挑戦したいって言うからね~、シェイドとおじさんの分で審議にかけてもらったんだよ~。まさか聖主猊下まで出てくるとはね~」
「ありがとう、ございます。ケイトさんがいなかったら、私……」
「いやいやおじさんは書類一枚書いただけだよ。あの頃のシェイドは常に目が座ってて怖かったけど、丸くなって良かったよ」
「目が……?シェイド様、何かに怒ってたんですか?」
「姫ちゃんを手放したのが余程こたえたんじゃない?馬鹿だよね」
————「おい。うっせぇぞ、おっさん」
「シェイド様!!!わわっ、お帰りなさい!」
私がガタンと席を立つと、琥珀色の瞳を細めて笑ってくれる。
なかなか会えない私の好きな人が、今日もかっこいい。
「おっさん、俺が変わるからもういいぞ。アランが稽古してほしいってよ」
「嘘……だろ………………五分もいなかったぞ!!姫ちゃんの護衛やらせろ!!拒否する!!!!」
割と本気で拒否しているらしい叔父様が、大声で抗議していて笑ってしまう。
「ヴァルド殿!よろしくお願いします!!!」
「うっっわっ!わんこ君連れてきちゃったの!?ぐっ、曇りなきまなこ!!やめろっっっ!見るなっっ!!」
「アラン、連れてけ」
「はい!姫様、失礼いたしました!」
「あ、うん?またね」
大柄の叔父様をアラン君がズルズル引っ張っていく。
最後まで喚いていたけれど、どこかに移転で消えていった。
アラン君、いつから移転できる様になったんだろ、初めて見たな。
「シェイドさま?今日は一緒にいてくださるんですか?」
「ああ、俺が護衛する」
「わぁ!嬉しいです!!もっとおしゃれすれば良かった……」
やった!やった!!
「十分だよ」
さっきまでヴァルド叔父様が座っていた席に座ると、ケイトさんが新しく入れたお茶を優雅にのんでいる。うぅ、かっこいい。
「私が何かまずい事をしたから、シェイド様また忙しくなっちゃったんですか?」
「リリは……魔熱の治療をしたいか?」
シェイド様は私の質問に質問で返してくる。すごくずるいと思う。
「それは……困ってる人がいるなら……したいです。私でも、できる事があって、嬉しいですから」
濃い琥珀色の瞳がじっと私を見る。
「じゃあまずはグラセンの騎士達で比較的症状の重いものだけ集めるから、治療、してくれるか?」
「はいっ!がんばります!」
「頑張らなくてもいい。グラセンの騎士を癒してくれるのは、正直助かる。長年苦しんでいる者もいるからな」
「ひどいんですか?」
「今のグラセンにはリリのおかげで魔獣が出ないから、リリの来る前からの患者が大半だ、この前のやつほどひどくはない」
「この前の人は、グラセンの人じゃないんですね」
「あぁ、魔獣もあいつも他領に行って探してきた」
「良くなりました?彼」
あの、灰色オオカミみたいな人、どうなったのか魔力枯渇のせいで見れていない。
「ピンピンしてたよ、おまえに会わせろってうるせえからすぐ送り返した」
「良かった……」
「次からはベールで顔を隠して欲しい」
やっぱりね、そんな気はしてたんだよねぇ。
「はい」
「いいのか?嫌がるかと……」
「その方が護衛しやすいとかですよね、しょうがないです」
「…………………………」
「シェイドさま、このチョコレートすごく美味しいんです、召し上がりませんか?」
「ん?あぁ……甘いのは、いい」
なんだか気まずくて、無理やり話題を変えると、思った通りの返答が来て笑ってしまう。
「ふふふ、お菓子いつも全然食べないの気づいてました」
「甘すぎだろ、リリの食ってるのは」
「そうです?このチョコレートすごくおい……?え?チョコレート!?」
「なんだ、どうした?」
「バレンタイン!!!!シェイド様に渡せなかった!!!うそでしょ……」
「?橘邸の奴らが渡してきた荷物か?」
「シェイド様、それどうしました!?」
「部下が食ってた」
えぇ!?婚約者に渡されたバレンタインチョコ、この人絶対お返しとかしないよね!?
非常にまずい!!
「誰からとか書いてませんでした!?」
「俺は見てないけど、何かあるのかもしれないっつってクリフがまとめさせてたと思う」
「クリストフさん、ナイス!!!!」
「なんなんだ……」
442
あなたにおすすめの小説
想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…
宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。
いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。
しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。
だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。
不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。
差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、
彼女は“自分のための人生”を選び初める。
これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる