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第1章
バラ園で1
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王城に来て一週間が経った。
ケイトさんが来てくれた事でドレスやヘアセットがバージョンアップした。
仕事のできる人で(なんならちょっと社畜臭がする)、令嬢シスターズ三人よりケイトさん一人の方が多くの物事が回っている気がする。
「侍女一人なのは初めてですが、こんなにも!こんなにもっっ!!楽しいとは!!思いもしませんでしたわ!!それにお嬢様は着飾りがいがあって最高でございます!!こんなホワイトな職場、もう離れられません!!」
部屋付きのメイドさんも使って、自分の裁量で全てを回せているご本人はなんだか満足そうなので、深く突っ込まない事にしている。
一応私の部屋には毎日お見合い写真のように推薦状が来ていたけれど、侍女はもういらないし、手にする事も無かったら最近はテオ君がそのまま処分してくれているようで私の所までこなくなった。
「わぁ、今日もとびきり美しいね、僕の天使は」
今日の私はレースを繋げた生地で出来たエンパイアラインのドレスを着ている。
ケイトさんがお揃いのレースを首でリボン結びにしてくれて、ヒラヒラと背中で長く揺れているのが可愛らしい。
「カイウス殿下、ごきげんよう」
カイウス殿下の歯の浮く様なチャラい挨拶にも慣れてきたし、ごきげんようなんてセリフも言える様になった。
(ケイトさんに、こんにちはから矯正された)
少しづつちゃんとした生活になって来たと思う。
誘われれば王家の方と晩餐もするし、お茶会もする。
特に妹殿下のエルスウィーズ様とはお友達になって、たまに午後のティータイムに誘って下さってすごく楽しい。
今日もこれからエルスウィーズ様と庭園でお茶会だ。
庭に出るだけなのに、カイウス殿下はエスコートの為に来てくださっている。
暇なのかな、第一騎士団。
◇◆◇
「リリ様!!」
バラ園に向かって伸びる小道を歩くとしばらくして大きな造りのガゼボが現れ、エルスウィーズ様が立って迎えてくれた。
「では僕はこれで。終わる頃にお迎えに上がるよ」
「お兄様ったら珍しくデレデレしちゃって、舞い上がっててみっともないわ」
カイウス殿下が去った方に向かってエルスウィーズ様が言ったので笑ってしまう。
「いつもああじゃないんですか?」
「女性に対してはわりと飄々としてるわよ。まぁ、そうしないと女性の方がのぼせ上がってしまって大変だからってのもあるわね」
「おモテになりそうですものね」
「そうね、否定はしないわ。リリ様は……もうリリって呼んでもいいかしら?お友達になりたいの。私のことは、エルと呼んでくれる?」
「わっ!嬉しい!私、歳の近いお友達がいないから」
「そんなの、私もよ。取り巻きはいるけど」
二人でカラカラと笑う。
こんな事、元の世界でも無かった。生きるのに必死すぎて。
「ね!すわって!今日はマカロンを焼いてもらったの!ケーキも沢山よ!お兄様ばっかりリリをかまってずるいわ!私ともおしゃべりしましょう!」
「うん!嬉しい……!」
妹殿下のエルは私と同じ十九歳だ。
水色のまっすぐな髪の美少女で、意思の強そうなお顔立ちだ。
「ダンスのレッスンが始まったのでしょう?お披露目の舞踏会に間に合いそう?」
「全然ダメ。私、運動音痴だし。マナーはなんとかなってもダンスだけはダメそう」
「まぁ、無理にとは言わないわよ。リリのお披露目がメインだからね」
「お披露目会は無理でも、レッスンは続くんでしょう?」
「そりゃあね。リリが踊れないままじゃ、殿方達が可哀想だわ」
「エルは誰と踊るの?」
「私?わたしは……」
エルの目線が泳いだ先を見やると、バラ園の端の入り口で警備についている二人の若い騎士がみえた。第二騎士団の紺色の制服を着ている。
「まさか……シェイド様……?」
第二騎士団のイケメンといったらシェイド様!まさかここにもファンが!!
「はぃ?私がシェイド兄様と!?なんでよ!全令嬢から恐れられてるのよ、シェイド兄様は」
「シェイド兄様……?」
「シェイド兄様の亡くなったお母様は、父上の妹なの。だから私達は従兄弟の間柄ね。私は小さい頃からシェイド兄様と遊んでいたから怖くは無いけれど……、優しい人なのに、二十六まで独身よ、そりゃああの容姿は皆んな怖いもの。鋭いお顔と、何より黒持ちだから。」
「え!シェイド様って二十六歳なんですか!!
わぁ、新情報!!嬉しい!!」
「リリ……あなたまさか…………」
ここでケイトさんが新しい紅茶を注いでくれた。すっごくニコニコしてるのはスルーしよう。
「だ、だって、すっっっっっごく、かっこいいもの、シェイド様」
「落ちた時に頭を打ったの?」
「なんでエルには分からないの、あの人外レベルのかっこよさが」
「ケイトだったかしら、リリは病気なの!?」
「お嬢様は通常運転でございます」
「私付きの腕のいい医者がいるわ」
「不要にございます」
ケイトさんは綺麗な所作で一礼すると、エルの紅茶も継ぎ足した後、また少し下がって控える。
令嬢シスターズとは違う洗練された所作に、本物の侍女って美しいんだなとふわふわ考える。
「私がシェイド兄様を好きになる事なんてウェンザがひっくり返ったって無いわよ!!」
「妹同然の奴が何いってんだ」
——その時、懐かしい低い声がした————
ケイトさんが来てくれた事でドレスやヘアセットがバージョンアップした。
仕事のできる人で(なんならちょっと社畜臭がする)、令嬢シスターズ三人よりケイトさん一人の方が多くの物事が回っている気がする。
「侍女一人なのは初めてですが、こんなにも!こんなにもっっ!!楽しいとは!!思いもしませんでしたわ!!それにお嬢様は着飾りがいがあって最高でございます!!こんなホワイトな職場、もう離れられません!!」
部屋付きのメイドさんも使って、自分の裁量で全てを回せているご本人はなんだか満足そうなので、深く突っ込まない事にしている。
一応私の部屋には毎日お見合い写真のように推薦状が来ていたけれど、侍女はもういらないし、手にする事も無かったら最近はテオ君がそのまま処分してくれているようで私の所までこなくなった。
「わぁ、今日もとびきり美しいね、僕の天使は」
今日の私はレースを繋げた生地で出来たエンパイアラインのドレスを着ている。
ケイトさんがお揃いのレースを首でリボン結びにしてくれて、ヒラヒラと背中で長く揺れているのが可愛らしい。
「カイウス殿下、ごきげんよう」
カイウス殿下の歯の浮く様なチャラい挨拶にも慣れてきたし、ごきげんようなんてセリフも言える様になった。
(ケイトさんに、こんにちはから矯正された)
少しづつちゃんとした生活になって来たと思う。
誘われれば王家の方と晩餐もするし、お茶会もする。
特に妹殿下のエルスウィーズ様とはお友達になって、たまに午後のティータイムに誘って下さってすごく楽しい。
今日もこれからエルスウィーズ様と庭園でお茶会だ。
庭に出るだけなのに、カイウス殿下はエスコートの為に来てくださっている。
暇なのかな、第一騎士団。
◇◆◇
「リリ様!!」
バラ園に向かって伸びる小道を歩くとしばらくして大きな造りのガゼボが現れ、エルスウィーズ様が立って迎えてくれた。
「では僕はこれで。終わる頃にお迎えに上がるよ」
「お兄様ったら珍しくデレデレしちゃって、舞い上がっててみっともないわ」
カイウス殿下が去った方に向かってエルスウィーズ様が言ったので笑ってしまう。
「いつもああじゃないんですか?」
「女性に対してはわりと飄々としてるわよ。まぁ、そうしないと女性の方がのぼせ上がってしまって大変だからってのもあるわね」
「おモテになりそうですものね」
「そうね、否定はしないわ。リリ様は……もうリリって呼んでもいいかしら?お友達になりたいの。私のことは、エルと呼んでくれる?」
「わっ!嬉しい!私、歳の近いお友達がいないから」
「そんなの、私もよ。取り巻きはいるけど」
二人でカラカラと笑う。
こんな事、元の世界でも無かった。生きるのに必死すぎて。
「ね!すわって!今日はマカロンを焼いてもらったの!ケーキも沢山よ!お兄様ばっかりリリをかまってずるいわ!私ともおしゃべりしましょう!」
「うん!嬉しい……!」
妹殿下のエルは私と同じ十九歳だ。
水色のまっすぐな髪の美少女で、意思の強そうなお顔立ちだ。
「ダンスのレッスンが始まったのでしょう?お披露目の舞踏会に間に合いそう?」
「全然ダメ。私、運動音痴だし。マナーはなんとかなってもダンスだけはダメそう」
「まぁ、無理にとは言わないわよ。リリのお披露目がメインだからね」
「お披露目会は無理でも、レッスンは続くんでしょう?」
「そりゃあね。リリが踊れないままじゃ、殿方達が可哀想だわ」
「エルは誰と踊るの?」
「私?わたしは……」
エルの目線が泳いだ先を見やると、バラ園の端の入り口で警備についている二人の若い騎士がみえた。第二騎士団の紺色の制服を着ている。
「まさか……シェイド様……?」
第二騎士団のイケメンといったらシェイド様!まさかここにもファンが!!
「はぃ?私がシェイド兄様と!?なんでよ!全令嬢から恐れられてるのよ、シェイド兄様は」
「シェイド兄様……?」
「シェイド兄様の亡くなったお母様は、父上の妹なの。だから私達は従兄弟の間柄ね。私は小さい頃からシェイド兄様と遊んでいたから怖くは無いけれど……、優しい人なのに、二十六まで独身よ、そりゃああの容姿は皆んな怖いもの。鋭いお顔と、何より黒持ちだから。」
「え!シェイド様って二十六歳なんですか!!
わぁ、新情報!!嬉しい!!」
「リリ……あなたまさか…………」
ここでケイトさんが新しい紅茶を注いでくれた。すっごくニコニコしてるのはスルーしよう。
「だ、だって、すっっっっっごく、かっこいいもの、シェイド様」
「落ちた時に頭を打ったの?」
「なんでエルには分からないの、あの人外レベルのかっこよさが」
「ケイトだったかしら、リリは病気なの!?」
「お嬢様は通常運転でございます」
「私付きの腕のいい医者がいるわ」
「不要にございます」
ケイトさんは綺麗な所作で一礼すると、エルの紅茶も継ぎ足した後、また少し下がって控える。
令嬢シスターズとは違う洗練された所作に、本物の侍女って美しいんだなとふわふわ考える。
「私がシェイド兄様を好きになる事なんてウェンザがひっくり返ったって無いわよ!!」
「妹同然の奴が何いってんだ」
——その時、懐かしい低い声がした————
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