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99話 怪物の心臓
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ニアの強さをよく知っている3人は、ほっとした顔で互いを見つめ合う。
しかし、胴体を射抜かれたはずのカルツは何故か未だに生きていた。地面に倒れていたにも関わらず、カルツはすぐさま起きて低くうなる。
「ぐ、ぁ……!!きっ、さまぁ……!!」
「……え?」
そして、次に聞こえてくる話し声に3人の目が丸くなる。
喋った……?どうやって?カルツはグールになったはずなのに?
「その、力ぁ……!ぐるっ、ぐるぅあああ!!あ、くま……!!」
「…………………」
「きっさまの、せいだ……!!すべては、きさまの……ぐぁああ!!あくま、あくまぁあ……!!きひっ、きひひひひっ!!」
「………え?」
「きひゃはははは!!!」
……様子がおかしい。さっきまで罵っていたくせに、なんで急に笑い始める?
ニアは一瞬で不愉快になり、さらに目を細めて魔力を汲み上げる。
カルツは自分に向かって言っているように見えたけど、違う。自分を見てはいるけど、語り掛けている対象は己の一番大切な人―――カイに語り掛けているようだった。
「……カルツ、あなた」
クロエもうっすらとその気配を感じたからか、次第に険しい顔になる。
カルツが普段からカイに見せた敵意を知っているからこそ、残りのブリエンやアルウィンも察することができた。
このとち狂った憤怒の、行き先を。
「きひっ、きっ………お前が、いなかったら……!!おれが、おれがぁああ!!!」
「…………………」
「カイ、カイぃいい!!カイカイカイカイカイ!!!!貴様さえ、殺せば……!!そうすれば、まだ!まだ、ぐるっ、ぐ、ぐぅう……と、取り戻せ………!」
そして、自らその醜い嫉妬を告白したところで。
ニアの目からは完全に、温度が無くなる。
「元の、運命を……!!俺の、未来―――ぐはぁっ!?!?」
「……黙って」
赤い目が怒りに染まり、少女の体からは息が詰まるほどの威圧感が放たれる。その姿のまま、彼女は黒い槍でカルツのお腹を串刺しにした。
大切な人が侮辱されて平気でいられるほど、ニアの愛は薄くない。
「もう一度カイの名前を口にしたら、ズタズタに千切る」
「ぐ、ぁ………!!」
「この世界の主人公は、あなたじゃない。この世界の主人公は、カイ」
この世界の運命。
元の世界の運命と未来。カイの役目、カルツの元の役目。案内人の正体と目的まで。
それを全部聞いたからこそ、残りの3人はニアの言葉に反発しなかった。第一、彼女たちも分かっているのだ。
カルツが主人公として活躍する世界の運命が、どれだけ悲惨なものなのかを。
「ぐ、ぐぅぅ……!!ころ、すぅ………!!」
体に穴が空いたにも関わらず、カルツが黒魔法の槍を無理やり引き抜くと同時に穴が埋められる。さっきと同じ現象だった。
そして、見事に再生したカルツはまたもや飛び掛かってくる。聖剣の剣先はニアを狙っていた。
彼女がカイと似たような力を持っているからだろう。しかし……!
「オーラウォール!」
「クレセントショット!」
「シャドウ・ダンシング!」
元仲間だった3人に行方を阻まれ、カルツは獣が鳴くような声を上げる。聖剣は神聖魔法のドームにヒビだけを残し、矢を躱す隙に背中をナイフを刺されてしまった。
「ちっ、また再生……!アルウィン、バフお願い!!」
「は、はい!!ヘイスト!!」
にもかかわらず、まだ元気なカルツを見て、クロエはもう一本のナイフを取り出す。
「じゃま、するな!!」
「あなたがこの世界の邪魔だっての!!このクソ勇者!!」
間もなくして繰り広げられる、激しい激戦。
アルウィンのバフのおかげか、クロエは完璧にカルツのスピードに追い付けていた。2本のナイフが聖剣にぶつかり、それだけでも大量の魔力が吹き出る。
互いの体を剣で抉ろうとする、切迫な戦い。それを見て、ブリエンはニアに振り向く。
「このままだとキリがないわ!!あの体が再生する能力も、どうせ黒魔法の類でしょ!?ニア、何か心当たりはないの!?」
「……違う、黒魔法じゃない」
「え……!?ど、どういうことなのよ!カルツの体をあんな怪物にできたのは黒魔法の効果でしょ?なのに……!」
「あれは、違う」
何度も首を振った後に、ニアはぽつりと言葉をこぼす。
「あれ、生命力」
「………え?」
「心臓から、人為的な生命力が流れて傷口を塞いでいる。私たちが狙うべきなのは、心臓」
ニアの淡々とした説明を聞いてようやく合点が行ったのか、アルウィンが手を打つ。
「そうです!あれは、カイさんが前に持ってきたキューブの生命力!!だから、魔力視野でも上手く感知できなかったんだ……!!」
「キューブって……まさか、生命力を閉じ込められるという……」
「そうです、マテリアルキューブ!!それを体に無理やりねじ込んで、死なない体にしているんじゃないでしょうか。でも、ここまでの再生能力があるってことは―――」
「心臓自体が、巨大なキューブになっている」
一瞬、クロエとカルツの距離が離れた瞬間に。
ニアはもう一度黒い槍を召喚させて、カルツの胴体を狙う。
「ぐるっ!?!?」
今度は心臓を狙ったはずだが、カルツはかろうじて槍の軌道をずらし、肩辺りが刺されるように仕向ける。
その隙に、荒い息を吐きながらクロエが合流した。
「ふぅ、ふぅ……!!ダメだった、小さい傷は即回復してしまうの!あいつを倒すためには、なんらかの決め手が必要よ!!」
「……ニアさん、さっき巨大なキューブといいましたよね?」
「うん。そして、さっき槍を飛ばした時、カルツは明らかに胸元だけは守ろうとした。怪しい」
「え……?あ、そういえば、確かに胸元をずっと意識してたかも!」
「………じゃ、攻略する箇所は決まったわね」
ブリエンの言葉と共に、4人が頷く。
カルツの胸元。生命力が溢れているキューブを取り除いてしまえば、ヤツは死ぬはず。
「でも、決め手ってどうやって――――」
「わたし、考えがある」
そして、またもやブリエンがなにかを言い出した時。
ニアはその言葉を遮りながら、赤い目を光らせながら言う。
「あの聖剣を、ヤツの心臓に刺せばいい」
しかし、胴体を射抜かれたはずのカルツは何故か未だに生きていた。地面に倒れていたにも関わらず、カルツはすぐさま起きて低くうなる。
「ぐ、ぁ……!!きっ、さまぁ……!!」
「……え?」
そして、次に聞こえてくる話し声に3人の目が丸くなる。
喋った……?どうやって?カルツはグールになったはずなのに?
「その、力ぁ……!ぐるっ、ぐるぅあああ!!あ、くま……!!」
「…………………」
「きっさまの、せいだ……!!すべては、きさまの……ぐぁああ!!あくま、あくまぁあ……!!きひっ、きひひひひっ!!」
「………え?」
「きひゃはははは!!!」
……様子がおかしい。さっきまで罵っていたくせに、なんで急に笑い始める?
ニアは一瞬で不愉快になり、さらに目を細めて魔力を汲み上げる。
カルツは自分に向かって言っているように見えたけど、違う。自分を見てはいるけど、語り掛けている対象は己の一番大切な人―――カイに語り掛けているようだった。
「……カルツ、あなた」
クロエもうっすらとその気配を感じたからか、次第に険しい顔になる。
カルツが普段からカイに見せた敵意を知っているからこそ、残りのブリエンやアルウィンも察することができた。
このとち狂った憤怒の、行き先を。
「きひっ、きっ………お前が、いなかったら……!!おれが、おれがぁああ!!!」
「…………………」
「カイ、カイぃいい!!カイカイカイカイカイ!!!!貴様さえ、殺せば……!!そうすれば、まだ!まだ、ぐるっ、ぐ、ぐぅう……と、取り戻せ………!」
そして、自らその醜い嫉妬を告白したところで。
ニアの目からは完全に、温度が無くなる。
「元の、運命を……!!俺の、未来―――ぐはぁっ!?!?」
「……黙って」
赤い目が怒りに染まり、少女の体からは息が詰まるほどの威圧感が放たれる。その姿のまま、彼女は黒い槍でカルツのお腹を串刺しにした。
大切な人が侮辱されて平気でいられるほど、ニアの愛は薄くない。
「もう一度カイの名前を口にしたら、ズタズタに千切る」
「ぐ、ぁ………!!」
「この世界の主人公は、あなたじゃない。この世界の主人公は、カイ」
この世界の運命。
元の世界の運命と未来。カイの役目、カルツの元の役目。案内人の正体と目的まで。
それを全部聞いたからこそ、残りの3人はニアの言葉に反発しなかった。第一、彼女たちも分かっているのだ。
カルツが主人公として活躍する世界の運命が、どれだけ悲惨なものなのかを。
「ぐ、ぐぅぅ……!!ころ、すぅ………!!」
体に穴が空いたにも関わらず、カルツが黒魔法の槍を無理やり引き抜くと同時に穴が埋められる。さっきと同じ現象だった。
そして、見事に再生したカルツはまたもや飛び掛かってくる。聖剣の剣先はニアを狙っていた。
彼女がカイと似たような力を持っているからだろう。しかし……!
「オーラウォール!」
「クレセントショット!」
「シャドウ・ダンシング!」
元仲間だった3人に行方を阻まれ、カルツは獣が鳴くような声を上げる。聖剣は神聖魔法のドームにヒビだけを残し、矢を躱す隙に背中をナイフを刺されてしまった。
「ちっ、また再生……!アルウィン、バフお願い!!」
「は、はい!!ヘイスト!!」
にもかかわらず、まだ元気なカルツを見て、クロエはもう一本のナイフを取り出す。
「じゃま、するな!!」
「あなたがこの世界の邪魔だっての!!このクソ勇者!!」
間もなくして繰り広げられる、激しい激戦。
アルウィンのバフのおかげか、クロエは完璧にカルツのスピードに追い付けていた。2本のナイフが聖剣にぶつかり、それだけでも大量の魔力が吹き出る。
互いの体を剣で抉ろうとする、切迫な戦い。それを見て、ブリエンはニアに振り向く。
「このままだとキリがないわ!!あの体が再生する能力も、どうせ黒魔法の類でしょ!?ニア、何か心当たりはないの!?」
「……違う、黒魔法じゃない」
「え……!?ど、どういうことなのよ!カルツの体をあんな怪物にできたのは黒魔法の効果でしょ?なのに……!」
「あれは、違う」
何度も首を振った後に、ニアはぽつりと言葉をこぼす。
「あれ、生命力」
「………え?」
「心臓から、人為的な生命力が流れて傷口を塞いでいる。私たちが狙うべきなのは、心臓」
ニアの淡々とした説明を聞いてようやく合点が行ったのか、アルウィンが手を打つ。
「そうです!あれは、カイさんが前に持ってきたキューブの生命力!!だから、魔力視野でも上手く感知できなかったんだ……!!」
「キューブって……まさか、生命力を閉じ込められるという……」
「そうです、マテリアルキューブ!!それを体に無理やりねじ込んで、死なない体にしているんじゃないでしょうか。でも、ここまでの再生能力があるってことは―――」
「心臓自体が、巨大なキューブになっている」
一瞬、クロエとカルツの距離が離れた瞬間に。
ニアはもう一度黒い槍を召喚させて、カルツの胴体を狙う。
「ぐるっ!?!?」
今度は心臓を狙ったはずだが、カルツはかろうじて槍の軌道をずらし、肩辺りが刺されるように仕向ける。
その隙に、荒い息を吐きながらクロエが合流した。
「ふぅ、ふぅ……!!ダメだった、小さい傷は即回復してしまうの!あいつを倒すためには、なんらかの決め手が必要よ!!」
「……ニアさん、さっき巨大なキューブといいましたよね?」
「うん。そして、さっき槍を飛ばした時、カルツは明らかに胸元だけは守ろうとした。怪しい」
「え……?あ、そういえば、確かに胸元をずっと意識してたかも!」
「………じゃ、攻略する箇所は決まったわね」
ブリエンの言葉と共に、4人が頷く。
カルツの胸元。生命力が溢れているキューブを取り除いてしまえば、ヤツは死ぬはず。
「でも、決め手ってどうやって――――」
「わたし、考えがある」
そして、またもやブリエンがなにかを言い出した時。
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