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19話 どうしても合わない
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クロエは若干上気した頬のまま、仲間たちがいる宿に向かう。
結局、あの後にカイと5分も手を繋いでしまって、非常に耐えられないというか……くすぐったい気持ちが湧き上がっていた。
もちろん、隣にいるニアって子にめちゃくちゃ睨まれたけど、ふふっ。
「なんだかんだ言っても、いいやつだよね……あいつ」
星空を見上げながら、クロエは小声でつぶやく。そう、いいやつだという印象しか浮かばなかったのだ。
悪魔の力が身に宿っていると言うのに、カイはそこら辺の帝国軍より百倍は人間らしく見えた。
その人間性を強く感じた瞬間が、さっきだった―――クロエ自身が、死ぬ運命であると告げた時。
「……ちょっと、苦しそうだったし」
あれが冗談だとは思えない。カイは見ず知らずの自分の名前まで知っていたし、なにより……暗部の存在にもう気づいていたのだ。
予言者なのかな?もしくはただのはったり?それはどうでもいい。
肝心なのは、クロエ自身がカイの言葉を信頼しつつあるとういうことだった。
「本当に、カルツに……」
自分がカルツに殺されるとは思えないし、そもそもありえない話だとは思う。たまに意見が食い違うことはあっても、カルツは聖剣を持った勇者だから。
……頭が複雑だ。クロエは何度か首を振って気を取り直した後、いつの間に到着した宿に入る。
2階の一番奥の部屋に入ると、いつもの仲間たちが見えた。
「あ、クロエさん!おかえりなさい」
「クロエ!この度は本当にありがとう……!!君が助けてくれたんでしょ?やっぱりすごいね!」
「あ…………いや、その」
次々と飛んでくるアルウィンとブリエンの言葉に、クロエの喉が詰まる。
自分が助けたわけじゃない。もし、あの場でカイとニアが現れなかったら―――影がなかったら、全員無事に助けることはできなかったはずだ。
「本当にありがとう、クロエ」
でも、その事実をむやみに口出しすることはできなかった。
なにせ、自分の目の前にはその影を悪として見なしている勇者―――カルツがいるから。
「迷惑をかけてしまったね。君のおかげで助かったよ、クロエ」
「……えっと、みんな体は大丈夫?」
「はい!神聖魔法を施した上に貴重なポーションもいただきましたから、もう大丈夫です!」
「そっか、よかった」
クロエはどうしても、カルツのお礼に素直に頷けることができなかった。
彼女の中では悩みが波打っている。自分たちを助けたのが影だと知った時、カルツはどんな反応をするのだろう。
カルツは正義感があるものの、やや極端に行動する癖があった。自分と、自分が愛する帝国が悪として規定した組織の手に、助けられるなんて。
きっと、とんでもない屈辱感を覚えるだろう。それでも、クロエは拳をぐっと握って言葉を紡ごうとする。
ちゃんとした真実に立ち向かう必要があると思ったし。
なにより、カイやニアと敵対したくはなかったから。
「カルツ、今回の件で分かったよね?もう深くまで潜るのはやめよう?」
「いや、それはできない、ブリエン。俺は悪魔を倒さなきゃいけないんだ」
「…………………」
だけど、カルツの一言がクロエの踏ん張りを消し去ってしまう。
「みんなには申し訳ないと思っている。今回の責任はすべて俺にあるし、それを否定するつもりはないよ。だけど……一刻も早く強くならないと、この国は悪魔によって飲みつくされるんだ」
「………………」
「俺が聖剣に選ばれた理由は、間違いなくその事態を阻止するためなのだろう。一人でも多くの人間を救うために、俺はもっと戦わなきゃいけない。強くならなきゃ……いけない」
「カルツさん……」
「だから、みんなごめん。たとえ無理だと分かっていても、俺はこの先ずっとダンジョンに潜るつもりでいる。少しでも、昨日の自分より強くなるために」
……素晴らしい責任感だと思う。
それを証明するかのように、カルツを取り巻いている二人の目がキラキラと輝いていた。本物の英雄を見つめるような羨望の眼差し。
だけど、クロエは違った。
『バカなの……?死んだら終わりじゃん。なんの対策もなしに深層まで潜ろうとするなんて、ただの自殺行為なのに』
無知な勇気は死をもたらす。彼女が暗殺者として活躍した時に悟った、この世の真理だった。
今のカルツは、正に根拠のない勇気を振り回そうとしている。これは遊びやおままごとじゃない。
人の命がかかっている、重大な問題だ。だから、クロエは口を開く。
「いや、ちょっと待って。さすがに事前の情報集めくらいはしていくべきでしょ?無理に深層まで潜ったりしないで、先ずはギルドでちゃんと資料を調査した後に、ちゃんと準備を整えてから挑んだ方が―――」
「時には臨機応変が大事じゃないか、クロエ。情報集めなんかに時間を費やす暇があったら、モンスターを倒す方がよっぽど得だと思うが」
「……カルツ、あなたは今焦っている。もっとしっかり、今の現状を見つめ直した方が―――」
「そのままではいかないんだ!!」
その瞬間、パタン!と座っていたテーブルを打ちながらカルツが立ち上がる。
訝るような、憤怒をまき散らすような目つきで、カルツはクロエを睨んだ。
カルツだって、いつも自分の意見に反対しかしない彼女が、とてもいいようには見えないのだ。
「今も悪はこの国にのさばっている。俺たちに休む暇なんてあるわけないだろ!!」
「だから、私が言ったのは休もうってことじゃなくて―――」
「うるさい!ほとんど同じなことじゃないか!!そんな風に怠けてもったいぶって、本当に強くなれると思ってるのか!!」
「……カルツ」
「この街の人たちを見てみろ!全員、強くなろうとする努力もせずに淘汰されているクソみたいな人間ばっかりじゃないか!影がここを拠点に活動するのもうなずける。俺は一刻も早く悪魔を倒し、この街の人たちも全員更生させなければならない!」
「……………」
……ああ、ダメだ本当に。
もう、見ているものが違いすぎて相容れない。結局、今回もクロエは自分の意見を曲げるしかなかった。
「はぁ……分かった。でも、少なくともダンジョン攻略は二日後にしない?今日と明日は休憩を―――」
「いや、明日の朝から出発するぞ。そうでなければ、実戦感覚が鈍ってしまう」
「…………」
パーティーから抜けたい。だけど、抜けるわけにはいかなかった。
勇者パーティーのメンバーってことは、それだけでも色んな情報が手に入る特権みたいなものだから。
でも、いつか子供たちを助けた後。このスラム街に潜んでいる、黒魔術師を倒した後には。
……もう一度、カイとニアに会いたいなと思いながら。
クロエは力なく、頷いた。
結局、あの後にカイと5分も手を繋いでしまって、非常に耐えられないというか……くすぐったい気持ちが湧き上がっていた。
もちろん、隣にいるニアって子にめちゃくちゃ睨まれたけど、ふふっ。
「なんだかんだ言っても、いいやつだよね……あいつ」
星空を見上げながら、クロエは小声でつぶやく。そう、いいやつだという印象しか浮かばなかったのだ。
悪魔の力が身に宿っていると言うのに、カイはそこら辺の帝国軍より百倍は人間らしく見えた。
その人間性を強く感じた瞬間が、さっきだった―――クロエ自身が、死ぬ運命であると告げた時。
「……ちょっと、苦しそうだったし」
あれが冗談だとは思えない。カイは見ず知らずの自分の名前まで知っていたし、なにより……暗部の存在にもう気づいていたのだ。
予言者なのかな?もしくはただのはったり?それはどうでもいい。
肝心なのは、クロエ自身がカイの言葉を信頼しつつあるとういうことだった。
「本当に、カルツに……」
自分がカルツに殺されるとは思えないし、そもそもありえない話だとは思う。たまに意見が食い違うことはあっても、カルツは聖剣を持った勇者だから。
……頭が複雑だ。クロエは何度か首を振って気を取り直した後、いつの間に到着した宿に入る。
2階の一番奥の部屋に入ると、いつもの仲間たちが見えた。
「あ、クロエさん!おかえりなさい」
「クロエ!この度は本当にありがとう……!!君が助けてくれたんでしょ?やっぱりすごいね!」
「あ…………いや、その」
次々と飛んでくるアルウィンとブリエンの言葉に、クロエの喉が詰まる。
自分が助けたわけじゃない。もし、あの場でカイとニアが現れなかったら―――影がなかったら、全員無事に助けることはできなかったはずだ。
「本当にありがとう、クロエ」
でも、その事実をむやみに口出しすることはできなかった。
なにせ、自分の目の前にはその影を悪として見なしている勇者―――カルツがいるから。
「迷惑をかけてしまったね。君のおかげで助かったよ、クロエ」
「……えっと、みんな体は大丈夫?」
「はい!神聖魔法を施した上に貴重なポーションもいただきましたから、もう大丈夫です!」
「そっか、よかった」
クロエはどうしても、カルツのお礼に素直に頷けることができなかった。
彼女の中では悩みが波打っている。自分たちを助けたのが影だと知った時、カルツはどんな反応をするのだろう。
カルツは正義感があるものの、やや極端に行動する癖があった。自分と、自分が愛する帝国が悪として規定した組織の手に、助けられるなんて。
きっと、とんでもない屈辱感を覚えるだろう。それでも、クロエは拳をぐっと握って言葉を紡ごうとする。
ちゃんとした真実に立ち向かう必要があると思ったし。
なにより、カイやニアと敵対したくはなかったから。
「カルツ、今回の件で分かったよね?もう深くまで潜るのはやめよう?」
「いや、それはできない、ブリエン。俺は悪魔を倒さなきゃいけないんだ」
「…………………」
だけど、カルツの一言がクロエの踏ん張りを消し去ってしまう。
「みんなには申し訳ないと思っている。今回の責任はすべて俺にあるし、それを否定するつもりはないよ。だけど……一刻も早く強くならないと、この国は悪魔によって飲みつくされるんだ」
「………………」
「俺が聖剣に選ばれた理由は、間違いなくその事態を阻止するためなのだろう。一人でも多くの人間を救うために、俺はもっと戦わなきゃいけない。強くならなきゃ……いけない」
「カルツさん……」
「だから、みんなごめん。たとえ無理だと分かっていても、俺はこの先ずっとダンジョンに潜るつもりでいる。少しでも、昨日の自分より強くなるために」
……素晴らしい責任感だと思う。
それを証明するかのように、カルツを取り巻いている二人の目がキラキラと輝いていた。本物の英雄を見つめるような羨望の眼差し。
だけど、クロエは違った。
『バカなの……?死んだら終わりじゃん。なんの対策もなしに深層まで潜ろうとするなんて、ただの自殺行為なのに』
無知な勇気は死をもたらす。彼女が暗殺者として活躍した時に悟った、この世の真理だった。
今のカルツは、正に根拠のない勇気を振り回そうとしている。これは遊びやおままごとじゃない。
人の命がかかっている、重大な問題だ。だから、クロエは口を開く。
「いや、ちょっと待って。さすがに事前の情報集めくらいはしていくべきでしょ?無理に深層まで潜ったりしないで、先ずはギルドでちゃんと資料を調査した後に、ちゃんと準備を整えてから挑んだ方が―――」
「時には臨機応変が大事じゃないか、クロエ。情報集めなんかに時間を費やす暇があったら、モンスターを倒す方がよっぽど得だと思うが」
「……カルツ、あなたは今焦っている。もっとしっかり、今の現状を見つめ直した方が―――」
「そのままではいかないんだ!!」
その瞬間、パタン!と座っていたテーブルを打ちながらカルツが立ち上がる。
訝るような、憤怒をまき散らすような目つきで、カルツはクロエを睨んだ。
カルツだって、いつも自分の意見に反対しかしない彼女が、とてもいいようには見えないのだ。
「今も悪はこの国にのさばっている。俺たちに休む暇なんてあるわけないだろ!!」
「だから、私が言ったのは休もうってことじゃなくて―――」
「うるさい!ほとんど同じなことじゃないか!!そんな風に怠けてもったいぶって、本当に強くなれると思ってるのか!!」
「……カルツ」
「この街の人たちを見てみろ!全員、強くなろうとする努力もせずに淘汰されているクソみたいな人間ばっかりじゃないか!影がここを拠点に活動するのもうなずける。俺は一刻も早く悪魔を倒し、この街の人たちも全員更生させなければならない!」
「……………」
……ああ、ダメだ本当に。
もう、見ているものが違いすぎて相容れない。結局、今回もクロエは自分の意見を曲げるしかなかった。
「はぁ……分かった。でも、少なくともダンジョン攻略は二日後にしない?今日と明日は休憩を―――」
「いや、明日の朝から出発するぞ。そうでなければ、実戦感覚が鈍ってしまう」
「…………」
パーティーから抜けたい。だけど、抜けるわけにはいかなかった。
勇者パーティーのメンバーってことは、それだけでも色んな情報が手に入る特権みたいなものだから。
でも、いつか子供たちを助けた後。このスラム街に潜んでいる、黒魔術師を倒した後には。
……もう一度、カイとニアに会いたいなと思いながら。
クロエは力なく、頷いた。
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