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12話 中級ダンジョン
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「ああ、いらっしゃ―――ひいっ!?」
ギルドの中に入ると。
赤い目のせいなのか、俺たちを見たギルドの職員はびっくりして椅子から転げ落ちそうになった。
俺はニアと顔を見合わせてから、ゆっくりとその職員に近づく。
「すみません。ダンジョンの入場券を買いたいんですけど」
「だ、ダンジョンの……?と、というか、あなたたち……!!」
「カイ、この人おかしい」
「ニア、おかしいのは俺たちかもしれないよ」
平然と答えを返してから、俺は肩をすくめる。
「それで、ダンジョンの入場券を買いたいんですけど。いくらですか?」
「1、1シルバー……!1シルバーです!!」
よほど怖気づいたのか、男性の職員はぶるぶる震えながらなんとか言葉を紡ぐ。
しかし、1シルバーか。確か中級ダンジョンの入場券が1シルバーだったから……なるほど、ここの相場はゲームと同じってわけか。
「カイ、お金持ってる?」
「うん?持ってないよ、当たり前じゃん」
「え、え…………!?」
「というわけで、職員さん。一つお願いをしたいんですけど!」
「な、ななななんでしょうか……!」
う~~うん。完全に怯えてるな……もしかして殺されるとでも思っているのかな、この人。
「スラム街のダンジョン――灰色クライデンには稀に中級ボスのエインシャントグールが出現します。そうですよね?」
「は、はいっ!!って、え……?どうして、あなたがその情報を……?」
「そして、エインシャントグールを倒したら中級魔石が出るのは確定事項。中級魔石って確か、スラムだと10シルバー辺りで交換されますよね?違いますか?」
「い、いえいえいえ!!違くありません!正にその通りですが……!えっ、と」
「どうしました?」
「ど、どうやってあなたがそれを……!?それに、ダンジョンに行ったこともないはずのあなたが、どうしてグールの存在を知ってるんですか……!?」
「ああ~~~えっ、と」
このゲームに人生つぎ込んだからですよ。当たり前じゃないですか……!!
しかし、ありのままを言うわけにもいかないから、俺は手っ取り早いルートを選ぶことにした。
「世の中には、知らない方がいいこともたまにありますよね?」
「ひ、ひいいいっ!?!?」
「まあ、とにかくその魔石を持ってきますので、入場券の値段はその時に後払いさせてくれませんか?ギルド側にしてもそこまで損はないと思いますけど」
「は、はいはい!!今すぐ書類を持ってきます!!少々お待ちを!!」
……ちょっとした脅しがよく効いたのか、職員はそそくさと裏のスペースに逃げ込んでしまった。
しかし、可哀そうだな、あのおっさん……俺たちはまだ子供なのに、あんなに振り回されちゃってさ。
「カイ、今すごく悪党っぽかった」
「そうかな?エインシャントグールの魔石は10シルバーだよ?あとでちゃんと魔石で埋め合わせすればいいじゃん」
「思考も悪党になっている。カイは悪い人」
「うぐっ……まあ、さすがに否定はできないかな……ははっ」
「でも、私がカイが悪い人でも、ずっとついて行く」
「うう~~ん。ニアさん、俺のこと好きすぎじゃないですか?」
「うん、私はカイのことが大好き」
「……………………………………………………………」
一瞬で言葉が詰まってしまった。この子、好きってなんなのかちゃんと分かってないんじゃないか……?
そこまで思っていたところで、慌てていた職員が戻ってくる。その手にはちゃんと、二人分の入場券が握られていた。
「あ、あの……お名前をお伺いしてもいいですか?」
「俺はカイ、こちらはニアですね」
「ね、年齢をお伺いしても……?実は、ダンジョンには16歳になってないと入れない決まりでして……」
「職員さん、俺たち16歳に見えませんか?」
「は、はいっ!?」
「16歳に見えますよね~~?」
嫌な上司がかける圧みたいな感じになってしまったけど、ここは仕方がない。
でも、勘弁してくれよ……精神年齢は20代だから!ちゃんと成人してるから!
ニアは、まあ……仕方ないけど。でも、ここは力がすべての正義であるスラム街。
「は、はい……16歳に、見えますぅ………」
俺たちの中に潜んでいる悪魔がちゃんと見えている職員にとっては、これ以上しがみつくわけにもいかず。
容易く入場券を手に取ってから、俺たちはギルドを出た。後であの職員さんにちゃんと魔石渡さなきゃだよな……。
「カイ、さっきもすごく悪党だった」
「ニア、たまには悪党にならなきゃいけない時もあるんだよ?」
「その言葉自体がもう悪党。カイは悪い人」
「……………………」
「でも、私はそんなカイが好き」
「だから、好き好きって言わないで!?君、好きがなんなのかちゃんと理解してないでしょ!?」
「………?好きは、ずっと一緒にいたいって思うわけじゃないの?」
「そ、そうだけど……確かにそうだけど!!」
でも、好きって色々あるだろ!精神的な部分もあるけど、肉体的な部分も含まれていて―――はっ!?今、俺はなにを想像して!?
「……ふふっ、変なカイ」
とにかく、ニアがクスクス笑う声をBGMにしながら。
俺たちは、スラム街のダンジョン―――灰色クライデンに向かった。
ギルドの中に入ると。
赤い目のせいなのか、俺たちを見たギルドの職員はびっくりして椅子から転げ落ちそうになった。
俺はニアと顔を見合わせてから、ゆっくりとその職員に近づく。
「すみません。ダンジョンの入場券を買いたいんですけど」
「だ、ダンジョンの……?と、というか、あなたたち……!!」
「カイ、この人おかしい」
「ニア、おかしいのは俺たちかもしれないよ」
平然と答えを返してから、俺は肩をすくめる。
「それで、ダンジョンの入場券を買いたいんですけど。いくらですか?」
「1、1シルバー……!1シルバーです!!」
よほど怖気づいたのか、男性の職員はぶるぶる震えながらなんとか言葉を紡ぐ。
しかし、1シルバーか。確か中級ダンジョンの入場券が1シルバーだったから……なるほど、ここの相場はゲームと同じってわけか。
「カイ、お金持ってる?」
「うん?持ってないよ、当たり前じゃん」
「え、え…………!?」
「というわけで、職員さん。一つお願いをしたいんですけど!」
「な、ななななんでしょうか……!」
う~~うん。完全に怯えてるな……もしかして殺されるとでも思っているのかな、この人。
「スラム街のダンジョン――灰色クライデンには稀に中級ボスのエインシャントグールが出現します。そうですよね?」
「は、はいっ!!って、え……?どうして、あなたがその情報を……?」
「そして、エインシャントグールを倒したら中級魔石が出るのは確定事項。中級魔石って確か、スラムだと10シルバー辺りで交換されますよね?違いますか?」
「い、いえいえいえ!!違くありません!正にその通りですが……!えっ、と」
「どうしました?」
「ど、どうやってあなたがそれを……!?それに、ダンジョンに行ったこともないはずのあなたが、どうしてグールの存在を知ってるんですか……!?」
「ああ~~~えっ、と」
このゲームに人生つぎ込んだからですよ。当たり前じゃないですか……!!
しかし、ありのままを言うわけにもいかないから、俺は手っ取り早いルートを選ぶことにした。
「世の中には、知らない方がいいこともたまにありますよね?」
「ひ、ひいいいっ!?!?」
「まあ、とにかくその魔石を持ってきますので、入場券の値段はその時に後払いさせてくれませんか?ギルド側にしてもそこまで損はないと思いますけど」
「は、はいはい!!今すぐ書類を持ってきます!!少々お待ちを!!」
……ちょっとした脅しがよく効いたのか、職員はそそくさと裏のスペースに逃げ込んでしまった。
しかし、可哀そうだな、あのおっさん……俺たちはまだ子供なのに、あんなに振り回されちゃってさ。
「カイ、今すごく悪党っぽかった」
「そうかな?エインシャントグールの魔石は10シルバーだよ?あとでちゃんと魔石で埋め合わせすればいいじゃん」
「思考も悪党になっている。カイは悪い人」
「うぐっ……まあ、さすがに否定はできないかな……ははっ」
「でも、私がカイが悪い人でも、ずっとついて行く」
「うう~~ん。ニアさん、俺のこと好きすぎじゃないですか?」
「うん、私はカイのことが大好き」
「……………………………………………………………」
一瞬で言葉が詰まってしまった。この子、好きってなんなのかちゃんと分かってないんじゃないか……?
そこまで思っていたところで、慌てていた職員が戻ってくる。その手にはちゃんと、二人分の入場券が握られていた。
「あ、あの……お名前をお伺いしてもいいですか?」
「俺はカイ、こちらはニアですね」
「ね、年齢をお伺いしても……?実は、ダンジョンには16歳になってないと入れない決まりでして……」
「職員さん、俺たち16歳に見えませんか?」
「は、はいっ!?」
「16歳に見えますよね~~?」
嫌な上司がかける圧みたいな感じになってしまったけど、ここは仕方がない。
でも、勘弁してくれよ……精神年齢は20代だから!ちゃんと成人してるから!
ニアは、まあ……仕方ないけど。でも、ここは力がすべての正義であるスラム街。
「は、はい……16歳に、見えますぅ………」
俺たちの中に潜んでいる悪魔がちゃんと見えている職員にとっては、これ以上しがみつくわけにもいかず。
容易く入場券を手に取ってから、俺たちはギルドを出た。後であの職員さんにちゃんと魔石渡さなきゃだよな……。
「カイ、さっきもすごく悪党だった」
「ニア、たまには悪党にならなきゃいけない時もあるんだよ?」
「その言葉自体がもう悪党。カイは悪い人」
「……………………」
「でも、私はそんなカイが好き」
「だから、好き好きって言わないで!?君、好きがなんなのかちゃんと理解してないでしょ!?」
「………?好きは、ずっと一緒にいたいって思うわけじゃないの?」
「そ、そうだけど……確かにそうだけど!!」
でも、好きって色々あるだろ!精神的な部分もあるけど、肉体的な部分も含まれていて―――はっ!?今、俺はなにを想像して!?
「……ふふっ、変なカイ」
とにかく、ニアがクスクス笑う声をBGMにしながら。
俺たちは、スラム街のダンジョン―――灰色クライデンに向かった。
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