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気ままにダラダラ狩猟生活
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「まだだっ!」
王様が叫んだ。この場にいる全員がまだ諦めていない。
「魔術師は杖を取れ! それ以外の者は補助に回れ! ドラゴーを止めるのだ!!」
「いいかみんな、土魔術で壁を作るんだ! いや、バリアでもなんでもいい。とにかくドラゴーを減速させるんだ!」
ポルカーさんが魔術師たちに指示を出す。
ピンチの時に本気を出したら鬼のように強いんだろうな。ポコみたいに。
「ポコン! 確か、土魔術は教えたな?」
「もっちろん! 障害物配置しまくっちゃうもんねー!」
「魔力支援は吾輩に任せるであります!!」
全員が協力し、最後の仕上げをする。王国を目の前にして魔術師たちの放つ岩、岩、岩。
次々に壁が作られ破壊されていく。一つの壁にぶつかるたびにドラゴーは確かに減速していく。
「クォォォ!!」
ギンが魔力をばらまく。魔術師たちはさらに強い壁を作る。ポコは弓で魔術師の届かない範囲に先にバリアや巨岩を配置する。
そして、最後は最大強化されたフォルテシア城の城壁にぶつかり、ドラゴーはフォルテシア城の裏山になったのだった。
* * *
ドラゴーがドラゴー山へと名前を変えて数日が経過した。
王国は来る日も来る日もお祭り騒ぎ。なんとベヒモスの肉を使ったお肉パーティーだ。厄災の獣の肉は思っていたよりも臭みはない美味しいお肉だった。が、やはりドラゴンは超えられない。あの味を上回る肉を求めようね。
そんなお祭りもようやく収まってきたある日のことだ。私たちは王様に呼び出された。
旅に必要であろう道具や高価な鉱石などを褒美として提供され、今後も何かあればフォルテシアに戻り手助けをするという約束をし、城を去る。
私たち三人の目的は世界を旅し、魔獣を狩ること。急がず、気ままに旅をすること。そして、世界を全て見て回るのだ。
その目的を果たすために旅をしていたのだが、流石にフォルテシアにいすぎた。そろそろ次の国を目指して旅を始めよう。
「とうとうフォルテシアともおさらばかー、寂しいねー」
「いや、戻ってくるでしょ」
おじいさんから受け取った転移クリスタルをフォルテシアに登録し、準備を進める。
すでに私たちが旅に戻ることは知れ渡っており、多くの知り合いが見送りに来てくれた。
「別の国の鍛冶屋に浮気なんかするんじゃねぇぞ!」
「特別な素材が手に入ったらまたうちに来てね。歓迎するよ」
「もちろんです。これからもよろしくお願いしますね」
鍛冶屋のおじいさんとお兄さん。何度も私たちの武器や装備を作ってくれた恩人だ。
「ふっ、お前達ならやれると信じてたぜ」
「門番さん…………」
「シーヘだ! え、本当に忘れてないか?」
「今覚えました」
「そうそう、そんな名前だったねー」
「忘れてたのかよ」
フォルテシア城の門番をしていたシーヘさん。気前よく城に入れてくれたり、転移クリスタルを手に入れる方法を教えてくれた人だ。
「また次の国で会おう」
「アカネさん、ええ。紅の女狩猟団の支部、頼らせていただきますよ」
アカネさん。初めて魔獣と認識して戦ったデクセス、その討伐の時に出会った人だ。
紅の女狩猟団のメンバーとも別れを済ませる。そう悲しむこともない、どうせすぐに会える。
「またギンちゃんを連れてきてくださいね!」
「多分、何度も利用するんで期待しててくださいね」
「クォ!」
魔獣牧場の主さんも見送りに来てくれていた。ギンを預ける場所を提供してもらった。おそらくこれからも利用するだろう。他の国では受け入れてもらえないかもしれないからね。
「ポコン、お父さんにも旅の話聞かせておくれよ。王様が旅に出るのを許してくれないんだ」
「許すわけがないだろう! ポルカー、貴様は立場というものを考えろ!」
ポルカーさんが王様に叩かれる。ポルカーさんも旅がしたかったのか。まあこの人も変人だしね。
変人は旅をしたがる。これ、あると思います。
「お父さんも旅したいの?」
「ああしたいさ! 珍しいレンキン草とかあったら是非採ってきてくれ!」
「了解っ!」
どことなく理由は察せた。私はお肉バカでポコは魔術バカで、隊長が危険バカでポルカーさんが錬金バカなのだ。
変な人には旅をさせよ。そんな言葉があった気がする。ない? ないか。ないね。
「お前の実力は認めている。王国を守った英雄のようなものだからな。再び危機が訪れた時にはまた力を貸すように」
「言われなくても力は貸すって」
ダルクもはっきりと認めていると言ってきた。うむ、私は満足じゃぞ。
「エファとその仲間たちよ。三度言おう。素晴らしい功績であった。これからの旅の道中、何度も我が国を守ったということを思い出すがよい。ああそれから、またギンに乗ってもよいな? ああ、あとだな……」
「王、名残惜しいのは分かりますがまたすぐに会えるのですからそろそろ……」
「普通に話しておっただけであろう!」
「いや、終わらなそうな雰囲気ありましたよ」
王様の話は長かったり短かったりと、多種多様だ。しかも簡潔に話してくれないのでそこまで内容がなくても長くなることが多い。今がそれだ。
「ぐぬぬ……最後に一つだ。他国でその実力が通じるとは限らん。決して慢心するでないぞ」
「心してかかります」
旅は続く。私たちは確かにフォルテシアで戦力として戦えた。だが、他の国はどうだろうか。国によって戦い方も変わってくるだろう。相性というものがあるのだ。力では押し切れない。
「ありがとうねー王様!」
「では、行ってくるであります!!」
「またねー! いけっ、ギン!」
「クォォォォォォォォォォォン!!!」
竜車に乗った私たちは次の国を目指して飛び立った。
フォルテシアが遠くなっていく。見送りに来てくれた人もすでに豆粒だ。
心機一転、他の国に行っても私たちは気ままにダラダラ、狩猟生活を続けるだろう。危険があろうとも、あくまで楽しんで、食べて、笑って。そうやって生きていくのだ。
私たちの旅は、まだまだ続いていく。
フォルテシアではない他の国でも、ずっと、ずっと楽しく。
気ままにダラダラ狩猟生活 完
王様が叫んだ。この場にいる全員がまだ諦めていない。
「魔術師は杖を取れ! それ以外の者は補助に回れ! ドラゴーを止めるのだ!!」
「いいかみんな、土魔術で壁を作るんだ! いや、バリアでもなんでもいい。とにかくドラゴーを減速させるんだ!」
ポルカーさんが魔術師たちに指示を出す。
ピンチの時に本気を出したら鬼のように強いんだろうな。ポコみたいに。
「ポコン! 確か、土魔術は教えたな?」
「もっちろん! 障害物配置しまくっちゃうもんねー!」
「魔力支援は吾輩に任せるであります!!」
全員が協力し、最後の仕上げをする。王国を目の前にして魔術師たちの放つ岩、岩、岩。
次々に壁が作られ破壊されていく。一つの壁にぶつかるたびにドラゴーは確かに減速していく。
「クォォォ!!」
ギンが魔力をばらまく。魔術師たちはさらに強い壁を作る。ポコは弓で魔術師の届かない範囲に先にバリアや巨岩を配置する。
そして、最後は最大強化されたフォルテシア城の城壁にぶつかり、ドラゴーはフォルテシア城の裏山になったのだった。
* * *
ドラゴーがドラゴー山へと名前を変えて数日が経過した。
王国は来る日も来る日もお祭り騒ぎ。なんとベヒモスの肉を使ったお肉パーティーだ。厄災の獣の肉は思っていたよりも臭みはない美味しいお肉だった。が、やはりドラゴンは超えられない。あの味を上回る肉を求めようね。
そんなお祭りもようやく収まってきたある日のことだ。私たちは王様に呼び出された。
旅に必要であろう道具や高価な鉱石などを褒美として提供され、今後も何かあればフォルテシアに戻り手助けをするという約束をし、城を去る。
私たち三人の目的は世界を旅し、魔獣を狩ること。急がず、気ままに旅をすること。そして、世界を全て見て回るのだ。
その目的を果たすために旅をしていたのだが、流石にフォルテシアにいすぎた。そろそろ次の国を目指して旅を始めよう。
「とうとうフォルテシアともおさらばかー、寂しいねー」
「いや、戻ってくるでしょ」
おじいさんから受け取った転移クリスタルをフォルテシアに登録し、準備を進める。
すでに私たちが旅に戻ることは知れ渡っており、多くの知り合いが見送りに来てくれた。
「別の国の鍛冶屋に浮気なんかするんじゃねぇぞ!」
「特別な素材が手に入ったらまたうちに来てね。歓迎するよ」
「もちろんです。これからもよろしくお願いしますね」
鍛冶屋のおじいさんとお兄さん。何度も私たちの武器や装備を作ってくれた恩人だ。
「ふっ、お前達ならやれると信じてたぜ」
「門番さん…………」
「シーヘだ! え、本当に忘れてないか?」
「今覚えました」
「そうそう、そんな名前だったねー」
「忘れてたのかよ」
フォルテシア城の門番をしていたシーヘさん。気前よく城に入れてくれたり、転移クリスタルを手に入れる方法を教えてくれた人だ。
「また次の国で会おう」
「アカネさん、ええ。紅の女狩猟団の支部、頼らせていただきますよ」
アカネさん。初めて魔獣と認識して戦ったデクセス、その討伐の時に出会った人だ。
紅の女狩猟団のメンバーとも別れを済ませる。そう悲しむこともない、どうせすぐに会える。
「またギンちゃんを連れてきてくださいね!」
「多分、何度も利用するんで期待しててくださいね」
「クォ!」
魔獣牧場の主さんも見送りに来てくれていた。ギンを預ける場所を提供してもらった。おそらくこれからも利用するだろう。他の国では受け入れてもらえないかもしれないからね。
「ポコン、お父さんにも旅の話聞かせておくれよ。王様が旅に出るのを許してくれないんだ」
「許すわけがないだろう! ポルカー、貴様は立場というものを考えろ!」
ポルカーさんが王様に叩かれる。ポルカーさんも旅がしたかったのか。まあこの人も変人だしね。
変人は旅をしたがる。これ、あると思います。
「お父さんも旅したいの?」
「ああしたいさ! 珍しいレンキン草とかあったら是非採ってきてくれ!」
「了解っ!」
どことなく理由は察せた。私はお肉バカでポコは魔術バカで、隊長が危険バカでポルカーさんが錬金バカなのだ。
変な人には旅をさせよ。そんな言葉があった気がする。ない? ないか。ないね。
「お前の実力は認めている。王国を守った英雄のようなものだからな。再び危機が訪れた時にはまた力を貸すように」
「言われなくても力は貸すって」
ダルクもはっきりと認めていると言ってきた。うむ、私は満足じゃぞ。
「エファとその仲間たちよ。三度言おう。素晴らしい功績であった。これからの旅の道中、何度も我が国を守ったということを思い出すがよい。ああそれから、またギンに乗ってもよいな? ああ、あとだな……」
「王、名残惜しいのは分かりますがまたすぐに会えるのですからそろそろ……」
「普通に話しておっただけであろう!」
「いや、終わらなそうな雰囲気ありましたよ」
王様の話は長かったり短かったりと、多種多様だ。しかも簡潔に話してくれないのでそこまで内容がなくても長くなることが多い。今がそれだ。
「ぐぬぬ……最後に一つだ。他国でその実力が通じるとは限らん。決して慢心するでないぞ」
「心してかかります」
旅は続く。私たちは確かにフォルテシアで戦力として戦えた。だが、他の国はどうだろうか。国によって戦い方も変わってくるだろう。相性というものがあるのだ。力では押し切れない。
「ありがとうねー王様!」
「では、行ってくるであります!!」
「またねー! いけっ、ギン!」
「クォォォォォォォォォォォン!!!」
竜車に乗った私たちは次の国を目指して飛び立った。
フォルテシアが遠くなっていく。見送りに来てくれた人もすでに豆粒だ。
心機一転、他の国に行っても私たちは気ままにダラダラ、狩猟生活を続けるだろう。危険があろうとも、あくまで楽しんで、食べて、笑って。そうやって生きていくのだ。
私たちの旅は、まだまだ続いていく。
フォルテシアではない他の国でも、ずっと、ずっと楽しく。
気ままにダラダラ狩猟生活 完
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追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
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