気ままにダラダラ狩猟生活~冒険しながら世界を食らいつくします!~

瀬口恭介

文字の大きさ
上 下
65 / 65

気ままにダラダラ狩猟生活

しおりを挟む
「まだだっ!」

 王様が叫んだ。この場にいる全員がまだ諦めていない。

「魔術師は杖を取れ! それ以外の者は補助に回れ! ドラゴーを止めるのだ!!」
「いいかみんな、土魔術で壁を作るんだ! いや、バリアでもなんでもいい。とにかくドラゴーを減速させるんだ!」

 ポルカーさんが魔術師たちに指示を出す。
 ピンチの時に本気を出したら鬼のように強いんだろうな。ポコみたいに。

「ポコン! 確か、土魔術は教えたな?」
「もっちろん! 障害物配置しまくっちゃうもんねー!」
「魔力支援は吾輩に任せるであります!!」

 全員が協力し、最後の仕上げをする。王国を目の前にして魔術師たちの放つ岩、岩、岩。
 次々に壁が作られ破壊されていく。一つの壁にぶつかるたびにドラゴーは確かに減速していく。

「クォォォ!!」

 ギンが魔力をばらまく。魔術師たちはさらに強い壁を作る。ポコは弓で魔術師の届かない範囲に先にバリアや巨岩を配置する。
 そして、最後は最大強化されたフォルテシア城の城壁にぶつかり、ドラゴーはフォルテシア城の裏山になったのだった。

* * *

 ドラゴーがドラゴー山へと名前を変えて数日が経過した。
 王国は来る日も来る日もお祭り騒ぎ。なんとベヒモスの肉を使ったお肉パーティーだ。厄災の獣の肉は思っていたよりも臭みはない美味しいお肉だった。が、やはりドラゴンは超えられない。あの味を上回る肉を求めようね。

 そんなお祭りもようやく収まってきたある日のことだ。私たちは王様に呼び出された。
 旅に必要であろう道具や高価な鉱石などを褒美として提供され、今後も何かあればフォルテシアに戻り手助けをするという約束をし、城を去る。

 私たち三人の目的は世界を旅し、魔獣を狩ること。急がず、気ままに旅をすること。そして、世界を全て見て回るのだ。
 その目的を果たすために旅をしていたのだが、流石にフォルテシアにいすぎた。そろそろ次の国を目指して旅を始めよう。

「とうとうフォルテシアともおさらばかー、寂しいねー」
「いや、戻ってくるでしょ」

 おじいさんから受け取った転移クリスタルをフォルテシアに登録し、準備を進める。
 すでに私たちが旅に戻ることは知れ渡っており、多くの知り合いが見送りに来てくれた。

「別の国の鍛冶屋に浮気なんかするんじゃねぇぞ!」
「特別な素材が手に入ったらまたうちに来てね。歓迎するよ」
「もちろんです。これからもよろしくお願いしますね」

 鍛冶屋のおじいさんとお兄さん。何度も私たちの武器や装備を作ってくれた恩人だ。

「ふっ、お前達ならやれると信じてたぜ」
「門番さん…………」
「シーヘだ! え、本当に忘れてないか?」
「今覚えました」
「そうそう、そんな名前だったねー」
「忘れてたのかよ」

 フォルテシア城の門番をしていたシーヘさん。気前よく城に入れてくれたり、転移クリスタルを手に入れる方法を教えてくれた人だ。

「また次の国で会おう」
「アカネさん、ええ。紅の女狩猟団の支部、頼らせていただきますよ」

 アカネさん。初めて魔獣と認識して戦ったデクセス、その討伐の時に出会った人だ。
 紅の女狩猟団のメンバーとも別れを済ませる。そう悲しむこともない、どうせすぐに会える。

「またギンちゃんを連れてきてくださいね!」
「多分、何度も利用するんで期待しててくださいね」
「クォ!」

 魔獣牧場の主さんも見送りに来てくれていた。ギンを預ける場所を提供してもらった。おそらくこれからも利用するだろう。他の国では受け入れてもらえないかもしれないからね。

「ポコン、お父さんにも旅の話聞かせておくれよ。王様が旅に出るのを許してくれないんだ」
「許すわけがないだろう! ポルカー、貴様は立場というものを考えろ!」

 ポルカーさんが王様に叩かれる。ポルカーさんも旅がしたかったのか。まあこの人も変人だしね。
 変人は旅をしたがる。これ、あると思います。

「お父さんも旅したいの?」
「ああしたいさ! 珍しいレンキン草とかあったら是非採ってきてくれ!」
「了解っ!」

 どことなく理由は察せた。私はお肉バカでポコは魔術バカで、隊長が危険バカでポルカーさんが錬金バカなのだ。
 変な人には旅をさせよ。そんな言葉があった気がする。ない? ないか。ないね。

「お前の実力は認めている。王国を守った英雄のようなものだからな。再び危機が訪れた時にはまた力を貸すように」
「言われなくても力は貸すって」

 ダルクもはっきりと認めていると言ってきた。うむ、私は満足じゃぞ。

「エファとその仲間たちよ。三度言おう。素晴らしい功績であった。これからの旅の道中、何度も我が国を守ったということを思い出すがよい。ああそれから、またギンに乗ってもよいな? ああ、あとだな……」
「王、名残惜しいのは分かりますがまたすぐに会えるのですからそろそろ……」
「普通に話しておっただけであろう!」
「いや、終わらなそうな雰囲気ありましたよ」

 王様の話は長かったり短かったりと、多種多様だ。しかも簡潔に話してくれないのでそこまで内容がなくても長くなることが多い。今がそれだ。

「ぐぬぬ……最後に一つだ。他国でその実力が通じるとは限らん。決して慢心するでないぞ」
「心してかかります」

 旅は続く。私たちは確かにフォルテシアで戦力として戦えた。だが、他の国はどうだろうか。国によって戦い方も変わってくるだろう。相性というものがあるのだ。力では押し切れない。

「ありがとうねー王様!」
「では、行ってくるであります!!」
「またねー! いけっ、ギン!」
「クォォォォォォォォォォォン!!!」

 竜車に乗った私たちは次の国を目指して飛び立った。
 フォルテシアが遠くなっていく。見送りに来てくれた人もすでに豆粒だ。

 心機一転、他の国に行っても私たちは気ままにダラダラ、狩猟生活を続けるだろう。危険があろうとも、あくまで楽しんで、食べて、笑って。そうやって生きていくのだ。
 私たちの旅は、まだまだ続いていく。

 フォルテシアではない他の国でも、ずっと、ずっと楽しく。


       気ままにダラダラ狩猟生活          完
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

元Sランクパーティーのサポーターは引退後に英雄学園の講師に就職した。〜教え子達は見た目は美少女だが、能力は残念な子達だった。〜

アノマロカリス
ファンタジー
主人公のテルパは、Sランク冒険者パーティーの有能なサポーターだった。 だが、そんな彼は…? Sランクパーティーから役立たずとして追い出された…訳ではなく、災害級の魔獣にパーティーが挑み… パーティーの半数に多大なる被害が出て、活動が出来なくなった。 その後パーティーリーダーが解散を言い渡し、メンバー達はそれぞれの道を進む事になった。 テルパは有能なサポーターで、中級までの攻撃魔法や回復魔法に補助魔法が使えていた。 いざという時の為に攻撃する手段も兼ね揃えていた。 そんな有能なテルパなら、他の冒険者から引っ張りだこになるかと思いきや? ギルドマスターからの依頼で、魔王を討伐する為の養成学園の新人講師に選ばれたのだった。 そんなテルパの受け持つ生徒達だが…? サポーターという仕事を馬鹿にして舐め切っていた。 態度やプライドばかり高くて、手に余る5人のアブノーマルな女の子達だった。 テルパは果たして、教え子達と打ち解けてから、立派に育つのだろうか? 【題名通りの女の子達は、第二章から登場します。】 今回もHOTランキングは、最高6位でした。 皆様、有り難う御座います。

【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜

月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。 蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。 呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。 泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。 ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。 おっさん若返り異世界ファンタジーです。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

処理中です...